クリスタルの侵食
俺たちは言葉を失った。
これが何を表しているかわかったからだ。
“クリスタルは生物を侵食する”その事実
いずれ俺たちもこうなってしまうかもしれない。それを思わせるには十分だ。
背筋が凍る感覚。先輩が言っていた覚悟とはこのことを言っていたのか。
「ふふ、そんなに怯えなくていいのよ。」
京子さんの微笑みが俺たちを和ませる
「そうだ。お前達は自分の心配をする必要はない。お前達に与えたクリスタルは、異常な侵食性は持ち合わせていない。」
心配するな?そんなのは無理だろ!
「何を根拠に言っているんですか?教えてください。」
顔が青ざめたエレナさんが聞く。こんな中でも、俺は彼女を可愛いと思った。少しばかりの心の余裕は持ち合わせていた。ようだ。。。
「根拠か。」
輝御先輩の背が光る。
「起きろキリル。お前の姿を見たがる人間がいるぞ。」
直後、輝御先輩の背後に、禍々しいローブを着た骸骨。いかにも死神と思える様な存在が現れた。
『我の目覚めを望むものよ、ここは戦場ではない。何ゆえ我を覚ます。』
頭の中に響く?いや、クリスタルを通して聞こえている様に思える。
背中から聞こえるというのはなんとも不思議な気分だ。
「キリル。お前まだ寝てたのかよ。通りで身体が重いと思ったぜ。」
『汝、我は夜行性だと申したであろう。少しくらいは多めに見るがいい。』
「あっそ。お前が寝てなきゃ流れがスムーズだったんだがな。」
『ふむ。ならば汝の記憶から教えてもらおう。』
輝御先輩が精霊と会話しているらしい。
俺の背中としゃべっている様で気持ち悪いぜ。
『なるほど。理解した。その汝の問いに答えよう。』
輝御先輩の精霊キリルは、エレナさんを指差してそう言った。
『汝らに移植されたその聖骸。それは我が手を加えたものである。我の能力は“管理”。汝らの聖骸は、我によって管理されている。我は能力を使い、汝らの聖骸のある一定の本能を制限しているのだ。』
「その本能とは、一体なんなのですか。」
『ふん、決まっているであろう、繁殖だ。』
「なっっ!」
なるほど。これほどの威圧感からして、多分本当ではないかと思わせられる。
それにしてもあの侵食は繁殖本能だというのか?なんだかなぁ。
エレナさんも絶句している。
『繁殖とは生物の原初の本能。我々をなんだと思っていたのだ。ただの道具ではないぞ。我々は外宇宙から来た、、、、、、』
「キリル!それ以上はまだ早い。」
キリルの発言を先輩が遮った。
外宇宙?なんぞや。それにしてもクリスタルはただの物ではない。それを実感したな。
そういえばいつの間にか恐怖がなくなっている。キリルの登場にビックリしたからだろうか。
『む、そうか。しかし理解したであろう。』
「そうだな。これ以上は大丈夫だ。二度寝して良いぞ。」
『我がそんなお寝坊だと言うのか。見くびられたものだな、、、、、、、』
キリルは文句を言いながら消えてった。
「結局寝てんじゃねぇかあいつ。あ〜重。精霊の補助ってこう言う時実感するんだよなぁ。」
「繁殖、本能、、、、、」
「そうだ。クリスタルは繁殖の為に生物に寄生し、喰らう。本能でな。しかし、ある程度の侵食しかしないはずだったんだ。先代までのクリスタル保有者は、大事に至るほどの侵食は無かった。」
「私の子はちょっと他の子よりヤンチャしちゃったのよ」
「俺とキリルが後悔させてやったよ。」
「全く、この子も悪気があったわけじゃないのに。」
「けどお前あのままだと完全に侵食され尽くしてたぞ。」
「そうなの?それならしょうがないかしら?ありがとうあなた。」
うーむ。クリスタルの侵食も怖いが、それ以上にこの人たちの方が怖いな。戦場のど真ん中でイチャイチャしてそうだ。
「先輩、もう一つお聞かせ願えますか?」
イチャイチャを遮ってエレナさんが言った。
「ああいいぞ。」
「何故、足なのですか?」
ん?どう言う意味だ?
「それはクリスタルを移植したのが、と言う意味で良いんだな?」
「はい、そうです。」
あ、なるほど。確かに俺たちは首筋で統一されている。
「首筋に統一したのは、蘭丸たちから、つまりは俺の一個下からだな。」
「それは先輩の能力があったから、ですか?」
「そうだ。俺とキリルが制限があって、初めてあの位置に固定されたんだ。」
「私たちの時は、実験的な意味合いもあって色んなところに移植されたのよ。」
こう言われると、輝御先輩の能力ってかなりヤバく感じる。いや、実際学園最強だしな、、、
「輝御先輩はどこに移植を?」
「俺か?俺は心臓近くだな。クリスタルが人の生命維持を阻害するのかどうかの実験だった。」
うわ、、、、それ一歩間違えてたら死んでたってことじゃん。
「だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃないぞ。俺の心臓は半分以上クリスタルに飲まれてる。」
「は!?じゃあどうやって生きてんだ!?」
しまった、驚きすぎて声に出てしまった!
「何故生きてるかって?決まってんだろ。クリスタルに心臓の役割をさせてるからだ。まぁ実際にはクリスタルに、というよりキリルにだがな。」
「この人の心臓は硬いのよ〜前にアメリカの刺客のがこの人を暗殺しようとしたんだけど、心臓がクリスタルだからただのナイフは通らなかったのよね。」
「あいつが持っていた精霊は優秀だったな。能力は“気配遮断”。今は俺が重宝してるけどな。」
ありえん。なんだこの超人。これが学園最強かよ、、、、、、
ぐぅぅぅ〜〜〜〜
突如間の抜けた音がした。それは輝御先輩の腹の音だった。
「お、そういえば俺たちはまだ食べていなかったな。」
「そうね。私もお腹減ったわ。」
「つーことでお前ら、解散!」
あっけにとられていた俺たちに先輩は解散を宣言した。
その言葉に従い、俺たちは解散し、各自城を回り始めたのであった。
自分のを読み返すと、一個一個がすごい短いよね!