聲
若干ベタついているドアの取っ手に抵抗感を抱きながらもスライドさせる。
開けた瞬間、ゆる風が吹く。
格好の獲物でも見つけたようにクラス中の人が僕の方をみた。
元々友達の数は少ないが、いないことはなかった。だが、クラスがなす一体感に、埋もれていく友達の姿が、いやでも目に入る。
肩に重りを乗せられたように、肩が重くなった。
「優、おはよー」
と後ろから大きな声がした。
声をかけてくれたのは、保育園から一緒のシュウだった。
シュウは、僕とは正反対の、いわゆるムードメーカー的な立ち位置で、誰にでも優しく、男女ともに人気が高い。
噂はシュウの耳に届いているかもしれない。
なのにシュウは僕にいつもどうり優しく接してくれる。
もしかしたら、噂は聞いていないのかもしれない。
もしシュウが聞いたらどうなるのだろう。
シュウもドロ沼に引き込まれるかもしれない。
僕が不安になっているとはつゆ知らず、シュウは「なんか優、注目されているな」背中をバシバシと叩き笑いながら席に向かった。
僕はイラつきを覚えながらも、席についた。
授業中途絶えることがなく、どこからともなく視線を感じた。
ようやく昼休憩のチャイムが鳴り、僕は駆け足で居づらい教室をでた。
出たクラスからは大きな笑い声が聞こえ、僕は、無雑作に広がる闇に、目を瞑った。
渡り廊下、ここは授業以外来る人はおらず、穴場的スポットだった。
階段に腰を下ろし、買ってきたサンドイッチにかぶりつく、何も考えなかった。ただ、食べ物を口に運ぶ作業。
「こんなところで食べてるんだ」
顔を上げるとアイが優しい顔で歩いて来ていた。
「関係ないだろ」少し無神経な言葉にイラついた。
「噂ってさ、どうしようもないよね。自分たちが弁解しようとすれば、ムキになるってことは本当だよね。とか、逆に何もしなければ、否定しないんだ。って、理不尽だよね」、アイは昔同じような経験をしたのかもしれない。
アイの言葉は、子守唄のように、暖かく包容力があった。




