5.言語の壁
序章のうちはしばらく説明臭くなってしまいます。
ファンタジーを書くに当たって世界観を固めるのは必要と考えますので退屈かもしれませんがお付き合い下さい
やっと着いた……
村だと認識できる程度まで近づいてからもうさほど距離もないだろうと思っていたがそんなことは無かった
夜の草原マジあぶねえ……
距離感が狂うなんてもんじゃねえ……
手をつないで歩くこと30分二人はようやく村の入り口までたどり着いた
村の規模はあまり大きくはないようで、
はっきりしたことはわからないが家の数からみて村民は100人前後といった所だろうか
半数以上の家の灯が消えているところから今は夜中なのだろう
村はしーんと静まっている
明かりの灯った家がなければ廃村と勘違いしそうだ
ええと、まずは村の代表………村長みたいな人に会って今晩の寝床を確保しないとな……
リゼリアも疲れて眠いだろうし
他の家に比べて一回り大きい家を見つけると辞書を開き宿を貸してもらえるように頼む文を予習する
気合を入れてインターホンを探すが、そんなものは無く
リゼリアに不思議な顔をされて恥ずかしく思いながらドアを叩いてみる
「すみません」
最初のうちは反応が無く、寝ているのかと不安に思ったが
少しするとドタドタと家の中から音がして扉が開いた
「はいはい、おや?旅の方かね?」
出てきたのは初老の男性
髪は真っ白に染まっているが、背中が曲がったりはしておらず健康的な印象だ
「申し訳ありませんが、宿を貸してはいただけないでしょうか?」
恭弥は予習していた文を口にする
「そうですねぇ、空き家が在りますのでそちらでよろしければお使いください」
だが、予習していたのはその言葉のみ
相手のしゃべっていることを翻訳するために必死に辞書を引く
少し慣れてきたため最初の頃よりはだいぶ早くはなってきたがそれでも一々調べているのだからスムーズな会話とはいかない
「ありがとうございます」
「いえいえ、どうぞこちらです」
しかも簡単で堅い文しか話せない
初老の男性に不思議な目で見られながら恭弥とリゼリアは男性の案内に従う
「この家になります、持ち主がいなくなってから一か月ほど経っておりますので少しほこりが積もっているかもしれませんが勘弁くだされ」
「いえ、ありがとうございます」
やはり簡単な文しか言えない恭弥はひたすら感謝の言葉を繰り返す
ううむ、思ったより言語の壁は大きいぞ
元の世界に戻れるのかも不明な今、こちらの言語は覚えなきゃまずいな……
「お疲れのご様子ですので詳しい話はまた明日に致しましょう、家の中にあるものはご自由に使っていただいて構いませんのでゆっくりお休みくだされ」
長文だったので恭弥が辞書を引いて訳すのに時間がかかり返事を返すのが間に合わず、男性は戻っていってしまった
恭弥は家の中を探索して掛け布団のようなものを二つ見つけるとバサバサとほこりを掃って一つをリゼリアに渡して自分ももう一つに包まって目を閉じた
心身ともに疲れ果てていた恭弥が眠りにつくのにそう時間はかからなかった
目を覚ました時には太陽は高く上っていた
身を起こすとすぐ隣にリゼリアが寝ていることに気が付く
手を取ってくれたことと言いこうして広い部屋の中であえて近くで寝ていることにと言い結構信頼してもらえてるのかな?
子供の寝ている姿は可愛いといわれるのがよくわかる
この子の場合、素で整った顔立ちをしてることも大きいとは思うけど……
家族とも引き離されて捕まってたんだからさぞ怖かったんだろうな……
……絶対に家に返してあげよう
リゼリアの寝顔を見ながら決意を新たにしているとリゼリアも目を覚ます
するともちろん目が合うわけで……
恭弥は気まずさを誤魔化すために微笑みかける
しかし、リゼリアは起き上がると顔を赤くして俯いてしまった
あ、あれ?
やっぱり子供とはいえ寝顔をじろじろと見るのは不味かったかな……
ええと、今日は村長に色々説明して、この世界の情報もできる限り探らなきゃな……
と言っても言語の壁が大きいな
どうしたものかな……
前もって予習……と言っても会話は流動的なものだから予想するにも限界があるし……
恭弥が頭を悩ませているとコンコンとドアがノックされる
「旅の方、起きましたかな?入ってもよろしいですか?」
どうやら村長が来てしまったようだ
やべえ、悩む時間すら無かった
ええい、ままよ!
「はい、どうぞ」
了解を示す単語くらいは流石に覚えていたのですぐに言葉を返すとドアを開けて村長を迎え入れた