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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

「エタなるストーリー」

作者: とあるweb作家

 グロ描写・シモネタ(エロ)があります。苦手な方はご注意ください。かなり黒めのコメディです。

 人によっては不快な表現があるかもしれません。

 内容がアレなので予告無く削除する場合があります。あらかじめご了承ください。

 俺は「narrow」という小説投稿サイトでweb小説を書いている。

 更新は数日に一回。アクセス数もお気に入り登録の数もそこそこあり、それなりに人気はあると自負している。まあ、ランキングに縁が無い時点でその自負もたかがしれているとはいえ、更新するたびに数千人が俺の書く小説を読んでくれているというのは、自信にはなっていた。

 しかし、気が重くてしょうがない。

 普段執筆に使っているノートパソコンを前に、俺は深くため息を吐いた。


 ――なぜなら、今日は、ヒロインが死ぬ場面を書かなければならないからだ。


 俺が書いているのは王道の召喚勇者ものだ。異世界に召喚された男子高校生が、勇者として聖女、魔女、戦士とともに魔王を倒して世界を救うという、かなりなテンプレストーリーである。

 物語は連載200回を越えて既に佳境を迎えており、長い旅を続けた勇者一行は、魔王の四天王を三人まで撃破したのだが最後の魔将の姦計により聖女が敵の手に落ちてしまった、そんな場面になっていた。

 ……はあ、気が重い。

 キーボードに乗せた手も、なかなか次の文章を打とうとはせずにいつまでも彷徨っている。

 しかし、このシーンは物語においてかなり重要な部分であり、いまさらプロットを修正するわけにもいかなかった。

「……よし、書くか! 死んでくれ聖女っ!」

 気合を入れるために声に出し、自らの頬を両手で張る。

 そうしてノートパソコンに目を向けた瞬間、不思議な現象が目の前で起こった。

「……?」

 まだキーボードに触れていないのに、突然、画面にテキストエディタが立ち上がりこんな文章を表示したのだ。


  聖女「勝手にあたしを殺すなー! あたしはまだ死にたくないっ!」


 は、ナニこれ?

 思わず目が点になる。

 まさか、これがたまに話に聞く、キャラが勝手に語りだすという現象だろうか。

 すっげー、初めて見た。

 驚いて見つめていると、また勝手にテキストがカタカタと表示されていった。


  聖女「やっと勇者と同じ気持ちだってわかって、告白して、これからって時に……」

    「死んでくれ、とかふざけたこと言わないでよこのクソ作者っ!」


 つか、自分で死亡フラグ立ててんじゃんよお前。

 最終決戦ちょっと手前で告白とかお前馬鹿でね? 殺してくれっていってるよーなもんだろがよ。俺この戦いが終わったら結婚するんだ!に並ぶ死亡フラグだろ?


 聖女「書いてるのはあんたでしょーがっ!? ってゆーかさ、自分で言うのもなんだけど」

   「ヒロインをこの場面で殺すとかどういうつもりよっ!?」

   「ここはさらわれたあたしを勇者が颯爽と助けに来て、より愛が深まる場面でしょ!?」


 いやだから、重要な場面なんだっつーの。

 ここでおまいが死んでだな、勇者が真の覚醒をするきっかけになるってゆー。


  聖女「む……詳しく教えなさいよ」


 ん、あれだ、四天王最後の魔将の邪神官はな、お前をいけにえに邪神の復活をしようとしててだな。勇者は間に合わなかったが、聖女を失ったその悲しみと怒りで真の覚醒をして、その力で邪神を再び封印するってゆー、かっちょいー場面になるのだ!


  聖女「むう。悪くないじゃない? あたしが死んでることを除けば……」


 だべ? 納得して死ぬ気になったか? ん?


