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閑話『南口の激闘・1』

 青森ダンジョンの北口にロックリザードの大群が現れたのと同時刻。南口でも同じようにロックリザードの大群が()()になってダンジョンから出てきていた。


 理由は単純、入り口が狭すぎるのだ。青森ダンジョンの北口は半径20mはあろうかという大穴であるのに対し、南口は上下左右3m程度である。


 これでは北口のように一斉に出ていくことは当然不可能である。


「ハイ次ー!」


 それをいいように利用し、ロックリザードを嵌め殺しにする男が一人。弓使いでAクラスの但木 勝之助である。


「これ、いいんですかね?」


 彼の隣に立つのはBクラス探索者の霧島 礼二だ。


「いいの、いいの。どうせこの後やばいの来るから体力の節約にね。あと楽に経験値稼げてウハウハだよね」


「うわぁ……」


 いい年した大人のゲスい笑みに軽く引く霧島。


「な、なんだいその顔は?」


「なんでもないですよ」


 先輩探索者に引きましたなどといえるはずもない霧島ははぐらかす。


「まぁいいけどさ。お、そろそろ終わったかな?」


 隊列をなして出てきていたロックリザードがついに出てこなくなった。


「南口、164体ね。北口はもっとやばいだろうなぁ……」


「数えてたんですか!?」


「あ、うん。貴重なデータになるからね」


 確かに数えるのは重要なことだがこんな緊急時にやることではないのではと思う霧島であったが、かけらの緊張感も持っていないこの人は普段と変わらないことをしているのだろうと考え、納得した。


「うん? そういえば中に入れば外に魔物が出てくる前にスタンピードを終結させられるのでは?」


 ふと思い立ったことを但木に聞く霧島であったがその意見はすぐに否定される。


「だめだね、青森ダンジョンはその()()()が悪い」


「大きさ?」


 想像の斜め上の理由で否定された霧島はさらに質問する。


「北口の付近はかなり大きいだろう? その中でスタンピードと対峙すると、100%魔物に包囲される。それに外ほど視界もよくない。ジ・エンド。南口は逆に狭すぎて集団の闘いに向いてないから必然的に人は1人で戦うことになるけど、数が多すぎて一人じゃ無理。ジ・エンドって感じかな」


「なるほど……それは確かに」


 ちょくちょく挟まる何かは置いておいて、わかりやすい説明であったことに霧島は驚く。内心で、こんな人でもAクラス探索者なんだな、と認識を改めた。


「ちなみにだけど札幌のダンジョンのスタンピードはほとんどダンジョン内で終わったらしいよ」


「確かに札幌地下大迷宮だと今の話で上げられた要素がありませんね」


「そういうこと。だからここでは中にはいって解決できないんだ。お、そろそろ次が来るね」


 今度は蛇の魔物が洞窟から這い出てくる。


「んーこりゃまた同じ作業の繰り返しだな」


「繰り返しって、こいつを一撃で仕留めるんですか?」


 現れた魔物はブラッドスネーク。Bクラスの魔物で、霧島のパーティーではこれを一撃で倒すことなど考えたこともないようだ。


「まぁ多少消耗するけどできるよ」


 そういった但木は魔力を消費し、魔力の矢を生成する。


「これが俺のスキルなんだ。微妙だよね」


 その矢でブラッドスネークを一撃で殺した但木が言う。


「それで微妙だったら僕らはなんなんでしょうかね……」


「未来ある若者?」


「ああ希望が見える~でももう僕23なんですよね~」


 自らの年齢をカミングアウトし、希望はもう若者ではないと主張する霧島。


「残念俺は君の5つ上。つまり俺からみれば若者だね」


「先輩! 何か買ってきましょうか?」


「酒だ! 酒を持ってこい!」


「「あはは」」


 おおよそダンジョンの前、それもスタンピード中に魔物を狩りながらする話ではない。おちゃらけた但木と、ノリが良い霧島のおかげで成立してしまっている。


 そんなこんなで話しながらBクラスを効率よく殺していく但木であったが、次の瞬間に何かを悟った。


 おちゃらけていてまるで緊張感のない但木の顔が青ざめていく。


「霧島君。今すぐここから離れて。しばらく俺が時間を稼ぐから、なるべく遠くへ」


「え、どうして……」


「いいから早く! 逃げろ!」


 その怒気を含んだ但木の声に驚きながらも霧島は南口から離れていく。


「来たっ」


 但木は何か来るその瞬間に大きく後ろに跳躍する。


 その刹那、但木が立っていた地面、ダンジョンの改札、そしてそばにある建築物など、それらがすべて大量のダイナマイトで爆破されたかのように吹き飛んだ。


 但木は空中でがれきを射抜き、自分には何も当たらないようにしてから着地する。


 そしてダンジョンの入り口に向き直る。


「これはやばいねぇ……」


 そこには体高15mを超える巨大な蜘蛛の姿があった。その風格は間違いなくSクラスに及ぶもの。


「もしかして、ボスがこっちに来ちゃった感じ……?」


 おどけたしゃべり方をしながらも但木の頭は回っている。


 Sクラスはあとどれくらいで到着するのか、どうすれば被害は最小限になるのか、どうすれば生き残ることができるのか。


 しかし、そのどれも、答えは見つからなかった。

 いかがでしたでしょうか。面白い! 続きが気になる! となっていただけた場合は評価、ブックマーク、感想等よろしくお願いします。モチベの維持につながります。

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