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 これってウチの駄菓子屋のパクリですよね? 返信ください。


 そんなクレーマーからのダイレクトメールがMY(マイ)に届いた。


 MY、メイッパイヤッターのことである。目一杯やったこと、そうじゃないことを言い放つメジャーなSNSアプリのことだ。


 もちろん俺みたいなぼっちがメイッパイヤッタことなんてないのでやってない。やってるのは俺であり俺の作ったクールメイドであり、クレームはそのアカウント宛にだ。


 唐突なスパホの通知に少し震えたが、無視しようと思った……だが俺は冷静に対応し。



 ふーん。会って話しましょう、と。



 確認したところ……捨て垢ではないみたいだ。女……。しかも色々とMYに上げられた加工された写真が載っていて……。こちらの住所まではバレてはいないと思うが……なぜ会わなければいけないのか? こちらはまぁ誰だか……把握しているんだが怖くないのだろうか?


 どうやって見つけたかは分からないけどウランドはマイナー位置情報AIゲームアプリ。ウランドをやっていれば俺の駄菓子屋の位置はバレバレだ。


 まさかのあの駄菓子屋からの挑戦状……。


 裏世界で何をしようと俺の勝手。


 クールなメイドの駄菓子屋だってただの思いつき。


 俺は架空の駄菓子を毎日作りまくり裏のガバガバの特許も取った。俺だけのオリジナル駄菓子だ。パクリ? いやオリジナルだ。オリジナルを元にした、ね。


 客はAI、客もAI。ウランドに元々用意されていたモブであったり、プレイヤーが作ったAIキャラであったりが個々に判断して店にやって来る。俺の経営する駄菓子屋苦売迷同(くうるめいど)はコツもつかみスタートダッシュを決めそこそこ繁盛してきた。


「駄菓子屋……なんなんだ……こええな、ふああぁぅ」


 深夜2:47、暗闇の中のスパホのライトが目に染みる。才賀保は右手で両目を3往復しスパホを充電器に差し。


 枕に顔を埋めてみたが、ドキドキと返ってくる。




「んだよ……ふぅはぁぁ……」




 やがて、眠りについた。




▼▼▼

▽▽▽




 集合住宅の敷地から出てとくに何もない道をゆく。やっていない保育園やなんだかよくわからないもの。周りにろくな店がないのはなんなんだろうなこの町は。


 道を何度か曲がり。まがり。


 角店にスピードをゆるめ。からからとやがて止まった自転車。


 日曜日なのにこんなに朝早く俺は……。


 風に乱したすっきりとしない黒髪をととのえ。ジーンズと黒い半袖を纏った才賀保は、スパホの時刻とダイレクトメールの内容を再度確認する。


 午前8:05。


 やくそくの駄菓子屋にて。


 緑とくすんだ赤の出っ張り屋根。その上の看板には。


 【駄菓子屋すくーるめいと】


 まさに今、敵城の前だ。


 その古ぼけたなつかしさを出そうと必死な看板をながめる。古い木の家も────。


 突然に、2階の窓がガラガラと開き。




「ようこそ、駄菓子屋さん?」




 見上げた黒目は見つかり、それを見つけてしまった。




▼▼▼

▽▽▽




 黒いセミロングの背を追い2階へと連れられていく。


 年季の入ってそうな味のある階段を上り。足音をつづかせる。


 見たことのある駄菓子屋スタイルのあのエプロンをしている……。


 駄菓子屋で話し合うことになった。駄菓子屋同士で。


 案内された部屋、畳部屋にうながされ座らされ。


 運んできたおぼんから。


 出てきたのは粉を溶かして飲むアレだ。


 アレをさーっと流し、ぐるぐるとスプーンでかき混ぜる、用意されていた強すぎる炭酸水はポップに弾け音を聴かせ。


 やがて鮮やかなメロングリーンを成した。


「どうぞ」


「あ、ども」


 正座はしていない舐められるから。堂々と知らない土地に足を崩し。


 ごくごく、ひんやりとした透明グラスをかたむけ喉をエメラルドが通っていく。才賀保は喉が渇いていたのか元の三分の一ほど飲み干し。


 ────とりあえず飲んでみたが、甘い……。……安い味だ。そして炭酸が強すぎる。この女の駄菓子屋チカラの低さがうかがえる。


「なんで笑ってるんですか?」


「いやっべつに」


 笑ってもいいだろ。今の時代に駄菓子ジュースだぞ。……でも炭酸か、苦売迷同にも取り入れてみるか。


「で、パクリの件なんだけど」


「パクってないっすよ」


「駄菓子屋の場所で駄菓子屋をやるこれパクリわかる?」


「裏世界だからね」


「はい? 何言ってんの」


「だからさぁ、ダイレクトメールでも説明しましたよね、現実世界の裏の裏世界にはあんたの駄菓子屋はないの」


「ちょっと何言ってるかわかんないんだけど」


「だからこれ全部空想妄想。分かりますか? ゲームみたいなもんなの、現実と裏をごっちゃにしないでくれ」


「現実でも裏でもそこに駄菓子屋があるんでしょ、明白なパクリじゃない」


「だからさぁ……それはパクリって言わないのよ、駄菓子屋なんて始めようと思えば誰でも始めれるだろそんなもん」


「バカなの? あなたには無理だけど駄菓子屋舐めてる?」


「はぁ!? 言っとくけどなぁこっちはな57万G(ゴールド)稼いでんだよ駄菓子屋で!」


「……ゴールド? ふふふふ、ゴールド? なにそれ?」


「ごっ……円だ円!」


「ゴールドふふふ」


「おいふざけッ!」


 緑のエプロンに前ポッケがふたつ。キュッと腰の上に結んだ一筋のヒモ。黒い髪、エメラルドの瞳がワラっている。


 才賀保の目の前の女が笑っている、バカにし笑っている心から。

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