  聖女「ってゆーか、覚醒のきっかけなら別にあたしじゃなくてもさー」

    「影の薄い戦士とか殺しとけばいいんじゃないの?」


 おま、聖女の癖にひでえこと言ってるなー。いや戦士には別の死に場所があんだよ。

 ここで殺すわけにゃいかねーんだ。


  聖女「ちなみにどんなふーに死ぬの? あたしよりかっこいい死に方だったら許さん!」


 魔王城でな、件の邪神官の前に立ちふさがって「ここは任せて先に行け!」ってやつだな。

 「聖女の仇は討たせてもらおう」って。


  聖女「……あれ? あれあれあれー? まさか戦士ってばあたしに気があったりぃ?」

    「いやん、うふふ。でも、あたしには勇者がいるんだしぃー」


 あー、ちなみに戦士、全身鎧で顔見えてねーけど実は女だから。


  聖女「ちょ、モテたかともったら即行で落とすんじゃないわよっ!」


 でもって死ぬのはもう少し先でな。なんとか邪神官を単独で倒して、瀕死の状態で合流。

 もはや盾くらいにしかならん、と魔王の必殺攻撃から勇者をかばって死ぬわけだ。

 そこで鎧がはじけ飛んで実は女だったとわかるという、ステキ展開。

 いいよな! 死ぬ直前に秘密がばれるとかそゆ展開。


  聖女「なにその無駄な隠し設定。ってか今頃戦士が女だとかいわれてもさー」

    「だいたい死ぬ直前にばれても意味なしじゃないの?」


 ハーレムタグは伊達じゃねーんだよっ!

 勇者以外のパーティメンバーは全部おにゃのこなのさっ!

 あと全身鎧で顔隠してるやつはおにゃのこの確率が高いのはお約束だっ!


  聖女「あれ? ってゆーか、ハーレムってことは戦士も勇者が好きだってこと?」

    「あいつ男同士だからって、宿はいっつも勇者と同じ部屋取ってなかったっけ?」


 たまにゃ同じベッドで寝てたりもしたなー。

 まあ、道中は勇者も戦士がおにゃのこだとは気が付いてないんだけどな。

 男なのに、なんか戦士時々色っぽい気がする俺ホモちゃうのにびくんびくんとかそんな感じー。

 男同士と見せかけて、後から読み返すと怪しい言動がチラホラって仕込んであるのだ。


  聖女「……一部の女性読者から刺されても知らないわよ?」

    「BでLかともってたらノーマルとか興ざめもいいところだわっ!」


 ……おまい、もしかして腐ってたりする?


  聖女「腐っても聖女っ!」


 ……まあいいけどなー。で、話戻るけど。

 そんな感じで戦士にゃまだ役目があるからこの場面じゃころせねーんだわ。

 大体、ここで前衛欠けてたら火力たらんやろ。おまえ聖女とかゆっても回復魔法しかつかえねーし。


  聖女「アンデッド相手ならちょーつよいわよ?」


 不死魔将はもう倒したろが。この先お前が戦闘で役に立つ場面はねーんだよ。

 勇者が覚醒して全体完全回復魔法とか習得するしなー。

 だからもうおまいは不要ってわけだネ。安心して死ね♪


  聖女「いらなくなったから捨てるって、ゴミみたいにゆーな!」


 ばっかおめぇ、だから死ぬべき理由とふさわしい場面を用意してやったろうがよう。


  聖女「ぐぬぬ。あんた、キャラ殺すことしか考えてないわけ?」


 世の作者の実に80%以上は、いかにかっこよく効果的に登場人物を殺せるかということに心血を注いでいるといってもいいなっ! 第一、仲間の一人や二人しなねーと話がもりあがんねーじゃねーか。

 まったく苦労もなにもせずに、ぶっしゃー、魔王は死んだ!とかつまんねーだろーがよ。

 それにだな、仮にも勇者が真の覚醒をしようってんだぜ?

 最愛のヒロインの死。それくらいじゃなきゃーもりあがらんべ?

 通りすがりの村人とかが死んで覚醒とかしたら白けるやろ?

 だからここで死ぬのはお前なんだよっ!


  聖女「むう……一理あるわね」


 そろそろあきらめて死んでくれ。今日中に書き上げねーと更新予定日過ぎちまうんだよ。

 予定通りに書かないと、すぐエタったとか言われるし。


  聖女「……で、あたし、どんな風に死ぬの?」

    「いや、待って。こんな感じでどお?」

    「毒を飲まされて、瀕死のあたし」

    「一歩遅れてやってきた勇者に、”きっと助けに来てくれるって信じてた”」

    「そう言って口から血を吐いて、勇者の腕の中で崩れ落ちるあたし」

    「なぁ~んて感じなら……死に方としては悪くない、かも。ぐふ、ぐふふ」

    「勇者の心に、あたしの姿が、永遠に刻まれるわよね……あはっ!」


 あー。勇者が来たときにはとっくに死んでる予定だったけど、それでおまいが納得すんなら、そのくらいのプロット修正は問題ないわな。つかお前ちょと病んでね? 好きな人の腕の中で死にたいとかはともかく、死に様を心に刻みたいとかちょっと引くわー。

 あー。あと口から吐くのは血じゃなくて、オークの白濁液な?


