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幾度かのチャイムがなったら昼休み。
弁当はない現金はないスパホに入った金はあるそんな才賀保は。
赤い階段を急ぎ降りていった。そして校舎を抜け、走り今、また抜けようと──
「コラァ待て!!!!」
物凄く大きな怒号が背に突き刺さり動けなくなった。少し荒い呼吸で刺してきた方を思わず振り返り。
小走りで小太りな短髪の黒ジャージのメガネ、が近付いてきた。
「校門から外に出たらダメ」
「……ちょっと昼飯買いに」
「ダメ! 中で買いなさい購買あるだろ、っておまえ才賀か」
「……はい」
「なんだ?」
「いや、そうします」
「うん、最近外は危ないからな。ほら、行きなさい」
「っす……」
そうチカラなくこたえて生徒は校舎へとメガネにその背を見守られ戻っていった。
この学校……クソ教師というのはどこにでもいる。例えば校門のまえ。俺はゲートキーパーと呼んでいる……今命名。正直ビビった……。
くそ、やっぱ朝戻って買いに行くべきだったか?
なんで出ちゃいけないの? 学校は監獄でしょうか。てか最近外は危ないってなんだそのふわふわした回答は。
今の俺の状況。購買でスパホ決済は使えない。現金はない、友達はいない。こんな日に限って何故か腹が超絶に減っている、意識しすぎたせいか。……滅茶苦茶馬鹿みたいな状況だ。
クソ教師も話せばわかるのかもしれない……。でもムカつくな。
生徒は、しらず黒髪を掻きむしり、顰めっ面も知らずに──
──謎の掟に従ってやろう。こうなればどこぞの歌手のように反抗だ。
キリっと男の表情が変わった。才賀保はスパホを片手に学校に向けて反抗をすることにしたようだ。
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▽▽▽
一階に購買はある。それは当然でありどこかの仲のいい業者が下ろして持ってきているのだと思う。
何故か滅茶苦茶賑わい人混みと言っていいほどの集を形成していた購買のフィールドを並び。
「だめだめ! スマホはつかえないよ。現金で」
「そっすか」
スイートポテトパイ×2。ホイップメロンパン×1。クリームパン×3。腹の減りすぎた生徒が直感で素早く選んだそれらは業者のおじさんの前カウンターに置かれて──生徒は一言だけ発し去って行った。
何故か現金決済だけだ。今の時代、遅れている! それとスマホじゃなくてスパホ。学校はアップデート出来ていない。俺の学校には行き届いていないんだ。
ってそうじゃない……よく考えれば当たり前だな……。
「そっすか」自分でもナニ言ってんだこいつだ……震え声+小声が超絶にダサかった……。周りの視線は覚えていない、でもナニやってんだこいつだった気がする…………。
──でも俺は何故こんな無意味なことをしたんだろう。
人混みを掻き分けてできるだけはやく。どこかメンタルのやられた臙脂色の背は、そのダサすぎた意味不明の現実から去ろうとして──
「いてっ!?」
な、なんだ?
「コラァ商品を投げるなぁーー」
「フッ、やはりアンパンはよく飛ぶ」
「ウチのパンになにしとんじゃ!!」
「夢のあるパンをつくれクズが」
「クズ? は、はぁ……?」
「さっさとしろクズアンパンじゃなく私のクリームパンを寄越せ、不味くないヤツをな」
「ウチのクリームパンを舐めるなよ!」
「売れ残りだろ?」
「はぁーーアッタマきた! ウチのクリームパンはいつも大人気今日は生徒たちのためにいつもの倍!! おおめにつくって」
「フッ、知らないな。さっさとしろ量産型クリームパン」
「量産ガッ!? ウチの愛するクリームパンの性能をッ──────」
「なんだ……」
このアンパン。
俺の後頭部にぶっ飛んできた個包装されたアンパン、ただのアンパン。ぶっ飛んだよくわからないやり取りが遠くから聞こえる。
黒い瞳は周りより、とまった時間に床を見つめて────
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▽▽▽
「俺はぬすっと石川五右衛門、釜茹でにはしないでください、あむっ」
「あむ……これが才賀保の反抗への第一歩だというのなら!」
「んなわけはないっ」
「考え方を変えよう。アンパンみずから飛んできたんだ、きっと俺に元気とアンパンを分け与えるために……ふっ」
今にも雨の降りそうな曇り空。まだ春のはずなのにこのところの異常気象のせい、風が想定より冷たい。
アンパンを片手に隠れるように侵入した才賀保未知の領域。
屋上とか何気にはじめて来たかもしれない。意外と誰もいないんだな。
周りを見渡し。
鳩のフンだらけだ。
「……そういうことね。いかにも俺らしい現実だ」
現実じゃないウランドはっ、と。
▽
たもつさん。駄菓子売れてますよ。
【ブッ壊れ電柱チョコ】×19=9500G
我ながら素晴らしい戦果ですね、ええ。
そうそう
きょうの私は
500チョコを3個、あじみしましたよ。
美味かったですよ。
たもつさんはまだ学校ですか?
大変ですね、私の方が大変ですが、ばりぼり。
▽
「あじびごほっごほ……えっふエフ!! みじゅ……アンパンには水! ごぼッ」
おもわず落ちてはいけない……落ちそうになった大事なスパホを力強く握りしめ。
男は水なしでどうにか咽せたバッドステータス状態から生き返ることに成功し。
「このつまみ食いメイド食ったら売れても意味ねぇだろ。1500G……いやばりぼり……もっとか、ご主人のたもつさんはやっすいアンパン盗んで食ってるってのに…………いやたもつさん普通にやばい?」
スパホに映る黒くポップな駄菓子屋とその店主。ウランドのクールメイドはほぼ毎日つまみ食いをするけどクソメイド? ではない。そして、才賀たもつさんはこの学校にとってクソ生徒なのかもしれない。
まあ……このむせる味のアンパンは今日いちばんの、ラッキーだった────。




