暗闇4
トニー side
リオンが分娩室に入って、丸一日が経ち、もう少しで二日目の朝になりそうだ。
分娩室からは継続的にリオンの苦しむ声が聞こえてくる。
しかし妻が出産中は、その部屋に入ってはいけない。
何故なら出産中の姿が、女性にとって、人生の中で最も恥ずかしい姿とされているからだ。
その為入りたくてもいれてもらえない。
出来ることなら今直ぐにでも部屋に入って、リオンの手を握りたいくらいだ。
ふと窓の外を見てみると、
外では相変わらず雪が降り注ぎ、勢いを増していっている。
ガチャ
産婆のアムさんが出てきた。
俺は直ぐに立ち上がり、産婆に近ずいた。
「 アムさんリオンは、妻はどうなんですか」
「…………かなり難産だわ、ここに来た時点で診察した時、お腹の中の赤ん坊を守る羊水が、殆どお腹に無かったの。
その羊水は、赤ん坊を守るだけじゃなくて、出産の時に赤ん坊が出てきやすいように、
滑りやすくしてくれたり、陣痛を起こしやすくしてくれたりするんだけど……。
でもその羊水が無くなったせいで、お腹もカチカチになって、弱い陣痛しか来ないのよ。
…………このままだと赤ん坊はもちろん、母体の体力も限界で最悪どちらも助からないわ。
それで、あなたに少し頼みたいの」
「何ですか、何をすればいいんですか?!何でもするから、どっちも助けてくれよ!!」
やっと言った俺の言葉に産婆は、ニヤリと笑った。
「…………その言葉欲しかったのよ」
「え?」
「入りなさい。」
「でも出産中は中に入っては、ならないのでは?」
「今はそんな事を言っていられる場合じゃ無いの。さっさと入んなさい。」
その言葉に後押しされ俺は分娩室入ることができた。
「トニー?」リオンがこっちを見て一瞬驚いたようだが、一拍おいて、俺に手を伸ばしてきた。
その手を握り、
「リオン大丈夫か?何か飲み物でものむか?」
リオンが頷いたので、近くに置かれたアファリの果実水を飲ませた。
「先生、アダブを飲んでもらいましたが、効果が見られません」
「やっぱりね、あなたちょっとこっちに来て」
「何ですか?」
「いい?次の陣痛が来た時、このお腹の……そうそこを真っ直ぐ下に向かって力一杯押して。」
「わかりました。」
アムさんは頷くと今度はリオンの方に向いて、
「いい?お母さん聞こえる?これから、赤ちゃんを出す為に次の陣痛が来たら、
それに合わせて、ここを押すからね。分かった?」
リオンは頷いたのを見てアムさんは、
「いい?皆んなで一気に出すよ」