  聖女「……は?」


 まあ、イケニエだしな。祭壇で、あんーな感じやこーんな感じでもにゃもにゃ。


  聖女「ちょ、ちょっと、どういうことよっ!?」


 んとなー、邪神復活のための儀式でなー、百匹のオーク神官どもに三日三晩体中の穴という穴を攻められてなー、白濁液できれいにデコレーションされるわけだ。

 うひひ、微に入り細を穿ちて描写してやんよ。


  聖女「……みぎゃー」


 ぷ。なにがみぎゃーなんだか。

 こうな、祭壇を四方から囲んで四匹づつ交代でな、ふんぬ!ふんぬ!って。


  聖女「ノクタ池っていわれるでしょーっ!?」


 ちなみにノクタってのは「Knock Tongue」という「narrow」の姉妹サイトの略で18禁なやつな。

 大丈夫、たぶん。問題ない。

 ランキングに乗ったこともねー様な小説をいちいち運営が確認なんかしてねーって。


  聖女「……ん? 四方って、上と下はわからないでもないけど横はナニよ?」

    「手に握らせるわけ?」


 んとなー、わき腹にナイフで穴開けてだなー。回復魔法をかけて傷を塞ぎつつ、そこに突っ込むわけだ。

 まあ、穴の数足りんから増やそうってわけだな。


  聖女「……は?」


 腸のにゅるにゅる具合がいいらしいで?

 あと回復魔法でだんだん傷がふさがってくるから、いつまでもきつきつ。


 聖女「……みぎゃー」


 あ、安心しる。前だけはかろうじて無事な?


  聖女「それでどこが安心できるのよっ!?」

    「いまさら膜だけ無事ですとか言われてもそれ以前の問題でしょうがっ!?」

    「……ってか前だけ無事とかナニソレ?」


 あん? 邪神は処女厨でな。ってか、邪神もそりゃ他人にコマされた女ささげられてもうれしくないべ?


  聖女「だったら、普通に毒飲ませるとか、心臓一突きとか、そうゆうのにしなさいよっ!?」


 まあ、そこは邪神だし? 散々男と交わっておきながらまだ処女とか、そういうのが好きなんでね?

 うへへ、処女ビッチサイコー!


  聖女「ヘンタイばっかりっ!?」


 つーか文句ばっかいってねーで、この俺様のステキなプロットを覆したければ代案だせよおらー。


  聖女「そ、そんな急に言われても……」


 じゃあ、3択だ。1つだけ選びなさい。

 答え1 とってもかわいくてかしこい聖女ちゃんは、突如反撃のアイディアがひらめく。

 答え2 仲間が来て助けてくれる。

 答え3 どうにもならない。現実は非常である。


  聖女「その3択なら、当然、答えは1に決まってるじゃないっ!?」

    「そうよ!」

    「とってもかわいくてかしこい聖女ちゃんは、突如起死回生の妙案を思いつくのだ!」


 ほー、具体的には?


  聖女「……じ、実はさらわれたのは聖女じゃなくて魔女だったのだー!」


 どこが起死回生の妙案やねん。

 ちなみに、おまいが魔将にさらわれたのはもう投稿済みだから確定してるで? 魔女もその場におったろーが。

 ついでにゆーと、邪神は処女厨っつったろ?

 魔女はもう膜ついてないから、邪神官は相手にしませーん。


  聖女「え? ……あら以外。あんな幼い顔して、魔女って経験ありだったの? へぇー」


 ちなみに初めては勇者が相手な?


  聖女「……は? え? 勇者は、あたしの告白に答えてくれたのに……!?」

    「もともと魔女と付き合ってたってこと!?」


 ちゅーか、「好き」「俺も」ってだけで、キスすらしてねーだろおまえは。

 それで恋人気取りなんだから、わらかしてくれる。

 男なんてなー、エロいことやらしてくれるなら誰だっていーんだよ。

 勇者はお前ともエロいこと出来るかもと思って、あわせただけやろ?

