23.ステイル
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動くことを拒む足を叱咤してアスカに付いていくと街の外れ、つまり城壁のそばにある建物の前で立ち止まる。
何の変鉄もない建物だが倉庫にしては大きく、しかし人が住むにしては小汚い。
アスカは迷うことなくドアを叩く。
しばらくすると軽装な男が出て来る。
そしてアスカの顔を見ると明らかに動揺した様子で声を上げる。
「し、疾風の剣姫!?」
恭弥には一瞬それが何を意味する単語なのかわからなかったが、アスカはそれを聞いて顔をしかめる。
それを見て恭弥にもそれがアスカを表す通り名で、本人はその名で呼ばれることを快く思っていないことを察する。
「ステイルはいるか?」
不機嫌からかアスカはいきなり用件を口にする。
「ちょ、ちょっと待ってて下さい!」
いるともいないとも明言することなくドアをバタンと勢い良く閉めて男は戻っていく。
これではいると言ってるのと同義であることに彼は気付いていないのだろうか。
しばらくして再びドアが開かれる。
出てきたのは先程とは別の、明らかに強そうな筋肉質の大男。
その顔を見て恭弥はすぐにそれが誰か思い当たる節があった。
その男は例のおばあさんを平然と吹き飛ばした男だった。
「よぉアスカ、疾風の剣姫さまがこんな街外れに何の用だ?
男連れってことは告白をしに来たって訳でも無いんだろう?」
「人を探しているのだが、どうやら目的の人物をお前が連れ去ったと聞いたものでな」
一瞬、ステイルは恭弥の方へ視線を向ける。
その視線は明らかに好意的とは逆のもので、恭弥の本能が警鐘を鳴らす。
足が疲労で動かなかったのか恐怖で動かなかったのかわからないがリゼリアのためにと断言できないことに情けなさを感じながらも恭弥がそこから逃げ出すことは無かった。
「まぁ立ち話も何だろう、中に入れよ」
そう言ってステイルは二人を中に招き入れる。
中はお世辞にも綺麗とは言えない有り様で倒れた家具、汚れた布、空き瓶他にも様々なものが床に散乱している。
ステイルは適当な椅子を三つ起こすとそのうち一つに座って残りに座るように勧めてくる。
「さてと、俺が連れ去ったという話だったか?」
「ああ、心当たりがあるんじゃないのか?」
「やれやれ、随分と風当たりが強いな
それはお前が実際に見たのか?
それとも横のそいつか?」
「いや、我々が見たわけではない」
「おいおい、それはあんまりじゃないか俺だって民衆のために日々戦っている勇者だぜ?
それを知らないやつの言葉一つで犯人扱いかよ」
「お前は最近悪い噂が多い、例え間違いだとしても身から出た錆だろう」
「どうやら剣姫さまは俺のことが嫌いらしいな」
ステイルは大袈裟に肩をすくめる
「ならこの建物の中を探させろ、それで話はつくだろう?」
「それは流石に横暴じゃないか、人には誰だって見られたくないものの一つや二つはあるだろう?」
「少なくとも私は無いな」
ステイルは一つ舌打ちをする。
「面倒臭いな、黙って帰ればいいものを……
もういい、悪いがお前らにはここで死んでもらう」
椅子から立ち上がりながらステイルはそう言い放つ。
気付けば回りをステイルの他に三人、合計四人に囲まれている。
「いくら疾風の剣姫様と言えど足手まといを連れて4対1じゃあ分が悪いだろうよ」
「謝意は無いと、そういうことでいいんだな?」
冷たく、アスカが言う。
「謝ることになるのはお前だよ、アスカ
大層な美人だからな、態度次第では命までは取らないでやるよ」
「ゲスが」
明らかな敵意をもってアスカが刀を抜く。
独特の反りと片面の刃。
そう、それは間違いなく刀だった。
それについてアスカに聞きたいことは少なくなかったが、今はそれどころではない。
恭弥も剣を抜こうとするが、アスカに制止される。
「悪いが足手まといだ、私が道を開けるからお前はツレを探しに行け
私の心配はいらない、これでも腕は立つんだ」
小声でアスカは言うや否や異論を挟む余地もなくステイルに向かって斬りかかる。
少し遅れて恭弥も駆け出す。
斬り結ぶ二人の横を駆け抜けて奥の部屋へと向かう。
他の三人のうち一人が恭弥を追おうとしたが、アスカが阻んだようだ。
奥の扉を開けて転がり込むように中には入る。
いた。
猿轡と手足を縛られてリゼリアは転がされていた。
フードが外されていることやリゼリアのような非力な少女に対してここまでする必要はあったのか
という疑問も浮かんだがその姿を見たことにより沸き上がる怒りの方が大きかった。
今ならケイプウッドさん達の考え方に諸手を挙げて賛成できるほどに。
そばにしゃがんで急いでリゼリアを解放する。
するとリゼリアは恭弥の胸に飛び付いてしがみつくようにして嗚咽を上げて泣き始めた。
「うぅ……きょうやぁ……きょうやぁ……」
恭弥の足にも限界が来ており、どうにもリゼリアを支えて立ち上がる余力は残されていそうにない。
恭弥はリゼリアの頭を優しく撫でながらリゼリアが落ち着くのを待つのだった。
敵にも味方にも足手まといといわれる主人公……