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どすり、聞こえた締まる音。あくびを一度、もう一度だけ目を閉じ────
朝7:05お父さんはもう既に仕事に出かけていた。夜遅くまでテレビを見ていただろうに……どうなっているんだろう。
リビング、トースターにセット。朝食の食パンを焼きながらコーヒーがないことに気づく。
……面倒な朝にはスティックコーヒー。水を入れポットは自動でお湯を沸かすから。
マーガリンを塗り、酸っぱいジャムはいらない。甘いカフェオレで渇いた喉を湿らせいただこう。
テレビの音のない静かな朝にスパホを片手にながめる。特段気になることもないけどずらりと並ぶニュースタイトルを確認していく。メジャーで活躍する野球選手のことであったり、芸能人の誰々が死んだ。あくびを出しながらさらっと流し読む。
だらっとしている間にも、お母さんは起きコーヒーがないことに少しクレームをつけられてしまった。才賀保のインスタント過ぎた朝は過ぎ────。
黒のカバンを背負った自転車は集合住宅を出て行き。
気付けばあの角店のルートを過ぎていた。少しもやっとした気分をギアを上げ風を切りながら晴らしていく。
青信号のラッキーはなかった。おおきな道路でつかまりアンフェアな待ち時間を強いられる。空白のじかんほどイヤなじかんはない。
才賀保はスパホを右ポッケから取り出し、液晶画面を見つめてネット小説のマイページを確認していく。
やけに近いパーソナルスペースにキーっという音が止まった。
気配をかんじた左に訝しみ目をやると。
「おーい、才賀」
「ん……だれだっけ?」
「高野だよ」
「コウヤか」
「コーノ」
「いたなぁ」
「テンション低いなぁ」
「省エネなだけだから」
「才賀保の省エネモードとかあったなぁ」
「最近なにハマってる?」
「ん、この動画エイコ」
エイコ、とかいうベテランのゲーム動画配信者。見てくれだけはいいが……こいつにすすめられて何度か見たことあるけど正直おもしろくない。どうも他人のゲーム動画というモノに俺は興味を持てない。それにハマったら……めんどくさそうだ!
「ふっまだそいつ追いかけてるの? 30超えてるでしょ」
「毎回それ言うなッ何年30超えてんだよ! まぁそうかもだけどおもしろいし、お前は?」
「おれは……あっ」
信号は青。横断歩道を横断しいつもとは違う道を並走していく。
「おいっ、何にハマってんの? またあのロボットゲーム?」
「それもたまにやってるけどぉーっ、メイドだなーーっ!」
「メイド? なんじゃそれぇーー」
「じゃな!」
「メイドってなにーーっ」
旧友を抜き去り自分とは他人の学校の前を通り過ぎていく。
少しだけ上がった気分で加速していく、見慣れた市街地を通り抜けて。
古びたあの学校の駐輪場にいくつかの臙脂色の背をぶっち切りながらたどり着いた。
からからと音を止ませながら覚え込まされている指定の位置へと──
「あ、やべ弁当わすれた……」
ズボン両のポッケ、ブレザーの────ひと通りを探し終えて財布が無い……。
臙脂色の制服はスパホを確認し古びた校舎を見つめ苦笑う。少し憂鬱な気分で才賀保の何気ない今日という日の学校生活は始まった。