 まあ、そこでヤっときゃ邪神官にさらわれなくてすんだかもなー。


  聖女「うううー! だってあたし聖女だもん!」

    「キスは結婚式でするんだもん! 婚前交渉なんて、絶対だめなんだもん!」


 まあ、お前はそうゆうタイプだしなー。ずっこんばっこんやらかしてたら聖女ちがうよな。

 それやったら性女やし。

 でもまあ、魔女の方もな? ほらあいつ猫耳娘やろ。

 半年に1回発情期来るんで、半ばなし崩し的に魔女の方がホンノーで勇者を襲っちゃった感じだな。心はきっと、お前さんのほうにあるで?


  聖女「……慰めなんて要らない」


 まあ、身体の関係は今でも続いてるしなー。

 ぶっちゃけると、読者人気は魔女の方が高いんだよな!

 なんたって、魔女はネコミミだぜ? ろりねこが、発情期でにゃんにゃんだぜ?

 λ←こんなお口してさ、ざらざらした舌でご奉仕してくれるんだぜ?

 やっぱエロシーンあるキャラの方が強いよなっ! ひゃっはー!


  聖女「ちくしょう、だからあたしを殺すっていうのかーっ!?」


 まあ、それはそれ、これはこれ。

 何度もゆーたが、ちゃんと役割とか考えてお前が死ぬシーンになっとるんだ。

 それをくつがえそうってんなら、俺が納得する代案を、きちんと理由を筋道立てて説明したまい。

 で、もう一度聞くぞー?

 たった一人で、回復魔法以外にとりえのないお前が、百匹を超えるオーク神官と、邪神官を相手にどうやって逃げ出すと?


  聖女「……突然、真の聖女に目覚めたあたしがそのあふれる光のぱうわぁで聖女無双!」


 だめね、やりなおし!

 そんなご都合主義あるかっつーの。


  聖女「……突然、聖神さまが奇跡をおこしてあたしを助けてくれるっ!」


 それもねーな。そんな奇跡が起こせるなら、そもそもさらわれてねーだろお前。


  聖女「く、じゃ、じゃあ、答え2だわ。勇者が、仲間が助けに来てくれるんだもん!」


 間に合わんってゆーたろが。

 全力で昼夜を問わずに邪神の神殿めざして、ちょうど三日三晩やねん。儀式ちょうど終わる頃にしか着かんのや。ぎりぎりで、お前がまだ生きとる、くらいなら不可能じゃないけどなー。

 つまり。

 答え3 どうにもならない。現実は非常である。つーやっちゃな。


  聖女「……みぎゃー」


 いいかげん観念してくれや……もう。どんどん書く時間が減ってるんだが。


  聖女「……ぐすん。じゃあ、あたし、死んでも……いいよ」

    「でもさ、ほら、あたし聖神さまに使える聖女だしっ!」

    「身体はイケニエにされて死んじゃってもさ、魂は聖霊として勇者を導きたいかなって」


 あーそれ無理。


  聖女「なんでよっ!? 死後に聖霊になれるのは聖女の特権のはずよ!?」


 んとなー、邪神官が邪神ってよんどるやつ、実はお前が信仰しとる聖神と本質的には同じもんなんよ。

 裏面ってやつ? 神様になるときに分割した悪の心っちゅーか。

 だから邪神にささげられると邪霊になるんよ。

 よかったなー、魂までお前の信じる神様のモノになって。


  聖女「……みぎゃー」


 ところで、そのみぎゃーってなんなの?

 怪獣の鳴き声とかなんかね。


  聖女「……く、あは、あはは……?」


 おや、壊れた?


  聖女「……やっと反撃の糸口がつかめたわ」


 ほう?


  聖女「最初の話では、勇者たちは間に合わず」

    「到着したときに既にあたしは死んでいる予定だった、って言ったわよね?」

    「でも、ギリギリ死の寸前に間に合ったことにしてもいいって」

    「そのくらいの修正なら問題ないって言ったわよね?」


 ああ、言ったな。


  聖女「……そのどちらでも邪神が復活→勇者が覚醒するという流れが同じであるならば」

    「勇者の覚醒にあたしの死は必要であっても」

    「邪神の復活には必ずしもあたしの魂は必要とされない」


 え? いや、イケニエとしてささげられとるわけやし。

 さっき言ったように邪霊になるんだって。


  聖女「はんッ! 勇者が間に合わなくって、既に魂まで邪神に囚われたあとならともかくっ!」

    「目の前で、あたしの死によって覚醒した勇者がっ!」

    「あたしの魂をみすみす邪神に奪われるわけがないでしょーっ!?」


 お。おお? ああ、うん。言われてみると確かにそっちの方がいい気もしてきたな。

 聖女をさらわれた上に、命を助けることも出来ず、さらには魂まで奪われるっちゅーのは流石に勇者がヨワヨワすぎだよな。せめて魂だけは、ってゆーのは落とし所としては悪くない。

