母、暴走
食事も終え、自宅まで向かう。家族にはクラリカの事は言ってないからな。とりあえず家に入る前に変身しておかなくては。
「お主、少し待っておるのじゃ」
「む、わかった」
俺はすぐにその場で闇を召喚して変身する。よし、これでいいだろう。
「待たせた。瀬戸 奏多だ」
「なるほど、これは……」
鎌久さんは品定めをするような目を見せると、何かに納得したようにうなずいた。
「いい戦闘経験を積んでいるようだ。こっちの姿だと圧が違う」
ステータスの総合値的には変わらなかったはずなんだけどな。
「そうか。じゃあうちに入ろう。さすがにそろそろ休みたいだろ?」
三日三晩外に居たんだよな確か。
「いや、それは大丈夫なんだが……。うまい食べ物が食べたい」
さっきオムライス1人で完食してたよな? まだ食べるのか。結構華奢な体系をしているとは思うのだが……。
「そうか、なら上がっていくといい」
「ああ、お邪魔する」
二人で家に入ると、いつもとは違う物音からか、妹が玄関まで来た。
「ただいま、唯華」
「お帰りお兄。で、そのお方は誰なのよ?」
妹の唯華はかなり機嫌が悪い様子だ。どうした?
「拙者は鎌久 永瀬と申す。瀬戸 唯華……さんでよろしいだろうか」
「ママ~、お兄が女連れてきたんだけど」
唯華は相当機嫌が悪いようで、挨拶になにも返すことなく居間へ向かっていった。
「悪いな、今は相当機嫌が悪いらしい」
「あ、ああ。構わないが……。母に言いつけられているのはいいのか……?」
「まぁ最初からいう気ではあったしな。きっと大丈夫だろ」
今から唯華と母が話す声が聞こえてくる。まぁめんどくさいことにはならないだろ。
「ついに彼女を連れてきたのね!! お母さんうれしいわ!! 今日は赤飯ね!! もうピザできてるんだけど!!」
いつになくテンションの高い母が玄関に滑り込んできた。
……めんどくせぇ。
母はそのままの勢いで鎌久さんの手を取ると、その手を激しく振りながら自己紹介を始めた。
「奏多の母の弓香よ! お義母さんって呼んでもらってもいいわ!」
「……鎌久 永瀬と申します。お母様、お若いですね」
母の勢いに押されてか、鎌久さんがすごく普通の話かたをしている。ふつうに話せるのかよ。
「あら、お世辞がうまいのね。是非上がっていって? なんなら泊まって行ってもいいのよ?」
「それに関してお願いなのですが……しばらくここに泊めていただくことはできないでしょうか」
その言葉を聞いた母がこちらを見る。なに? 訳アリ? とでも聞きたそうな顔だ。
まぁ実際そのようなものだろう。なんならそういった想像よりひどい状況と言えなくもない。
「家はまぁ奏多のおかげでそこそこ経済的にも余裕あるし、全然いいわよ。なんならそのまま籍入れても……」
「落ち着いてくれ、母さん。とりあえずピザを食べよう。な?」
鎌久さんに視線を向ける。
「ピザ……」
そういえばピザが何か知らない、のか? まぁ知らないか。
◆◆◆
かなり色々流したが、食卓に着くことができた。唯華はすでに部屋に戻ってしまった。
「奏多殿、これはどうやって食べれば?」
鎌久さんは俺に食べ方を聞いてくる。
「この部分、まぁ耳っていうんだが、そこを持って先端部分から食べるんだ」
「そうか! 感謝する」
母さんはキッチンからにやにやしながらこちらを見ている。ちなみに父さんだが、まだ仕事中である。
鎌久さんは慣れない手つきでピザを口に運ぶ。一口食べた鎌久さんの目の色が変わる。
「これは、美味い……! いくらでも食べれてしまいそうだ!」
鎌久さんは慣れないながらも上品にピザを食べていく。俺はオムライスのおかげか腹は膨れているので、つまみぐらいしか食べていないわけだが、いつの間にか、一枚消えていた。
「いくらでもあるから遠慮せずに食べてね」
どこから出してきているのかわからないが新しく2枚のピザが出てきた。そこそこ本格的だが、小さめの。
「なくなってもまだ食べたいようだったら作るからね」
母さんの手作りだったらしい。
「ありがとうございます。お母様」
鎌久さんは母さんの前だと普通に敬語を使うことに決めたらしい。母さんはそう言った後、俺の方に近付いてきて耳打ちをしてくる。
「どこかのお嬢さんなの? 彼女、結構箱入りじゃない?」
鎌久さんのもともとの家についてはしらないな。なんて答えればいいか……。




