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 鉄色の自転車のうしろ二人乗りのあのおもしは過ぎゆくハルの幻へと消え、烏未波高校2年、才賀保の日常はまた難なく始まっている。


「クリームパン事件って知ってるか」

「なんだそれ」

「購買のクリームパン相手に大暴れしたヤツがいるらしい」

「もうすでに意味不明だけど」

「ほらあの79点の」

「……あーゆめのみほ先生か、72点の」

「99」

「だからお前だけたかいって!」

「「ははははは」」


 昼休み、ガヤガヤのバカみたいなでももはや落ち着くお経BGMを流しながらいつものようにスパホを。こんな友達のいない才賀保という男子生徒にも1年のときはうっすい繋がりの友達がいた。


 メシを一緒に食べるだけであったり、ゲームやアニメの話題を少し共有したり、でも。


 切られたのだろうな、新たな条件の良いまともな友達という物件に乗り換えなんて。そいつは数少ないクラスでの同中のヤツだった、ならいままで仲良くなくても同中として多少は仲良く付き合うものであり。最初はそんなトモダチという雰囲気を周囲ににおわせていたものなのだけど。


 俺としては来るものは拒まず去るものを追うのはミジメでダサい……。そんな風に考えていた。ソイツは今までの関係が無かったかのように他のヤツらと仲良くし出した……いいよ今の時代ならそんな風に切られてもスパホという唯一無二の友達がいるし、ソイツとも全然話が続かなくて困っていたんだよなぁ俺が友達としての会話文を考えるのを。正直アレは苦行だろぉ!


 でも自分から友を切ったりは絶対しないそれが才賀保という人物であり──いや、切ってないよな? そんな雰囲気俺は出していない。絶対に!


 ──マ、とにかくカラスミは屑が多いよねってことだな、はは。


 醤油が少しつよい卵焼きを食しスパホから俺の日課であるウラン──


「な、なに……武田さん」


「才賀くんあのハレジョの優勝ちゃんは?」


 俺にとって今時のJKといえばこの人、武田良子。黒髪のセミロングでフツウより上の水準の顔立ち。愛嬌のある陽気で誰にでも仲良くしゃべりかけ、この人は誰とでも仲良くなれる可能性があるんだろうなと思っている。クラスの中心だけど中心ぶらない、おのずとみんなに頼られて中心になっている──そんな良い人だ。


 だけど今はちょっと、いやひじょうに、良くはないのかもしれない。評価をさげ……。


 ガバッと急にラッキーシートに振り向いた堂々と顔を見つめてくる女子に対し。


「ハレジョの優勝……いやアレは」


「幼馴染なんでしょ! もうすっごく可愛くてびっくり」


「……いやアイツはダガ」

「はぁ幼馴染はわたしなんだけど」


 隣から声が。右耳の方には、金髪の女がいる。こいつは……また俺にとっては濃くてもソイツにとっては薄い関係の人だ。


 てか武田さんわざとやっている……よな。


「ね? たもつ?」


「そうだなとしか……いえないけど?」


「ははは、今のはちょっとツボ」


 武田はげらげらとその返しに笑い。金髪も笑っている。


 こいつは幼馴染、正真正銘の……方の幼馴染であり。幼稚園からの付き合いの、白川春(しらかわはる)。金髪とは思えない澄んだ名前をしている幼馴染。


 なぜか俺を下の名前で呼ぶけど……俺の青春II年の蓄積データによると、それはただの幼馴染であり下に見られているだけなのである。とりあえず飼い猫に首輪をつけて飼い主ですよとアピールをしておく、そうすることによりふんわりとした優越感と特別感に浸れる放し飼い。下で呼ぶのを怪しまれても、実際武田さんに怪しまれた、恋人ではない幼馴染だからで通せるしそれで難なくクラスに馴染みきっている。


 だからつまりなんのために下の名前でよ

「才賀くんMY(マイ)のメッセージ通知来てるよ、えいっ」


「あ!?」




そういえばごちそうさま。ま現役JK的に私がおごられるのは当然だよね? サイガタモツくん!


かわいいハレジョ女子との2000円デートコースはいかがだったかな? あと最後のサプライズ、アレはせいしゅん? ふふふふ、やり返したつもりかな? ウケる





「え、フフなにこれやば」


「たもつが!? え、めっちゃ美人」


「いやちがちがちがう、これはこいつにハメられ」


 急いで隠したスパホ、絶対に押してはいけないボタンを押された先に待っていたのはあの窮屈な2人のパフェ画像。エメラルドの瞳が陽気に輝いている。


「優勝!」


「サイガタモツ優勝」


「うわーたもつ優勝」


「なんだよその優勝って!」


「あはは才賀くんテンション高っ」


「デートえ、まじぃカノ」


「だから違うって……こいつは、このオンナは詐欺師なの!」


「「え」」


 たしかにテンションは高まっていた、言葉を選べないほどに。


 【え】唖然とする……笑いから険しい表情へと変わっていく金髪と黒髪女子。


 同情ともちがう何かイケナイものをみてしまったかのように。


「あ、ちがくてっ……」


「あー、なるほどね……2000ってそういう」


「たもつ……それはちょっとないわー。なんのサービス? ナニカツ? いつもスパホばっかみてたのそういう」


「いやちがうよっ! これはこいつが恐喝パフェデートで」


「「恐喝パフェデート」」


 まだテンションは高められてしまっていた、真っ当な男子生徒が女子2人に有る事無い事、いやないこと! 変な属性をつけられそうになったんだ内心はバクバクの焦燥でしかない。


 うっかり出てしまったその謎の強すぎるワードを何故か口を合わせて拾い上げられ。


 今目の前のよからぬ……下手な推理が繰り広げられているのがわかる。


「なにそれおそろしい才賀くん……ヘンタイチックあはは」


「たもつ……今からそんなサービスに頼ってるとまじでやばいよ? てかきもっ」


「ダカラッちがちがサービッ」


「あはは……優勝めざして頑張れサイガタモツくん」


「たもつ、大人しいとおもっていたら」


「白川さんちがうよ……才賀くんみたいに大人しいのが1番むっつりこわい!」


「たしかに昔からどこかズレてんだよねぇ──────」


 


 その後の記憶は無い、ただ醤油辛い卵焼きの製作者は仕事に疲れているのだろうと。その味がなぜか染みたし、そんなことより結局は誤解は解けずそいつらはどこかの友達と飯を食いにかしらないが去っていった。タイミングのわるすぎるエメラルドの瞳に図ったのではないかと……そんな疑いをかけながら臙脂色のひとり背は長すぎるため息をもらしていく。

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