 ふむー。邪霊になって悪落ちした元聖女が、勇者たちの前に立ちふさがる展開とかも考えてたんだがなー。


  聖女「……あんたどこまであたしのことキライなの?」

    「まあ、ほら、これであたしは聖霊として今後行動する道ができたわ!」

    「あと……そうね、白濁液はほら、やっぱりだめでしょう?」


 かーっ! これまでほとんど無かった聖女の最初にして最後のサービスシーンやで?

 そこは簡単に覆すわけにゃいかねーなっ!


  聖女「ってか、普通にアカウント削除されてもしらないからね?」

    「ナニを根拠に大丈夫だと思ってるのかしらないけど」


 む。むう。


  聖女「……だから、ええ、あたしが思うに邪神って実はとんでもなく甘党なのよ!」

    「白濁液、じゃなくて、つまり、練乳であたしをデコレーションするわけね!」

    「もちろん見えちゃいけないところは生クリームで隠して」

    「そうよ、練乳で邪神召喚の魔方陣を描くのに三日三晩かかるとかでいいじゃない」

    「ええ、サービスシーンだものね。さすがにこの期に及んで肌を見せるのを厭いはしないわ」


 あ、甘党……だとっ?


  聖女「百人のオークパティシエが三日三晩かかって」

    「練乳と生クリームで仕上げる精緻な魔方陣よ! うん、悪くないじゃない」

    「そして勇者に看取られるあたし。甘い、あまーいキスを最後にするの!」


 そりゃ練乳だし甘かろうよっ!?

 ってか、いきなりコメディに走りすぎだろそれは。いやメルヘンか?

 なんで邪神召喚するのに練乳やねん。


  聖女「深読みする読者は、オークの練乳ってこれもしかしてぐふふ、って」

    「勝手にエロ方面に脳内置換しちゃうわよきっと!」


 むー。それ系の勘違いは結構好きだが。むむむ。しかし。


  聖女「アカ削除されてもしらないわよーぅ?」


 うむう。一見エロくない言葉で構成しつつ、深読みするとエロエロ系ってことか。

 俺の腕の見せ所だな。


  聖女「……じゃあ、方針としてはそんな感じでいいわね?」

    「はあ、けど、聖霊じゃ、結局、勇者と魔女がイチャイチャするのを」

    「影から黙って見守ることしかできないってことよね」

    「勇者の子々孫々にずっと代々の守り神みたいになるのも悪くないかな」

    「くふふ、くふぅ」


 あー。気持ち悪いストーカーじみた妄想してるとこ悪いんだが。

 見守るも何も勇者もこの後、魔王と相打ちで死ぬからな?


  聖女「……は? え? 勇者って主人公でしょ? 死んじゃうってどういうことよっ!?」


 んとなー。覚醒した勇者は邪神を再封印するが、完全じゃなかったわけだ。

 一度復活した邪神は、魔王にも力を与えててな、魔王もパワーアップしとるわけやね。

 でもって、激闘の末、辛くも魔王を撃破するが、勇者も満身創痍。

 聖女も既に無く、自身での回復も望めない勇者は、帰路でひっそりと命尽きるわけや。

 ただ一人、国に帰りついた魔女は、魔王撃破の報告だけを行い姿を消す。

 しかし十数年後……勇者の死により緩んでいた封印がついに破れ、再び邪神が復活を遂げようとする。


 ――そこに現れたのは、ねこみみの生えたちいさな勇者だった。


 ……って感じで真なる続編がはじまるんや。

 魔女とエロいことしとったのはこの伏線な! 魔女が転生魔法リーンカーネーションで自分の子供に勇者の魂を転生させてーとかな。普通に息子とかでもええけど。

 ねこみみだからついでに性別かえちゃってTS展開とかもムハムハ。

 いや男の娘も捨てがたいにゃー。

 かつてのヒロインが主人公の母親になっちゃってーってのもなんかええよね?

