4.リゼリア
相変わらず更新遅くてすみません
誤字脱字の指摘、アドバイス、評価いただけるとありがたいです
序章のうちはしばらく説明臭くなってしまいます。
ファンタジーを書くに当たって世界観を固めるのは必要と考えますので退屈かもしれませんがお付き合い下さい
「こんにちは」
「¶§ΘΦζЖ??」
辞書は丁寧なことに音を頼りに引けるようになっているので恭弥は発音を頼りに必死にページを繰る
どうやら、話せるのか?と問われたようだ
また簡単な会話例文も載っているので単語を入れ替えることでどうにか会話もできそうだ
恭弥はこの後も必死に辞書を引きながら会話を続ける
「この本を見ながら話しています」
少女は恭弥の隣まで来ると興味深そうに辞書を覗き込む
「あなたはこの辺りの道がわかりますか?」
「……わかんない」
ううむ、やっぱり道はわからないのか……
困ったな……この世界に何がいるのかわからない中で野宿なんて御免だ
そしてもう一つすごく気になる疑問が……
「その角は何ですか?」
「??…………………っ!!」
少女は自分の頭を触ってフードが無いことを確かめると慌ててフードを被り直す。
どうやら本人はフードがとれていることに気が付いていなかったらしい
あー、聞いちゃいけないやつだったか
でも普通、気になるだろ角なんて生えてたら……
いや今さら角が生えてることに恐怖も驚きも感じないけども……
慣れって怖いな、
俺はもうこのわけわからない世界に順応し始めてるのか……
そういえば一体どれだけ走ったのだろう
まずいことを聞いてしまい、微妙な空気から逃げるようにしてもう一度
辺りをよく見渡すと遠くのほうに仄かな明りが見える
村……かな?
まだ上手く会話は出来そうにないけど、今晩の宿を見つけないといけないし行ってみるか……
恭弥は明りのある方を指をさして、向かうことを少女に伝える
そして二人は月明かりの下を明かりを目指して歩き始めた
そういえば、この子の名前はなんて言うのかな……?
さっき角のことを言ってからまた少し警戒されているからなぁ……
今、聞いて答えてくれるかな??
うーん、明かりまでだいぶ距離もあるし、
ずっと無言で歩き続けるのも気まずいから思い切って聞いてみようかな
「俺は東恭弥といいます、あなたの名前はなんですか?」
「………………」
あー……やっぱりタイミング悪かったかな……
気まずい………
「……リゼリア」
少女は突然ぼそりと呟く
「えっ?」
「……リゼリア・アムネシア…………私の名前………」
あ、やべえ……
なんとなくお互いの名前を知っとかないと今後困るかなと思って聞いたけど、
ここからどうやって繋ぐか何も考えてなかったし、
そもそも考えてあっても辞書で引きながらだから沈黙とあんまり変わんねぇ……
「良い名前ですね」
「………………………」
うおおおおおおお、とりあえずそれっぽい会話例文そのまま使ったけど、
何も返してこねぇ……
この辞書間違ってないよね?大丈夫だよね、神様?
一時間くらい歩いただろうか
仄かに明かりしか見えなかったのが村であると認識できる程度には近づいてきた
うーん、何もない草原っていうのは距離感が全くつかめないな………
まさかこんなに遠かったとは思わなかった
こんなに歩いたのは久しぶりだ、足が痛い……
村まであと少しというところまで来ると突然リゼリアが恭弥の服の裾をつかみ立ち止まる
恭弥が今度は何事かと首をひねっていると
「あの…………」
おお、向こうから話しかけてくれるの初めてじゃないか
ようやく少しは警戒が解けてきたのかな??
今のところまともに会話できた相手がリゼリアだけだからな
ここは今度こそ上手くやって信頼を勝ち取らないと!
恭弥は張り切って辞書を開いてリゼリアの次の言葉を待つ
「………これからあの村に行くんだよね?」
「はい、その予定です」
「……………角のこと……内緒にしておいてほしいの………お願い……」
リゼリアはそう言うと下を向いてしまう
やっぱり人間じゃないってことはあまり公にできないことなんだな
こりゃあさっき軽々しく聞いたのは随分とまずかったんだろうな………
ん?待てよ……
こればれたら匿ってたってことで俺もただで済まないんじゃないか?
恭弥の服を掴むリゼリアの手から震えが伝わってくる
よく見るとリゼリアの体は緊張で固まっていることがわかる
ああ、やっぱりそれだけ重大なことだったのか
それをこうして勇気を出して、俺を信じて話してくれたのに無下になんて出来るわけがない
空気的にもここで『約束できません』なんて言えないし………
「わかりました」
恭弥が辞書を引いて肯定の言葉を発音するとリゼリアは目に見えて安堵する
そして一瞬だが初めて恭弥と目を合わせた
恭弥は努めてやさしく微笑んだ
そうだった
俺がこの世界に来たのは人の役に立つためだった
今のところリゼリア以外にまともな人に会ってないけど……
とりあえず、まずはこの子を、リゼリアを家に帰してあげよう
迷子の女の子を家に帰す
小さいことかもしれないけど、この世界の常識も、それどころか言語さえも分からない俺にはちょうどいい
小さいことからコツコツとやっていこう
お礼を言われたわけでもない、まだ何かを達成したわけでもない
でもリゼリアが初めて警戒を解いて目を合わせてくれた
その小さな達成感は恭弥に本来の目的を思い出させるのに十分なものだった
恭弥は少し悩んでリゼリアに手を出す
リゼリアは恐る恐るだがその手を取った
二人は手をつないで再び村に向かって歩き始めた