2023年バレンタインIF『瀬戸 唯華』
軽いバレンタイン記念(3/3)
明日からは通常に戻ります。
「奏多、今日は急いで帰るのか?」
「おう、今日は呼びだしがかかってるからな」
探索者としてパーティーを組んでいる彩佳からのお誘いである。断る理由なんてないしな。
「じゃあ気を付けて帰れよ~」
「おう、和人も気をつけてな」
そう言って俺は教室から出て、下駄箱へ向かう。すると何やら下駄箱を入念に確認する男子の姿がちらほらとみられた。どうしたんだあいつら。
しかし、何か今日は皆浮足だっていたな。特に男子。何かに期待していたしたような、そんな感じ。今日何かあったっけか?
まぁいいや。とりあえず一旦急いで家に帰って、そして荷物を置いて早く彩佳の元に向かわないとな。
バス停に行くと、何やら男女のカップルがいつもよりも多いような気がする。ずいぶんとただれた世の中になったものだ。俺なんて今まで誰にも好かれたことがないというのに。
その後バスに揺られること30分。自宅に到着した。そして、玄関のドアを開けると、なぜか妹である唯華が仁王立ちしていた。
「ただいま。唯華はそこで何してるんだ?」
「高校、受かったことを伝えてあげようと思っただけだけど? パパもママもお兄も私以上に心配してたでしょ?」
そうか、受かったのか! 唯華は先日うちの高校の推薦入試を受けていた。その結果発表は確か今日だったはず。なるほど、それはめでたい話だ。
「よく頑張ったな。偉いじゃないか」
「ありがと。これで今年からお兄の後輩ね」
そういうことになるな。学校でも人気者になりそうだ。多分、学校1の美少女とか言われるんじゃないだろうか。
家族としての贔屓目なしでもな。
「そうだな。何かあったら俺に頼れよ」
「そうさせてもらうわ」
一応兄だしな。
「それで、お兄この後時間ある?」
「あーすまん、この後は少し出かけるんだ」
「あ、そうなの?」
彩佳に呼ばれているわけだし、荷物を置いて制服から着替えて早めに向かわなければ。
「帰ってきたら皆で高校合格のパーティーをしよう。それじゃあ、俺は少し出かけてくる」
「わかった。じゃあ楽しみに待ってるわ」
◆◆◆
「全く酷い兄もいたものね……」
まだ他にも話すことがあったのにと、少し気持ちを静める唯華は台所に立つ。
「まさかバレンタインに出かけるなんてね。今年も一緒にチョコを作ろうと思ってたのに」
毎年、兄である奏多はバレンタインに用事等なく、家で唯華と共にチョコを作っていたりしていた。
「まぁいいわ。予定変更ね」
予定を変更した唯華は、一人でチョコを作って奏多にプレゼントすることに決めた。
「これで虚無にはならないでしょう」
唯華は冷蔵庫から板チョコ、バター等々材料を取りだす。
レシピ等確認しなくても、毎年作っているチョコのレシピは覚えている唯華は、かなりの手際の良さで、板チョコ、バターをボウルに入れていく。
それを湯煎で溶かしていき、その後別のボウルに生クリーム、砂糖、卵黄等を混ぜたものを用意する。卵白は別で使うので分けてある。
「これぐらいかしら」
さらにまた別のボウルに卵白を入れ、それをミキサーで泡立てる。
そしてまず、チョコと生クリームを混ぜたのち、メレンゲを数回に分けて入れていく。
「あとは焼くだけね」
唯華は型にそれを流しこんでオーブンに入れて焼き始める。そして、スマホを開いて、探索者について調べ始める。
高校生になったらすぐに探索者になると決めている唯華は、奏多の知らないところですでに両親に話を通し、許可をもらっていた。
もっとも反対しそうであった奏多には秘密で探索者稼業を行うつもりなのだ。
「絶対お兄なんてすぐに超えてやるから」
自分が慕う兄を超えてこそ、最強の探索者を目指せると、唯華は意気込む。ちょうどそこに、母が帰宅してきた。
「お帰り、ママ」
「ただいま~。唯華推薦受かったんでしょ~? おめでとう!」
すでに調べて知っていた母は唯華の事を抱きしめる。言われるまで気が付かなかったどこかの兄とは大違いだなと思いながら、ずっとくっついたままの母を引きはがし、チョコの焼き加減を見に向かう。
「そろそろね」
「あら、これは毎年恒例のガトーショコラじゃない。奏多はどこにいるの?」
毎年奏多と唯華が共にこのチョコを作っていることを知っている母は唯華に質問する。
「今年はお出かけするらしいよ」
「珍しいこともあるものね」
「本当そのとおりね、ママ」
ちょうどそこでいい具合に焼けたらしいのでオーブンから取り出す。
「もう奏多が居なくても作れるのね。成長したわね」
母がそんなことを言いながら唯華を見守る。
「あ、そうそう、奏多と父さんが帰ってきたら高校の合格パーティーをしましょうね」
そういいながら荷物等の整理をしに行った母に、唯華はやっぱり家族なんだなと再認識しつつ、ガトーショコラの一部を箱に入れて、1枚のメッセージカードを添える。
「今夜のパーティーの前に渡さなくちゃね」
そのメッセージカードには、『いつもお世話になっているお兄へ』と書かれていた。
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