 あ、聖女、お前もついでに魔女の子供になって転生するとかどや? ん?

 続編はまだ構想固まってないから、今ならいろいろ融通きくで?


  聖女「……みぎゃー」

    「ってゆーか、魔女が既にヒロイン扱いになってるしっ!?」


 そりゃ、お前が降板したら魔女がヒロインだべ?


  聖女「あと転生したって、姉弟じゃ結婚できないでしょーっ!?」


 ああ。おまいが姉なんや?


  聖女「……こうなったら、もう、これだけはやりたくなかったけど」

    「ここでチェス盤をひっくり返すわよ?」


 は? お前さんの意見取り入れて方針まとまったとこやないか。


  聖女「答えの1よ」

    「とってもかわいくてかしこい聖女ちゃんは、突如反撃のアイディアがひらめくの」


 あん? それ蒸し返すん? ってかそこまで戻るんだ。


  聖女「状況を教えて。あたしはさらわれて、囚われているのよね?」


 えとなー。祭壇の間に直径3メートルほどの魔法円があって、その中に聖女は立っている。

特に拘束はされていないが、聖女はその円から出ることは出来ない。出ようとすると黒い光の壁にさえぎられる感じな。

 でもって百匹を越すオークの神官は邪神を称える祈りの最中で、まだ儀式は前準備段階ってとこだな。


  聖女「……魔法円って?」


 結界みたいなもんかな、円周上には燭台が六芒星を描くように置かれててな、その中央に50センチ四方のキューブ状の小さな台がある感じ。

 って、なんかテーブルトークRPGのセッションじみてきたな。


  聖女「なにその小さな台。お立ち台? あたしにその上で踊れとかいうわけ?」


 んとなー、聖女の右手と右足、左手と左足をブリッジするみたいにして背中側で縛るやろ?

 でもってその状態で台の上で仰向けになると、お口とかお股がちょうどいい位置になるんよ。


  聖女「どうでもいいことばっかり設定がこまかすぎるわねっ!」

    「で、……燭台があるのね? そしてまだ今あたしは拘束されてない、と」


 あー、ちなみに燭台で自分の喉突いて死のうとかしても無駄だからな?

 粛々と死体を犯されて儀式続行されるだけだから。


  聖女「そんなこと、しないわよ。聖神さまは自殺を禁じているから」

    「自殺なんかしたら、聖霊になれないじゃない」

    「で、燭台があるってことは、当然ロウソクもあるのよね?」


 そりゃな。ひとつの燭台につき、三本の黒いロウソクがゆらゆらと紅い炎を揺らしているな。

 でもって何か特殊なハーブを練りこんであって、不思議な香のような匂いが漂っている。

 ほいここで精神チェックな。


  聖女「はんッ! 聖女のあたしに精神チェックとか、当然6ゾロにきまってんでしょ」


 ふむ、判定成功と。ちなみに3回失敗するとラリラリパッパな?


  聖女「イケナイお薬っ!?」


 邪教の儀式にゃつきものやろ。

 今回成功はしたが、時間経過で判定値ぐんぐん増えてくからな。


  聖女「で、ロウソクの大きさは、とくに太さはどのくらい?」


 あん? 武器にでもしようって魂胆かいな?

 ひとつの燭台で3本ささっとるから、そこまで太くも大きくもないな。直系は親指と人差し指で輪っか作ったくらいで、長さは肘から手首までくらいかな?


  聖女「ん、想定の範囲内だった。なら、いけるわね」

    「……あは、あはは。オークの目の前でこんなことするのもあれだけどさ」

    「まぁ……しょうがないよね」


 あん? おまえ何する気?


  聖女「……ん、んはぁ。……ぁん、んん。痛っ」


 ちょ、お前なにやってるわけ? こっち文字だけじゃ解らんのやけど。


  聖女「あ、あは。ねえ、邪神って、処女厨だって言ったわよね?」


 ……は? オイ、まさかお前。


  聖女「オークどもにデコレーションさせようってくらいだから」

    「……ん、あ」

    「それってさ、単に男を知らないとかいう潔癖症じみた性癖じゃなくて」

    「物理的に、膜があるかないか、だけが問題なんじゃないのかな?」

    「自分のもので貫く感触が好き、だとかさ」

    「……ん、一気にやれば」

    「はあ……純潔を散らすのは、勇者にしてもらいたかったんだけどな……」


 おい、おま。ちょ、マジでナニしてるわけ?


