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seek right  作者: ノラネコ
1章
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29.強敵?

寝不足で死ぬ


近いうちに割とまともな文学短編を投げたい(投げるとは言ってない)

南下すること三日が経った頃、小さな町が遠くに見えてきた。

規模は小さく、村に毛が生えた程度のものだが周りを堀と柵で囲み、魔物の侵入を防いでいるようだ。


近くまでくると人の往来も徐々に増えてきて魔物に襲われることも減り、人とすれ違うことも珍しくなくなってくる。

やっと野宿生活から解放されることに安堵するのと同時に再びリゼリアの正体がバレないように警戒する。


そんな警戒を新たにしてすぐに妙に歩くペースを合わせてくる探索者風の男がいることに気がつく。

すると突然その男は肩がぶつかるほどに寄ってきて耳打ちする。


「つけられてますよ」


「えっ?」


聞き返す間もなく男は駆け出し、道沿いの草むらに剣を抜きざまに切りつける。

するとそこからスロフリバさんが飛び出す。


「うおっ! とんだ挨拶だな、なんだてめえ」


「おや? 旅人を狙う人拐いかと思っていましたが、狂勇者さんじゃないですか、高額賞金首なんて……これは大当たりだ」


「なるほど、ヤル気なのはよくわかった、わかるぜ、お前は随分と……楽しめそうだ」


そう言ってニヤリとスロフリバは口の端をつり上げると双剣を抜く。


「楽しむ……ね、流石に殺人狂は言うことが違いますね」


男も改めて剣を正眼に構える。


二人はジッと対峙したまま膠着する。

スロフリバさんは自分を守ってくれていただけで悪意をもってつけていた訳ではないと伝えなくてはと思い口を開く。


「あの……その人は」


しかし、恭弥が声を出すと同時に二人が弾けるように肉薄して剣を交える。

キンッという甲高い音を響かせて互いの剣は重なる。

時間差でスロフリバのもう片方の剣が振るわれるが、男は慌てる様子もなく重なっている剣を弾くとその反動を利用して迫るもう片方の剣も弾く、そしてそのまま剣を前に付き出す。

スロフリバはそれを体を捻るようにして避けると体を捻る勢いで右手の剣で袈裟斬りに斬りつける。

男はぐいと前に大きく一歩踏み出してスロフリバに体当たりして体幹を崩すことでそれを回避する。


再び二人の間には少しの距離ができる。

男の剣技はアスカのように単純に速いわけではないのに二刀であるスロフリバの剣を見事に捌ききっていた。

鋭いと言うにも些か語弊がある。

彼の剣は常に的確でその軌跡は最短距離に近い、つまり一切の無駄を省くことでスロフリバと互角に渡り合っていた。


「へぇ、思っていたよりずっと強いな。お前だけが俺の名前を知ってるってのはズルいだろ名乗れよ」


「レイスラック、こんなに強い相手は俺も初めてですよ」


「レイスラック……? そんな名前聞いたこともないな、世間の目は随分と節穴だなお前みたいなやつが無名だなんてよ」


「天下の狂勇者様に褒めて頂けるなんてまったく光栄ですよ」


「おう、あの世でせいぜい誇れ」


あ、ダメだこれもう口を挟める状況じゃない……


卓越した二人の打ち合いはもはや芸術の域だった、剣と剣の触れ合う度に鳴る気味の良い金属音を相まってそれは剣舞のようである。


レイスラックが横薙ぎに切りつける。スロフリバはそれを両手の剣で受け止めて左手の剣でそのまま止めつつ右手の剣で剣の上を滑らせるようにしてレイスラックに切りつける。

レイスラックは体を自分の剣の方へ移動させることでそれを避けると同時に剣に力を込める。

スロフリバは片手ではそれを抑え切れずにレイスラックを蹴りつけることで一時的に距離を取る。

しかし、それを追うようにして一切の予備動作もなくレイスラックから火球が放たれる。スロフリバにそれを避ける時間は無い、恐らく地面に足が着くのとその火球がスロフリバの身を焼くのはほぼ同時であることが予想できた。


そしてスロフリバは着地と同時に……両手の剣を大きく縦に振るった。

すると火球は真っ二つに割れてスロフリバの左右両側の地面の芝を焼いただけだった。


「無詠唱か、便利なスキル持ってんなぁ」


「そう言うあなたこそ魔法が斬れるなんて聞いてないですよ」


「使うまでもないような相手しか今までいなかったからな」


「じゃあ俺が初めての相手ということですね?」


「誤解の生じるような言い方をするな、まぁお前が強いことは認める」


「それはありがとうごさいます。ですがまだ俺は本気を出していませんよ?」


「ほう、奇遇だな俺もだよ」


「では、ここからはお互いに本気と言うことで」


「あぁ、後になって泣くなよ?」


そう言って二人は構える。

辺りの酸素濃度が急に下がったような息苦しさを覚える。

それが自分に向けられたものでもないのに関わらず、冷たい汗が背中を伝い、恭弥は一歩も動けないどころか、身動ぎすら出来ない。


しかし、どちらが動く事もなく町の方からけたたましく鳴る鐘の音に勝負は中断させられることになった。

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