買い物は計画的に……?
「服屋で変身とかちょっとあれだし、変身しておくか」
「それはそうだけど……それまで服はどうするの?」
そうなんだよな。それまでが少し問題だ。いや、少し大きめのこのローブさえあれば一応は何とかなるな。
「ローブで何とかしのごう。ズボンは常に抑えておくしかないな……」
本当に変身後は服ががばがばなので仕方がない。
『まぁローブさえあれば問題ないじゃろ~』
ロゼリアは楽観的だ。
「とりあえず変身してみて考えよう」
鑑定のウィンドウに触れて、黒い何かを召喚し、変身する。相変わらず奇妙な感覚。
「変身できたのじゃ」
ロゼリアのリクエストも忘れない。というかこの姿で元の自分を出すのは恥ずかしい。
『お母様~!』
もはやアイドルのファンのようなロゼリアを流しつつ、ローブを体を隠すようにきる。
「よし、じゃあ出ようか」
彩佳の合図でダンジョンの出口に向かう。ここまでずっとダンジョンの中である。きっと俺が気絶していた間に魔物が全部やられてたんだろうな。魔物に会わなかったし。
「目線、気になるのう」
ここはそこそこ人の多いダンジョンで、先ほど俺達がいたあまり人がいない場所を除けば、割と人とすれ違う。すれ違う人からいつもは受けない視線を受けるから、少し気になる。
視線が気にならないような服をちゃんと買わないとな。
「かわいいからね」
彩佳からそういわれるが、まだ俺自身の普通な感覚が抜けてないからかよくわからない。
階段を上がり、ダンジョンを出て改札を通る。ここからはなるべく早めに服屋に行きたいところだ。
ローブに銀髪とか目立って仕方ない。普通の服にしても目立つと思うが今よりはましだ。
『彩佳、お主も目立っておるんじゃからな』
「……それはそうだけど」
高校生にしてBクラスの珍しい例だしな。それに容姿もかなり良い。それは目立つ。
「とりあえず早く最寄りの服屋に向かうのじゃ……」
さすがに早めに服を選びたい所。
「そしたら、すぐそこの服屋で適当なの買って商業施設とかでいろいろ選ぼ」
それが一番無難か……。下着とかはどうするんだろう。
「そうじゃな……。ところで下着は……」
「あー……。それは別の店でかなぁ」
彩佳には濁されてしまった。
◆◆◆
いろいろあって先に下着を買って今は服を見に来ている。正直、どんな服がこの姿の俺に似合うかはわからないから、彩佳にいろいろ見繕ってもらっている。少し申し訳ないが選びがいがあると言っていたのでセーフだろう。
『儂も服の感覚はよくわからんのう』
そういえばロゼリアはいつも同じ格好だからな。黒いドレスをずっと着用している。触れることができないから、そもそも実態がなく、洗濯等々も必要ないんだろう。
「妾はわかっておいたほうが良いんじゃがのう」
「これとかどうかな?」
彩佳が持ってきたのはベージュの長めのワンピースだ。どうだろう。体に当てて鏡で見てみるが……。
わからん。
「いいんじゃないかのう」
「適当に言ってるでしょ」
うっ……。
「じゃあこれは?」
白いパーカーに黒いスカート。少しスカートは短めだが、これが一番しっくりくるな。
彩佳曰く、これはプリーツスカートでミニがどうとか……。俺にはよくわからなかった。
「これがいいんじゃないかのう」
「本当? 適当に言ってない?」
「本当じゃよ」
「じゃあ買ってくる~」
彩佳が服を買ってきてくれたので、それをトイレに持ちこみ、ローブを脱いで着替えて、ローブ等をしまう。
うん、やっぱりこれがしっくりくる。
というか、一応女子トイレの個室に入っているわけだが、これって大丈夫なのか……?
考えないことにしよう。男子トイレに入ってもそれはそれで問題だからな。
「待たせたのう」
「お帰り~。やっぱり似合うね。まぁ元がいいから何着ても似合うとは思うけど」
『そうじゃなぁ。現代的なお母様もいい感じじゃ』
あのローブが現代的じゃないってのかよ。まぁ確かにアニメとか、中世ヨーロッパの魔法使いが着てそうな見た目ではあるが。
「さて、この後はどうするのじゃ?」
「え、まさかこの一着だけのつもり?」
「え?」
もしかしてまだ服を見に行く感じですか……? これでいいと思うんだけど。あ、でもロゼリアと違って洗濯が必要……待て、これどうしよう。家族に見せたら絶対引かれるぞ?
「とりあえず他、見に行くよ」
『儂もまぁ見てる分には悪くないからのう』
「ちょっと待つのじゃ……洗濯とかどうすればいいんじゃ? これ」
彩佳に助言を求めてみる。正直うちでは無理だ。妹に引かれるのが一番やばい。カースト上位の妹がふれ回ると地元での評価が死ぬ。
「あー……。うちで洗濯しようか? サイズほとんど同じだし、何も言われないと思う」
それは流石に申し訳ないな……。
「しばらくはコインランドリーで何とかするのじゃ……。どうしようもなくなったら頼むのじゃ」
無難に行こう。
「わかった~」
◆◆◆
「疲れたのじゃ……」
「まぁまぁ、これでレパートリーのは困らないんじゃない?」
『儂は現代的なお母様がイメージできてよかったのじゃ~』
このマザコンめ……。結局あの後、昼ご飯も食べずにたくさん服を選んだ。どこに置くんだろうなこれ……。俺の部屋に置くしかないか。
「これ、どこで元に戻ればいいんじゃろうか」
適当に戻ろうとすると、スカートを履いた男子高校生が現れてしまうわけだ。それは勘弁願いたい。
「男子トイレでいいんじゃない?」
「この姿ではいるのは気が引けるのじゃ……」
まぁ行くんだけどね。駅の男子トイレに誰にも見られないように入って、鑑定のウィンドウから変身の用意をする。
黒い何かが俺を包むが……。なんか広くなったというか、空間ができたか?
ちょうど試着室のようなサイズ感。黒いとっかかりに……。これはハンガー?
もしかしてこの中で着替えられたりする?
「着替えられるじゃん」
先ほどまで来ていたものはハンガーにかけてこの黒い空間を解除する。
もう一度、ロゼリアのお母様フォームに戻ってみるか。
黒い空間をもう一度呼び出すと、先ほどハンガーにかけた服が先ほどと同じ場所にかかっている。
うわ、便利。
とりあえず普通の俺に戻ってトイレから出る。
「悪い、待たせた」
「大丈夫。帰りの電車までまだ少しあるから」
そういえばずっと秋田で買い物をしていたのか。別に地元、青森でよかったと思うが……。
ああ、そういえば商業施設、スタンピードで倒壊してたな。秋田に来てよかったのかもしれない。
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