アイテムの使用は計画的に
やってきました駅前。集合時間の30分前。ちょっと早すぎたか。
「お待たせ、待った?」
ついてから5分もしないうちに彩佳が駅までやってきた。なんか有名なセリフを耳にした気がする。
「いいや、今来たとこだ」
「そう?」
『清々しいほどにテンプレじゃなお前たち……』
ロゼリアが呆れている。いや、わざとじゃないんだけどな。
「ロゼリアはアニメとか見てるのか?」
『彩佳が寝とる間に体を借りてみておるよ』
それは体に疲労がたまったりしないのだろうか。不思議だ。
「そうか」
「早めについたし、一本早いのに乗る?」
「お、そうだな」
確かにもともと予定していた電車よりも早いものに乗れる。
「よし、じゃあ行こう」
◆◆◆
「ここが秋田ダンジョンね」
「初めて来たぞ」
『儂らも初めてじゃよ』
どうやら秋田ダンジョンの経験者はいないらしい。改札を通って中に入る。そして入り口の階段を降りると、そこは古いタイルのようなもので壁を作られた迷宮のようだった。
「結構よく見るタイプ?」
「初めて見たな、このタイプは」
今までは洞窟型と草原型しか見たことがなかったからな。まぁ歴が浅いから仕方がない。
『そういえば、渡したいアイテムと使いたいアイテムがあると言っておったがそれはどうなんじゃ?』
あ、そうだ【契約の腕輪】。鞄から【契約の腕輪】を取り出し、彩佳に渡す。
今思ったがテレパシーできるだけのアイテムなのになんで契約の腕輪なんだ?
「これは……?」
「俺からのプレゼント。同じ腕にはめると念話ができるらしい」
「じゃあ左でいい?」
「別に構わないよ」
俺は右利きだし、動きやすいからな。留め具を一度外して腕にはめると、留め具を止めなおした瞬間に俺の腕にぴったりはまった。
俺腕でぴったりなら彩佳には少し大きいんじゃないかと思って彩佳に左腕を見せてもらうと、彩佳の左腕にもぴったりはまっていた。
「ん?」
俺がこれを手に入れたときは同じサイズだったはずなんだけどな……。どういうことだ?
俺の左腕と彩佳の左腕を見比べてみると、やはりサイズが違う。伝説級なだけあって、オートアジャスター機能でもあるのか?
「ちょっと待って」
「何?」
俺の左腕を見た彩佳が何か少し怖い顔をしている。何か圧を感じるような。
「その指輪、何?」
「え、魔力ちょっとだけ増やしてくれる指輪」
ほんとにちょっとだけ。何か彩佳が怖い。
「ならいいけど」
『男子のピンキーリングはチャラいのう』
ロゼリアが何か言ってる。ピンキーリング……? もしかして指輪を付ける位置で名称とかあるのか?
まぁいいや、気にしなくてもなんか言われたらマジックアイテムだって言えばいいし。
「とりあえず彩佳、念話使えそう?」
『これで聞こえる?』
この頭の中に直接響いてくる感じ。ちゃんと使えているな。
『聞こえるぞ』
『儂にも聞こえるんじゃなこれ……』
どうやら彩佳の体が基礎になっているからか、ロゼリアにも聞こえるらしい。
まぁ俺達はあんま使わないかな……。それはそれとしてピッタリになってしまったこれはどうやって外すんだ……?
おい待て、外れないぞ……?
いろいろ試してみるがやはり外れない。
もしかして契約の腕輪ってそういう……。
一度鑑定しなおしてみよう。
【契約の腕輪 (効果発動済み)】
・階級 伝説級
・同じ側の腕に2人がはめると、その2人の間でテレパシーが使用可能になる。
・使用者の絆が強固なほど、効果が強くなる。
・念じることで不可視化可能。
・「契約した者の魂は永遠に結びつくだろう」
フレーバーテキストみたいな奴が追加されている、だと? 鑑定のレベルが上がったな?
それはさておき、このテキストの通りだとすると、外れないってことか?
「すまん、彩佳」
「何?」
念話をロゼリアと試していた彩佳に謝罪をしておく。下手をしたらこの腕輪、彩佳も外せないからな。
「この腕輪、外せないかもしれない」
「そうなの……?」
彩佳は少し考え込んでしまった。いや、本当に申し訳ないことをした。まさか鑑定でもわからないことがあるなんて。
「まぁ別にいいよ。デメリットはお風呂に入る時に邪魔なくらいだしね」
「そう言ってもらえると助かるよ」
永遠ってことはずっとこのままか……。
『起きてしまったことは仕方ないじゃろ。ところで奏多もう一つ何かあると言っておらんかったか?』
ロゼリアが話題を転換する。薬の話か。
「じゃあ早速使ってみるか」
『使う、とな?』
ロゼリアが興味津々といった感じで俺を見ている。彩佳は、腕輪を見てうっとりしていた。なるほど、デザインが気に入ったのか。
俺は鞄から薬の入った瓶を開けて、それを呷る。
「まぁこんな感じで特に何もな……い」
視界が傾いて見える? これは……。
◆◆◆
「うーん」
『目が覚めたのじゃな!?』
ロゼリアが食い気味に質問してくる。俺は気絶してたのか……?
一体なぜ?
『お母様……!』
お母様……?
「お母さまってどういうことだよ」
そういった俺の声はやけに高く、そして心なしかロゼリアに似ていた。
「やっぱり中身は奏多だね」
『それそうかもしれんが、見た目はまぎれもなく儂のお母様なのじゃ!』
「え?」
そういえば服がなんか大きくなったような……。それに下腹部に違和感もあるし……。
「はい、鏡」
「あ、ありがとう」
彩佳が見せてきたその鏡には、ロゼリアによく似た赤色の瞳を持つ銀髪の美少女が映っていた。
いかがでしたでしょうか。面白い! 続きが気になる! となっていただけた場合は評価、ブックマーク、感想等よろしくお願いします。モチベの維持につながります。




