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13

 アカとミドリの自転車はなんとか2人を乗せて通学路をゆく、青信号のラッキーに導かれて──


「おおー、サイガタモツはチカラを持て余していた」


 ばしんばしん、と臙脂色の背を叩く調子にのった後部座席のハレジョ。息を少し乱しながら漕ぐその男子。


「てぇ、なんでフルネームなんだかっ!」


「だってサイガタモツはサイガタモツでしょ? 言いやすいしぃ」


「俺は才賀保だけどお前は誰なんだよーーっ」


「うーん? そいや名乗ってない?」


「いいから名乗れ!」


「うわそんなに知りたいのハレジョの女の子の名前?」


「お前は俺をストーカー聞き込みでもして知ってるだろうが!」


「うん、で?」


「本当に会話って知ってるか駄菓子屋!」


「ふふふ、んー、その冴えない勇気にめんじて教えてもいいけどぉ~」


「やっぱ教えるな! いらない!」


「は!?」


「いらないいらないゼンゼンいらないっ!」


「はぁ? ふふふふ、イライラ?」


 くだらないやり取りを全国放送する勢いで発し続けている。道ゆく他人の目すら見えているが見えていない。才賀保にとっては真剣勝負、深緑色の彼女にとっては謎のせいしゅん──


 真剣にやらないとこのオンナに笑われているだけ、才賀保は人生で出したことのないチカラでペダルを踏み締め。


「何がそんなになぁーーっ! 舌噛むぞ!」


「ひゃっ!? ちょっといきなりトばさないで!」


「舌噛むって言ったろ! 俺はちゃんと」


「もっと一瞬でわかるように言いなさいよ!」


「おまえが言うな! って、か服つかむなっ!」


「せいしゅんだからね」


 ふいに手が触れて危ない、座らされてしまった。あげく、ぎゅっと。


 何故そんな事を平気で出来るのか分からない、距離感……バグっている。ドキドキは高鳴って、後ろのその女子に高鳴らされていく。こんな今時の高校生すらやっていない恥ずかしさ満載を乗せて俺は自転車を漕ぎ続け。


「無理やりはセイシュンじゃなぁーーいっ!」


「あはは声のボリュームファミレスからずっとバグってるよサイガタモツ」


「バグってるのはァァ────」


 鉄色の自転車は道路端を疾り、たどりついたのはまだ下校もぽつぽつとしている。そいつのおなかま深緑の制服の──



 そいつを晴女の前で降ろしてやった。自分でも狂っているとおもった、そんな選択をするなんて。高まったココロと鉄色の相棒の勢いでそんな事が出来てしまった。


 敵城のど真ん前で止まった烏未波の自転車。


「ちょ、ちょサイガタモツ?」


 保は自転車をおもむろに降り、まだ降りやしないそいつを学校側に揺らし落とし。


「きっかり送ってやったぞ校門まで」


「え、な、」


「じゃなッ駄菓子屋」


 唖然と見つめ見開くエメラルドの瞳はファミレスまでは見られなかった表情。


 前カゴにまだあった忘れ物、鞄をぶん投げ……ふわりと。


 手を伸ばし抱え込み慌ててナイスキャッチ。そんな翠晴女子を、才賀保が微笑んだのは今日はじめてのこと。


 なにか言葉にならないものを背から聞いた気がした、何人かのざわつきの余韻が自転車を去るときにみえて気づいた。


 耳が熱帯びて恥ずかしいとはこのこと、明日からこの道は使えない。だから速くここを去ろう、でも。


「やられっぱなしは才賀保じゃない気がしてきた……ぞ!」


 やはり、勝利の風は心地いい。あのときのような。恥じらいなんてゼンブどうでもいい、青春? 俺をつかってしたいならしろよ受けて立つ!


 美人だからって駄菓子屋だからって晴女だからってオンナだからって──俺はまだまだ高2の才賀保だ。


 加速していく臙脂色の制服、黒髪をなびかせて──青信号のラッキーを突き抜けて────。

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