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第19話 太るぞ。


「ん~♪ 牛丼おいひ~♪」


 騒がしい一日を終えた俺と瑞菜は朝の宣言通りに、某有名牛丼チェーンへやってきていた。


 瑞菜も学校では色々と聞かれたようだが、本人はあまり気にしていないらしい。嬉しそうに顔を綻ばせて牛丼を頬張っている。


 だがその瑞菜の目の前に鎮座する通常より一回り大きい器に、俺は苦笑いを隠せずにいた。


「……おまえな、太るぞ?」


「ふぇ? ……なに?」


 惚けた顔をしてこちらを見る瑞菜。藍色の瞳が疑問を投げかける。都合のいい耳と頭をお持ちのようである。


「だから、メガ盛なんか食ってたら太るぞって」


「うっ……い、いいんだもん今日だけだから! それに朝が酷かったからその分補給しないとなの!」


 瑞菜は開き直ったようにぷいっと俺から顔を逸らして、牛丼を口に運ぶ。いや、自分の作った朝食ディスって牛丼やけ食いとか悲しくならない?


 とりあえず、面白そうだからもう少し弄ってみよう。


「約1500カロリー」


「え?」


「それがメガ盛牛丼一杯のカロリーだ。この意味が分かるか?」


 きょとんとしている瑞菜に俺は続きを語る。


「成人の一日に必要なカロリーは1800~2200。女子高生ならまあ2000以下ってところだろう。つまり、おまえはこの一食だけで一日の摂取カロリーの4分の3以上をとっているということであり朝と昼をプラスしたらもう――――」


「わーわーわー! わかった! もうわかったからぁ!? そんなに言うならもうゆうが食べてよ! はい、あーん!」


「――――むぐぅ!? おま、なにしやが……むごぉ……っ!?」


 突如、牛丼が乗ったスプーンが口の中に押し込まれる。


 ちょ、入りきらないから! てかご飯が熱い!


 俺は押し込まれ続ける牛丼をなんとか飲み込んだ。


「……おいし?」


「まあ美味いけど……ざけんなよおまえ」


「いったぁ!?」


 もはや定番となりつつあるデコピンを瑞菜の額に食らわせる。


「ったく……自分で頼んだんだから自分で食え」


「だってぇ……ゆうが脅すから……」


 しゅんと項垂れる瑞菜。この光景もパターン化してきている気がする。


「わ、わたし太ってないからねっ。ぜんぜん、太ってないからねっ」


「その調子じゃこれから太るけどな」


「むぅ……~~~~~~っ!」


 最初の笑顔とは打って変わって複雑そうに牛丼を口に運ぶ瑞菜を見ながら、俺はカレーを美味しく頂く。


 思い出の味とか言いつつおまえは牛丼食わないのかよって? 安心してほしい。ちゃんと牛も乗っているハイブリッドな子である。これもカロリー高そうだなあ……。


 結局牛丼の並盛が至高。並みの人生でいい。要するにそういうことだ。



 そして数分後には俺のカレーを物欲しそうに見つめる幼馴染がいたので、存分に食わせてやった。


 「明日から控えめにするからいいの!」とか言っていたが果たしてそう上手くいくものだろうか。


 太ってから後悔する幼馴染の姿が見える。


 でも、美味しそうに「ん~♪」とほっぺに手を当てながら牛丼とカレーを頬張る幼馴染を眺めるのも悪くはない気がした。


 よく食べる子は可愛いという奴だろうか。


 よっし太らせるかぁ。やせ細ってるよりはいいな、うん。適度なお肉、大事。


 瑞菜の体重および健康管理を俺の役目の一つとしよう。


 と言っても食卓を受け持つのは瑞菜だけど! ……マジで健康には気を付けようそうしよう。


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