あの日見た夜明けを、もう一度。
こんにちは♪Chocoです(* >ω<)
今回は、幼なじみ2人の爽やかな絆の物語です。
読んでくださった方が、少しでも希望を持てたりしたら幸いです♪( ´▽`)
「うーわ、寒ぅ!風が突き刺さるー!」
コートを着てマフラーをぐるぐるに巻いて手袋をつけて、挙句の果てホッカイロまで所持していても寒い寒いと言う僕の幼なじみ。コートだけという、防寒対策とも言えないような軽装備の僕を見てはまた、寒いー!と言って両腕をさすっている。
「でー?こーんな極寒の河原に、こーんな可愛い幼なじみを呼び出すなんて、よほどの事なんでしょうねー?」
確かに夜明け前の河原は極寒で、凜が可愛いかどうかは別として...。そうだ。彼女の言う通り、よほどの事なのだ。
...僕は今日、彼女に重大な事実を伝えねばならない。
そう。僕の身体に脳腫瘍グレード4が住み着いて、僕はもう長くはないという事を。
「はーるか?ねえ、そろそろほんとに寒いんだけど」
両手をこすり合わせる凜。だんだんと空が明るくなってきた。
「はるかー!もう私帰るよ?」
踵を返した彼女の腕を僕が掴む。僕自身、驚いていた。彼女もきっと驚いていた事だろう。
「な、はるか?びっくりしたよ」
「あ...ごめん」
そう言って凜の腕を放す。
「凜...僕、実は...」
もうすぐ死ぬんだ。そう言おうとした時。凜が深い深いため息をついた。
「...病気でしょ?はるかママから聞いてるよ。って言うか、知らないと思ってたの?」
凜から発せられた、驚きの言葉に頭が真っ白になる。え?母さんが凜に言った?え、病気のこと、知ってた...?
「あ、もしかして、はるかが死んじゃうなんてやだ!お願いそばにいて!とかでも言いながら泣きじゃくって欲しかった?てか、まだ混乱してる?」
「いや、混乱どころか、機能してないんだけど...」
「あははっ!あのねー、私はるかママに言われたんだよ。はるかが病気だってことを知っても、いつも通りに接して欲しいって。そりゃさ、私も病気の事知った時は泣いたよ?それも一晩中。何気に産まれたときから一緒にいたからさー。なんでかわかんないけどはるかとはずっと一緒にいるような気がしてた。はるかだけは私の味方で。なんかねー、はるかは、不老不死!って感じがしてたの」
話しながら、凜は川沿いを歩き始めた。僕も少し離れて付いていく。
「でもさ、病気の事聞いてから、あ、はるかも死んじゃうんだ。って思ってさ。はるかの気持ちとか、そーゆーのいろいろ考えてたらやっぱり、知らないふりしてた方が良いのかなーって思ったんだけど」
凜が振り向く。
「だめだったね。まさかはるかからカミングアウトしてくれるとは思わなかったよ」
僕はなぜか赤くなる。
「...脳腫瘍グレード4だよね?私もいろいろ調べたんだ。治らないわけじゃ...ないよね?」
「医者は、治療による治癒は難しいって...」
「難しい、でしょ?絶対無理じゃないんだよね?だったらがんばろうよ!ほら、病は気からって言うじゃん?私、はるかのためだったらわりと何でもするしさー!」
わりと、と言い切らないところが凜らしい。
「まずはさー、目標持とう!そうだなー、じゃあまずは、一年後の今日、この時間にこうやって2人で夜明けの空を見ようよ!はるかは、それまで絶対に私から離れちゃダメ。はるかは絶対に病気になんか負けません!オーケイ?」
なんと無茶苦茶な、と思ったが凜に従うことにした。時には凜が言ったようななんの根拠もない「絶対」を信じてみるのもいいと思った。
「オーケー」
僕は思わず笑った。凜も笑っていた。
僕に明日が来る保証はない。でもそれは、凜だって同じだ。この世界に生きる全ての人に約束された明日なんてないんだ。今日を懸命に生きるからこそ、明日は来る。今日を生きなければ明日なんて来るはずがない。
365日後。凜と、この場所で、この時間に、2人で夜明けを見れることを楽しみに僕は今日も生きていく。