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 駄菓子屋オンナがウランドを始めた。このゲームをやってるやつは烏未波にはおそらくいない。そんな誰もやっていない個人開発のゲームを何故はじめたのか、俺を苦しめ困らせたいのだろう。


「でこれ何すればいいわけ?」


「何ってわかるだろ」


「全然わからない!」


「画面上にAIエネルギーってあるだろ」


「うん」


「毎日コツコツそれ使って好きにAIチカラ上げるなり行きたいとこに遊びに行かせるなりしろ、そんでAIだけじゃなくてお前が現実世界を徘徊しながらアイテムやゴールドを集めるだけの位置情報ゲームだ」


「はぁえーあいちから……?」


「そだあなたのわたしの駄菓子屋は?」


「あなたのわたしの駄菓子屋じゃなくて俺のおれの駄菓子屋苦売迷同な」


「はいはい私のわたしの駄菓子屋すくーるめいとのパクリね」


「だからパクって、はぁ……店出したいなら1000万Gいるぞ」


「1000万、ゴールド!?」


「わたしのサイガタモツは3万しかないけど?」


「ほんとついさっき始めたのかよ、俺もはじめは」


「って誰がサイガタモツだ! おい消せ!」


「あははだって他に思いつかなかったもんこのヘンナ子の名前!」


「他人の本名使っていいわけねぇだろ! ってヘンじゃねぇ!」


「えぇ、だめぇ?」


 たたんだ両手こぶしを上げて顔に寄せる、首を左にかしげる。その唐突なぶりっ子ポーズにおもわずたじろぐ。


 恥ずかし気もなくそんなことをやるのは男子として見下されているからだろうか。


「だ、だめに……はぁ別にいいや」


「え? なぜもっとサイガタモツなら食い下がってくるとおもっ!」


「べつにサイガタモツなんて全国に腐るほどいるからな」


「いやいやいないいないサイガもいないしタモツも今時いない」


「……ウランドで、裏世界で、何しようがおまえの勝手俺の勝手、だから俺がテンションを高めて止めることももう馬鹿らしいってわけだ」


 そうそれは勝手、俺が目の前の人物に言ったことだったのを思い出した。ウランドは自分の作ったAIキャラの生きるただの黒い裏世界。このまっさらな黒い皿には何をしたっていいんだ、現実じゃないんだから。


 気付けば逆にそいつの目を見つめ返していた。抹茶色の瞳は見開き、右の髪を耳を出すほどにかき上げながら。


「……サイガタモツいきなり賢者になった?」


「賢いかどうかはわからないけど、宇宙人はまともに相手しても会話ができないからさ」


「ふぅーん……って誰が宇宙人よ!」


「ん? 宇宙人で駄菓子屋でハレジョだろ? じゃあ宇宙人だ」


「意味不明なんだけど?」


「これがずっと意味不明を相手にしている俺の状態なん、だよっ」


 クールダウンした頭と視界に少し溶け出したチョコレートパフェがあるのに気付いた、それを口元に運ぼうとしたとき。


「こがなつみ」


「はい?」


「宇宙人じゃないよ、こがなつみ」


 こがなつみ、そんなフツウな名前が目の前の美少女から聞こえてきた気がする。もう一度それをきいたならば──


 抹茶パフェを食べるこの宇宙人の正体は、こがなつみ。


 銀色のスプーンを俺に刺しむけて微笑んでいる。

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