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seek right  作者: ノラネコ
1章
29/31

28.南へ

すみません、短編の締め切りに終われていて遅くなりました。

また頑張っていきます

リゼリアに狼モドキが二匹襲いかかる。

このままでは連続で魔法が打てないリゼリアはなす術がない。

二匹のモンスターは、跳躍し牙と爪を立て迫り来る。


だが、恭弥とリゼリアが休んでいた木の上から人影が現れ、その二刀の剣を持って迫り来る二頭を両断した。


「スロフリバさん!」


「キョウヤ、今は敵に集中しろ!!」


スロフリバさんがどうしてここに?という疑問は残るが彼からの叱咤を受けて安堵感と冷静さを取り戻す。


落ち着いて残り二匹を見つめる。

これ以上後手に回るのはまずい。

一匹を警戒しつつ、二匹目に恭弥は攻撃を仕掛けた。


剣を横薙ぎに振る。狼モドキは跳躍しつつ恭弥に襲いかかる。


恭弥は剣から左手を離し狼モドキヘ向けた。


バン!!


何が破裂したような爆音を立てて狼モドキに触れた手に衝撃が伝わって来た。

そのまま狼モドキは糸が切れたように力をなくしその場へ落ちていく。


それを見て不利を悟ったのか残った一匹の狼モドキは逃げ出した。


「大丈夫だった?」


すぐにリゼリアが駆け寄ってくる。


「大丈夫だよ」


安心させるようにリゼリアの頭を撫でる。

するとスロフリバさんがこちらへ来た。


リゼリアはすっと恭弥の背後に隠れるように移動する。


「大丈夫そうだな

それにしても驚いたぞ、その手袋あんな火力があるとは……」


「驚いたのはこっちの方ですよ

なんで木の上にいるんですか、その下で食事をしてたのにまったく気づきませんでしたよ」


「ははは、職業柄逃げ隠れは得意だからな」


スロフリバさんは笑いながら言っているが、それは笑えない……


「それでなんで此処にいるんですか?」


「ああ、それがなケイの奴が急に王都外の仕事を持ってきてさ、すぐに行けって言うんだよ

まぁ心配だったんだろうな」


スロフリバさんは肩を竦めて言った。

すると後ろに隠れてたリゼリアが服の裾を強く握り締めていることに気づく。


「大丈夫だよ、スロフリバさんは信用できる人だから」


「こうやって話すのは初めてだな

俺はスロフリバという

そうだな……恭弥の友人ってところだ」


「リゼリア……です」


リゼリアは恭弥の背後から出てくるとスロフリバに目を向けたまま軽く頭を下げる。


「俺と一緒にいることが他の奴にばれたら面倒なことになりかねない、一応助けに入れる距離にいるようにするが道中油断はするなよ」


そう言い残して姿を消した。


何事もなくその後を過ごせたわけではない。

当然モンスターにも襲われる。

だが幸運にも大半が倒し慣れたゴブリンであった。

一度だけゴブリンを三倍くらいの大きさにしたような醜悪な巨人に出会ったが、即座にスロフリバさんがどこからともなく出てきて逃がしてくれた。


今はスロフリバさんがいるからいいが、いつまでも守ってもらうわけにはいかない。

自分で自分の身を……いや、リゼリアと自分の身を守れるくらいに強くならなければ……

とはいえ、魔導率は皆無、スキルも無い、随分と異世界は転移者に厳しい。


随分と歩いたが次の町は見えてこない。

夕暮れ時、山道で俺とリゼリアは広く開けた場所を見つけたのでそこを今日の野営地とすることにした。

王都で購入したテントを張り、リゼリアは今晩の夕食を作る。


四苦八苦しながらテントを張り終え、リゼリアも下ごしらえが終わった頃、スロフリバさんが大量の薪を持って現れた。


「焚き火にこれを使うといい、それから悪いんだが夕食を分けてもらってもいいだろうか?」


「構いませんよ、食糧持ってきていないんですか?」


意外だ、ちゃんと準備してそうだけど……

いや、ケイプウッドさんに急かされて出たって言ってたし、準備出来なかったのかな……?


「保存食ならあるが、せっかくなら調理されたものが食べたい。俺は料理は出来ない、料理担当は昔からケイだったからな」


あぁ、それは納得できる。

この人が料理とか想像できない。


集められた薪をいくつか並べてリゼリアが魔法で火をつける。

科学製品を失った今の自分には火を起こすのも一苦労だからこういうのを見ていると正直魔法が羨ましい。


焚き火の周りに座ってリゼリアの作った夕食を頂く。


「今日は随分歩いたし、疲れたね」


「うん」


リゼリアの返答はいつもより素っ気ない。

やはりスロフリバさんがいるからだろうか?


リゼリアの作った夕食は干し肉などの保存食を煮込んで味付けしたもの、シチューモドキみたいな?

ケイプウッドさんのような店で出てくる料理とは違った家庭的な味でこれはこれで美味しい。


「美味しいね」


「……」


リゼリアは何も言わなかったが口元が少し緩んでいるのがわかる。

子供はやっぱり褒めて伸ばすべきだよね。

実際に美味しいし。


スロフリバさんは元々あまり喋る人ではないし、リゼリアも二人きりじゃないからだろう口数が少ない。少ないと言うよりは返事しかしない。

そんな静かな夕食は終わり、後は寝るだけとなった。


この世界に寝袋は無い、理由は何となくわかる。

あんなミノムシ状態では襲われたときに急に対応が出来ないからだろう。

寝袋は平和だからこそ生まれたものだったのか……


そんなこの世界では下に一枚布を引いてその上で寝る。

幸いテントは狭くないので三人でも寝れそうだ。


「三人入れそうですし、スロフリバさんもいかがです?」


「いや、遠慮しておくよ」


スロフリバさんは少し驚いた表情をしたあとに苦笑しながら続ける。


「お前は気づいていないのか?」


「何がですか?」


「その様子だと本当に気付いてないようだな、忘れてくれ」


「え、僕は何か重要なことを見落としてたりします?」


「いや、ただ彼女が少し難儀だなと」


「え? ああ、まだ幼いのに両親と引き離されて可哀想ですよね、スロフリバさんから見てもやっぱり僕では保護者役は出来ていませんでしたかね?」


「そうだな、お前は恐らく一生彼女の保護者役にはなれないだろうよ」


「厳しいことを言いますね、でも僕は頑張って彼女を守りますよ」


「ああ、そうしてやるといい」


終始苦笑しつつ、スロフリバさんは闇夜に消えていった。



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