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白と赤のパフェはもうさんぶんのいち。キンキンとクールダウンしていく身体の熱。
「私もはじめてみていいかな!」
一瞬何を言われたか分からなかった。
はじめる……ウランドを? こいつが?
まさかの言葉に──
じっと見つめてくるのはエメラルドの瞳。何がそんなにたのしそうに──
「……はぁ? なんで俺の許可がいるの」
「だって知ってるんでしょこれ?」
「べつに……あ! お前俺の店乗っ取る気じゃないだろうな?」
「しませんけど? あなたみたいに乗っ取りは?」
「だから乗っ取りじゃなくて裏世界で駄菓子屋苦売迷同な」
「はいはいウラでこそこそ駄菓子屋ですくーるめいとのパクリね」
「だからパク……まやるのは勝手だけどこれ別にそこまで流行ってねえからな」
「へぇーたしかに私もウランド? なんて聞いたことないし、ま現役JK的に流行りのパズルゲームとかはやるけどあなたも?」
「パズルなんて本当にストーリーのない暇つぶしみたいで俺はやらない、てか自分で現役JK的に……」
「なにその偏屈……あと現役JK的は今だけだからね!」
「現役だかなんだかどうでもいいけど……今の時代ゲームなんていっぱいあるだろ、ならどうせなら好きなのやればいいしパズルなんてむなしいじゃん」
「ただの遊びのパズルがむなしいって感受性……ふぅーん、でむなしいサイガタモツのそれがこれ?」
「ウランド──登録は、無料ね。慈善企業?」
「慈善って……さぁ? その個人開発者の趣味じゃないかな。言っとくけどなまだまだ見切り発車って感じだぜ。お前がたの」
「いいじゃん見切り発車、なんでそんなにビクビクしてんの?」
「ビクビク!? してないから! さっさと登録しろよ」
「キャラメ──あ、写真撮ろうよ」
「はぁ? な、なに?」
「撮った」
ぐいっと、席を立ち上がって中腰、サイガタモツのパーソナルスペースはその現役JKにお構いなく侵されて、シャッター音が鳴る。
「おい! ふざけんな!」
「じゃデート代2000円」
「でデート!? ふざけんなよほんとに……駄菓子屋オンナに2000……」
「この青春の放課後の写真を」
見せつけるスパホの画面にはその人差しが、メイッパイヤッターに上げようとしている。元気なエメラルドの瞳ピースをする明るい今時JKと、後方で右に体を傾けて窮屈そうに苦い表情でカメラ目線する鏡のセカイで見たことのあるヤツ、キャンセルを聞かない送信ボタンを触れるだけだ。
こいつは本気だ、赤の他人のカラスミの校門まで押しかけてずっとニヤニヤと。今はクールにすっとエモーションレスな表情で俺を覗きたのしんで────
「あぁックソっ分かった! 出してやるよ飽きない苺パフェに2000円!」
「抹茶パフェもね!」
「しるか邪道!」
声のボリュームというのは自分ではあまり気付かないのかもしれない、久々に表舞台で……女子としゃべったのならなおさら──じっと見られている。あの子供も、親も、増えてきた臙脂色の女子集団、バイトのウェイトレスも。
さすがに耳が熱帯びた──のは俺だけじゃないようだ。席を立っているオンナと目を合わせて、やかに近い距離もそれどころではなかった。
「は、はやくいこ」「そだな……」
中途半端に余らせたパフェを素早く──既に抹茶は完食されていた。




