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勢いをうしなった車輪はからからと家の前のさびた赤い屋根の駐輪場に──何故か振り返ってしまったウシロ、変わり映えのない見慣れた景色、偽物の緑自然と敷き詰めたグレーの石色。
呼吸は荒くはなく不思議と風を切りながらいつの間にかととのっていた。
ヤツはいない。
あの嵐のような出来事、駄菓子屋VS駄菓子屋はおわり。俺としてはここでブロック……なんてダサい真似はしない。
無事、帰還を果たした才賀保。
幾度かスパホをみつめてもうひとつの趣味であるネット小説のつづきを書いてみたり……投稿サイトに投稿するような納得のいくものは出来ず、その後はだらっと────気付けばもうひとつの日課である歯もきちんと磨き終わり集合住宅の一室、親に与えられたその寝床で。
布団に包まり、中の仰向けの枕をぎゅっと。
だが、そいつからのダイレクトメールはなかった。
落ち着かない眠れない夜にもう一度充電器につないだままのスパホを。
▽
今日の売上は23020G。
たもつさんはいかがおすごしでしたでしょうか?
私は
今日はお店の20チョコを7個つまみぐいしました。
そして少し出歩きましたよ。
そして回避できない電柱にぶちあたりました。
折れたおれていく電柱をぼーっとながめて
私ひらめきました。
こんな新作駄菓子はいかがですか
【折れた電柱チョコ】
こちらフィギュアがセットとなります。
ヤンキー男、メイド、OL、柴犬、工事現場の人など
全13種類の玩具入りチョコ。おまけのフィギュアは蹴りや正拳突きヘッドバット様々なポーズで電柱を折り砕きます。
お値段一個500G。いかがでしょうか? たもつさん。
▽
通知を見て起動したウランドには自動リンクしたVメッセにメイドの1日が報告されていた。
左画面には暗い駄菓子屋のまえで佇みクールにたもつを見つめるメイドの姿があり、右画面にはメジャーなメッセージアプリであるVメッセが表示されている。
敷布団の上でうつ伏せになり懐に枕を入れた、手帳のように開いたスパホ。
「いかがじゃないだろ、つまみ食い女」
そう電子のキーをみぎの中指で打ち入力して。
暗がりの中じっと見つめるエメラルドの瞳に────
ながれてくる……今日一日のことがフラッシュバックさせられてしまった。
「はぁー……ウランドなら夢だけを見せてくれよ」
「こんなのが売れるわけ……いやAIでウランドなら売れるか……はっ」
暗い部屋で光のビジョンを見つめる。幻想と会話しながら、メイドの深々と下げた礼をもってして──才賀保は青春の切れ端であるその日1日を終えた。




