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優しいお姉様

お姉様の婚約者である第三王子殿下は今ではお姉様の理解者のお一人ですが、わたくし頑張りました。姉は性格が悪いわけではなく、天然でドジで、間が悪すぎるのだと繰り返し、繰り返し、さらに繰り返して説明させていただきました。そのうち、殿下ご自身がお姉様の行いを観察され、わたくしの言葉が本当だとわかってくださったようです。

今では、お姉様の悪評を改善することを目指しつつお姉様を愛でるわたくしの、同志となってくださっております。


両親についても、わたくし頑張りました。両親からさえ誤解される天然、ドジ、間の悪さのトリプルコンボなお姉様です。

お姉様は幼い頃から間が悪かったのです。自分が躓いてわたくしを突き飛ばしたことは数知れません。場所が階段なら、階段落ち。場所が庭で近くに池があろうものなら、池ボチャです。

お姉様は妹が生まれて愛情が自分だけに向かなくなったことで、やきもちを焼いて意地悪をしているのではないかと誤解されました。わたくし自身は、お姉様がわたくしを可愛がってくださっていることを感じておりましたので、意地悪をされているなど、微塵も思っておりませんでした。ただ、突き飛ばされたり、髪を引っ張られたり被害は被っておりましたので、お姉様は()()()()()()なのだと思っておりました。泣きそうな顔で謝ってくださるので、わざとではないと思っておりましたが、周りの大人たちはお姉様の表情の変化がわかりません。妹に意地悪をしたと思い込みお姉様を叱っており、こんなにわかりやすいお姉様の表情がわからないなんて…と、わたくしは不思議でした。


そんなある時、幼いわたくしは熱を出しました。

夕食の頃から体に違和感があり、ポーっとしておりましたが、わたくしの変化に誰も気づいてくれませんでした。わたくしも、それが発熱の症状とはまだわからず、誰にも伝えられずにおりました。

ベッドに入り、しだいに熱が上がったのでしょう。苦しくはありましたが、体も思うように動かず、どうしてよいかわかりませんでした。そこへお姉様がいらしたのです。水が飲みたいことを伝えると、水差しからコップへ水を移し、飲むのを手伝ってくださいました。お姉様もまだ体がお小さかったので、水をこぼしてしまいテーブルとわたくしの寝衣が濡れてしまいました。わたくしが熱を出していることに気づくと、お姉様は水差しの水でご自分のハンカチを濡らしてわたくしの額に当ててくださいました。子供の力でしたので、ハンカチは十分に絞れず、水浸しでした。

そこまでしてから、わたくしが熱を出したことを侍女に伝えようと部屋を出ようとしたところで、お姉様はわたくしの部屋に入ってきた侍女と鉢合わせしました。濡れたテーブルとビチャビチャに濡れて熱を出したわたくし。()()()()お姉様は誤解されました。お姉様がわたくしに水をかけ、そのせいでわたくしが熱を出した、大人たちはそう考えました。お姉様が何を言っても信じてもらえなかったそうです。

お姉様だけが、わたくしの体調の変化に気づいてくれたのに。

薬を飲み、熱が下がったわたくしはお姉様に会いたいと言いましたが、会わせてもらえません。お姉様はわたくしに意地悪をした罰で部屋で反省させられていると聞き、両親にお姉様は何も悪くないと伝えました。けれど、かばわなくてよいのだと言われ、わたくしは大泣きしました。あれほど泣いたのは、後にも先にもあの時だけな気がいたします。

「なんでお姉さまがわるものになっているのですか。お姉さまだけが、わたしが熱をだしたのに気づいてくれたのに。お水をくれて、おでこを冷やしてくれたのに。うわ~~ん。お姉さま~~。わたしが熱をだしたから…ごめんなさい~。お姉さま~~」

普段おとなしいわたくしが声を上げて泣きじゃくるので、両親はお姉様を誤解していたとわかってくれたようでした。わたくしのせいで誤解されたのに、お姉様は怒りませんでした。熱が下がってよかったと笑ってくださいました。

この出来事を引き合いに出し、お姉様の()()()()()()()を何度も繰り返し説明するうち、両親もわかってくれるようになりました。

お姉様は意地悪ではありません。優しいのです。優しいわたくしのお姉様です。

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― 新着の感想 ―
[一言] こういう姉妹愛小説が好きです 続きを楽しみにしています!
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