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異世界転移[後編]
しばらく平凡な山の景色を見ているとなんの前触れもなくほとばしる白い光が、バス内を満たした。
視界が晴れ辺りを見回すと中世ヨーロッパのような大広間に変わっていた。
「何処だここ、バスは?夢でも見ているのか?」
これが噂に聞く白昼夢という奴だろうか。いや、夢の自覚があるのは明晰夢というのだっけ。
辺りの連中も呆けているものと慌てているものが半々くらいか。よく見ると、中世ヨーロッパ風の服装をした人たちが少し離れた位置から俺たちを観察しているのが窺える。ドレスを着ている者、紳士服のようなものを着ている者、兵士のように鉄製の鎧を着こんでいる者もいる。中世ヨーロッパのような建築物だから、俺たちの服装の方が浮いているように感じる。
そんな中、こちらを見ている連中の1人が前に出る。
「皆さま驚きかと思いますが、どうかお聞きください」
恐らく俺たちと同年代の少女のよく通る声が響く。少女は華美なドレスを着ていた。周囲には他にドレスを着ている者はおらず、一際存在感を放っている。隣には王様っぽい人もいて…まあ、なんだ…。一言でいうと、どう見てもお姫様だ。