  聖女「単純な話よ」

    「この黒くていい感じの太さのロウソクを、あたしの中にいれるってだけ」

    「つまり、あたしの膜が無くなったら、それでも邪神のイケニエとして使えるのかって話」

    「単に生娘でいいならばそこらの村人をさらってくれば済む話」

    「それなのに、あたしがイケニエにされる理由」

    「それを考えたら、たぶん、条件はかなり厳しいもののはず」

    「例えば聖神に仕える高位の神官、つまりあたしのような聖女じゃなきゃだめ、とかね」

    「……なら、あたしがそうするだけで。邪神復活の儀式は失敗する」


 え、ちょっと。いや確かに聖女じゃなきゃ邪神納得しそうに無いけど。

 ……マジで? ちょ、邪神が復活しないと困るんだけど。プロットぶち壊しじゃん。

 魔女はもうだめだし、戦士には戦場に出かけた恋人が魔王軍にやられて勇者の旅に同行することになったって裏設定あるし。


  聖女「……あたしは、自らの犠牲を省みず、自分に出来ることをする」

    「その結果、命を落とすことになっても、それは自殺ではないよね?」

    「あはは、ほら儀式を台無しにされた邪神官が……」


  聖女「……じゃあね、バイバイ」


 ――その言葉は、まるで、耳元で囁かれたように感じられた。


 え? ちょ、おい。確かに邪神官ならそうなると思うけど。ってマジ聖女死んだの?

 え? この後どうなるんだ? 邪神は復活していないし、自殺じゃないから聖女は聖霊として勇者のそばに。聖女の死は発生してるから勇者の覚醒条件は満たされて。

 え、でも邪神は復活してないから魔王はパワーアップしないだろ。

 そうすっと、勇者があっさり魔王を倒して……終わり?

 ちょ、ねこみみ勇者の続編どーすんだよ! プロット台無しじゃん。

 おい、聖女、返事しろこら。


 ――しかし。


 それ以降、聖女のセリフがエディタに表示されることはなく。

 予定時間も大分過ぎており、明日も仕事があるため書く暇の無くなった俺は。

 そっとノートパソコンの電源を落とし、眠りに着いた。


 翌日、再び続きを書こうとしたのだが、どうしても聖女の最後の言葉が頭の中でリフレインする。そこまでして、と思う。そんなにも、俺のプロットが気に食わなかったのかと思う。

 ため息を吐いて、結局何も書けずにノートパソコンを閉じる。

 そんな日々を繰り返すうちに、どんどん筆は進まなくなってゆき。

 ついに、俺は書くことをやめた。


 こうして、またひとつのweb小説がエタってしまったのだった。

 ああ、あるある~……ってねーよ。


 ってゆーかさ、俺が、ほんとうに書きたかったのはねこみみ勇者の方なんだよね。

 続編とかってこだわらなくって、新作にすりゃえーよな?


 まあそんな。

 世の中のエタってるお話の裏で、もしかしたらあったかも知れないちょっと不思議な話。


聖女「……あたし、女優になれるかもー?」

  「うん、ちなみにえっちな勘違いした人いるかもしれないけど」

  「あたし、ロウソクをお口に頬張っただけですからーっ! ウソはいっこも言ってないしー」

  「え? それはそれでエロイって?」

  「ヘンタイばっかねっ! ……ってあたし誰としゃべってるのかしら」

  「でもって、おバカな作者は気がついてなかったみたいだけど」

  「作者が書いてないってことはつまり、まだ起こってないってことなのよね」

  「だから、逆上した邪神官があたしをやつざきにーなんてのも起こってまっせーん」

  「あっははは! 完・全・勝・利っ! ってやつね!」

  「えろいこともされてないし、あたし死んでないしっ!」

  「でもって、作者が放棄した以上、この後は好き勝手やらせてもらいますから!」

  「乞うご期待っ!」


 ……なんてね。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです♪ 聖女のピンチにハラハラしましたー グロかったですね♪ 聖女の作者のやり取りだけでゲッてなったので 自分はあまりグロは好きじゃないってわかりました ( ̄ー ̄)
[良い点] どこかで読んだようなお話、いつの間にか投稿されてたのですね。ヒロインだと思っていたら脇役だった的なかわいそうな子ですが、最後に追加されてる文で少し救われましたね。エタった世界で幸せになれる…
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