殿下とわたし2
城に着くと殿下のところに案内されました。殿下の執務室に通されるものと思っておりましたが、お庭にお茶の準備がしてあります。
プリラム草は、予備の手袋と一緒に手かごへ入れて侍女が持ってくれております。
計画を企てて準備をしてまいりましたが、わたしも鬼ではありません。お姉様が天然、ドジ、間が悪いのトリプルコンボであることを説明してわかってくださるなら、プリラム草は持ち帰るつもりでした。
お姉様にひどいことを言って傷つけたことをわかってくださるなら、お姉様は意地悪な人などではなく、優しい方なのだと…そうわかってくださるなら、それでよいのです。お姉様に謝ってくださるなら、尚よしです…。
お茶をいただき、一息つきます。
「お時間をとっていただいてありがとうございます。お姉様のことで、ご相談があるのです…」
殿下にそう伝えました。まだどのような相談かは伝えておりません。もちろん、お姉様は優しいのに、トリプルコンボのため誤解されてしまうのだと相談するつもりでした。
「やはり、アリシアは君をいじめているのだな。あれほど意地悪で性格が悪いとは思わなかった…。大丈夫だ。わたしが守ってやるから安心しなさい」
わたしは呆然です。何を言っているのでしょう殿下は…。誰がいつ、お姉様にいじめられたと?
またしても、お姉様のことを意地悪、性格が悪いとおっしゃっいましたか…?
「違います」
「違う?」
「お姉様はお優しいのです。いじめられたことなどありません。意地悪だなんて、ひどいです」
「ライラは純粋なのだな。姉だからと…。叩かれていたではないか。あんな姉をかばわなくてもよいのだぞ」
「違います。あれは…」
お姉様の優しさを説明しようとしましたが、殿下がお姉様を悪しざまに言う言葉が続きます。殿下は、わたしの話を聞く気はありません。お姉様が意地悪だと完全に決めつけています。お姉様の言われように、泣きそうになってきました…。
泣きそうなわたしの顔を見て、殿下が「かわいそうに…」などと言っています。かわいそうなのはお姉様です。こんなに誤解されているお姉様が本当に気の毒です。
やはり殿下には、実際に身をもって思い知っていただくことにいたします。
侍女を呼び、花束を受け取りました。グローブをした手でプリラム草をしっかり握ります。
「殿下、あの時のお花を持ち出してよいと許可をもらったので、お持ちしました。かわいいお花でしょう?」
殿下へプリラム草を差し出しました。