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日曜日

case 1

和田道春の場合


酷い喉の渇きで目が覚めた。

カーテンを閉めきった部屋に

日の光が薄く差し込んでいる。


不機嫌そうに寝返りをうち

部屋の時計に視線を移す。


「12時前か…」


誰に伝えるでもなく

そう呟いて

仰向けに体勢を変える。


眠りに落ちてから

約5時間後の目覚めである。


「飲みすぎたー気持ち悪いー」


低くかすれた声で

ボソボソと唸りながら

右手で頭を掻く。


深いため息と共に

アルコールの臭いが鼻を通る。


常々思うのだが

飲んでるときは

あんなに美味しいものが

次の日にはこんなにも

嫌悪感を抱くものに

変わってしまうとは

不思議でならない。


口の中の不快感を

早く拭ってしまいたいのだが

いかんせん起き上がる気力がない。


ほとんど停止した思考で

悶々としている時に

視線の端にあるものを捉えた。


自分の部屋の低い机に置かれた

ペットボトルに

体勢を変えずに左手を必死に伸ばす。


千鳥足での帰宅中に

自分のアパート近くの自販機で買った

飲みかけの水だ。


起き上がって手を伸ばせば

すぐに届くのだが

変な意地がはたらいて

ここまで来たら

このままの姿勢で取りたいのだ。


「うっ…くっ…」


やっとの思いで

ペットボトルを手中に収め

半身を起こしてそれを飲んだ。


飲むときに起きるのだから

初めから起きて取れば良いものを。


残った水を飲み干して

首を鳴らし

大きなアクビをしながら

伸びをする。


睡眠時間は少ないが

不思議と眠くはない。


とりあえずと

立ち上がり歯を磨きに向かう。


洗面台の鏡には

青白い顔をした

自分の顔が写っている。

それに加えて

整髪料を付けたまま

眠りについたため

パーマがかった髪の毛は

より一層ぐちゃぐちゃと

乱れに乱れている。


シャワーを浴びる

選択肢をとるまでに

思考は回復してないため

顔を洗い歯を磨くだけに終わった。


その足で冷蔵庫に向かい

まだまだ渇いている

喉を潤すために

水を取り出し部屋に戻る。


水を飲み

タバコに火をつけて

思考の回復を図る。


何度か煙を吐いたときに

充電されているスマホを手に取る。


昨日?今日?に行った

お店の子からの連絡が数件

入ってきている。


夜の町、夜の店で働いている

女性はマメである。


飲みに行って帰ったあとか

翌日には連絡を送ってくれている。


昨日は楽しかっただの

これからも飲みに来てねだの

初めてだけど楽しかっただの

大体こんなもんである。


適当に連絡を返し

閉まったままの

カーテンを開ける。


日の光が眩しくて

切れ長の目がより一層細くなる。


昨日練り歩いた

夜の町の光とは違う

個人的には目に優しくない光に

少しだけ不機嫌になり

もう一度ベットに身を預ける。


私はお酒が好きだ。

私はタバコが好きだ。

私は女性が好きだ。


私は夜の町が好きだ。


夜の町の出会い。

夜の町の出来事。

夜の町だけの友達。


毎週土曜日の夜だけ

私は夜の町に溶け込んでいく。










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