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第48話 偶然ですよ?


ブーさんのアトラクションに乗った後、俺たちは木陰のベンチで休憩を取っていた。この暑さ、水分補給を含めた休憩を挟むことは必須だ。


「ポップコーンうまー。やっぱりディゾニー来たらこれだねー」


 キャラメルポップコーンをポイポイと口に投げ込んでいく瑞菜。


「俺は甘いのよりソルトとかしょっぱいのが好きだけどな」


「え~、普段ならそれもいいけどやっぱりディゾニーではこれだって! ほら!」


「おわっ」


 瑞菜はポップコーンを俺の口に押し込んでくる。


 いきなりのことでしっかり口を開けていたはずもなく瑞菜の指が唇に触れた。


「ど、どう……?」 


「いや、まぁその、ふつうに美味い」


「で、でしょ?」


「おう」


「まだ食べる?」


「じゃあもらうわ」


 今度はちゃんと自分でポップコーンを口に運ぶ。美味い。甘い。


 だけどなんとなく、二人して無言になってしまった。ひっそりと横たわる居心地の悪さ。少しのきっかけでそれは生まれてしまう。


 微妙な距離感。中途半端な関係性。瑞菜と暮らす時間が長くなるにつれて、それは露わになってきている気がする。


 二人暮らしを始めてすぐには、昔と変わらぬような二人でいられたはずなのに。まるで反比例するように、少しずつ離れていくようだった。


 のどに詰まった何かを押し込むように、ペットボトルの水を流し込む。


 それから少し勢いをつけて身体を押し出すように立ち上がった。


「んじゃ、次はどこ行く? やっぱジェットコースターか?」


「う、うん! やっぱりジェットコースターは乗らないとだよね!」


 瑞菜も、まるでノリを合わせるように声のトーンを上げながら立ち上がる。


「よし、じゃあまずはクラッシュマウンテンな!」


「え、マジ? いきなり落ちるのは心の準備が……」


「いいから行くぞ! 準備なんかしてたら日が暮れちまう!」


 俺は瑞菜の手を取って歩き出す。


 その時、背後から声がした。


「あれ、そこにいるのってもしかして――――」


 振り返る。


 同時によみがえる、先日の夕焼け。


「やっぱり! 偶然ですね、祐樹くん。それに、瀬川さんも」


 夏の太陽に照らされる彼女――小暮夢乃は柔らかく笑った。


 彼女の姿を目にして、瑞菜が叫ぶ。


「な、なんで夢乃がここにいるの!?」


「先輩、ですよ?」


「今はバイトじゃないし!」


「ちっ。モラルがなってないですね、このガキは」


「い、今舌打ちした! 舌打ちしたんだけどこの子! しかもガキとか! ねえゆう! そっちの方が全然モラルなってないよね!?」


 ねえねえ! と縋りつくように聞いてくる瑞菜。


 ああもう、何がどうなっているんだ。国内最大級のテーマパークで知り合いに偶然会うなんて、そんなことあり得るんだろうか。


 俺が視線を向けると、小暮はまたにっこりと笑みを寄せる。


「なあ、小暮。もしかして――――」


「偶然ですよ?」


 きっぱりと小暮は告げる。


「私、ディゾニー大好きなので。ひとりディゾニーだってお手の物です。今日はテスト勉強の息抜きにと思って来たんですけど、もしかして祐樹くんもですか?」


「え、あーうん。そうだけど……」


「では、一緒に回りましょうか。もちろんいいですよね♪」


 小暮は駆け寄ると、大胆に俺の腕を取る。


 瑞菜がいるからなのか、それともこの前の出来事があったからなのか。もう何も隠すつもりがないように見える。


「ちょ、ちょっと何してるの!? ゆうから離れてー!」


「え~、だってこうしないとはぐれちゃいますから。ちゃ~んとくっついておかないと♪」


「うぅ~~……っ」


 瑞菜は小暮を引きはがそうとしたが、そのか弱いチカラではビクともしなかった。そして正直、俺のチカラでもはがせる気がしない。


 悔しそうに呻くと、瑞菜は小暮とは逆サイドに移ってもう片方の腕に抱き着いてきた。さっきまで手を繋ぐのにさえ羞恥が見えたのに、その勢いにもう迷いは感じない。


「おい瑞菜?」


「いいの! もうこのまま行く!」


「ではでは、クラッシュマウンテンという話でしたね? レッツゴー♪」


 突発的に始まった両手に花ともいえるこの状況。


 両腕に感じる異性の柔らかい身体。汗と入り混じる、甘い香り。


 もう何が何やらわからなかった。

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