22.依頼
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「大丈夫か?こんな狭い路地を走っては危ないぞ」
凛とした声と共に影から姿を現したのは女性だった。
長い睫に強い意思を表すような黒い瞳、顔のパーツが揃っていて落ち着いた美しさを感じさせる。
黒く長い髪は後ろで一つに纏められて動きに合わせてゆらゆらと揺れる。
そしてその容姿は恭弥にどこか馴染み深さを感じさせた。
細身にゆったりとした服を纏い、防具と呼べるものは服の上に着けた胸当てと籠手だけのようだ。
ただ、その両方が明らかに高そうな光沢を放つ革で出来ていることからやはり只者では無いことが伺える。
服も同様で恭弥が普段着るような麻ではなく、絹のようななめらかさを表面にたたえている。
しかし、その何よりも恭弥の目を引いたのは腰にささった剣、いや刀である。
鞘の上からでもわかる。
この独特の反りはこちらの世界に来て初めて見た。
この世界にも刀は存在するのか?
そんな疑問が頭を掠めるが、今はそれどころではない。
この人は敵なのか味方なのか。
それが問題だった。
「おい、大丈夫か?」
女性の声に恭弥は思考を中断する。
女性は心配そうにしながらこちらにてをさしのべていた。
「あ、すみません
急いでいたもので……」
手を取って立ち上がるが、情けないことに膝がガクガクと笑う。
「ふむ……
そんなになるまでお前は何をそんなに急いでいたのだ?」
なんて答えるべきか。
この人がもし、ステイルならば一瞬のうちに首が飛ぶ恐れもある。
一瞬のうちに思考を巡らせて恭弥は口を開く。
「その前にお名前を伺ってもよろしいですか?私は恭弥といいます」
「ん?まぁ構わないが
私はアスカだ、よろしく頼む」
違う、この人ではない。
「実はツレがいなくなってしまいまして……」
「……それだけならそんなに急ぐ必要はないだろう
まだ他にあるんじゃないか?」
鋭い、やはり只者では無いのだろう。
だが、いくら腕利きの探索者でも勇者には敵わない。
これ以上迷惑をかけるべきではないな。
下手に伏せるより相手は勇者ということを明言した方が関わろうとしないだろう。
「近くにいる人が勇者に連れ去られた所を見たらしいんです」
「……なるほど、それでお前はどうするのだ?」
「助けにいきます」
即答する。
「自惚れない方がいい、キョウヤ
お前が行ったところで無駄死にするだけだ」
「わかってます、でも行かないわけにいきません
心配してくださり、ありがとうございます
後は私の問題です」
そう言ってアスカの横を通り過ぎようとする。
しかし、アスカは横に避ける様子は無くそれどころかそこに立ちはだかるかのように道を塞ぐ。
恭弥は今になってアスカがステイルの仲間である可能性に思い至った。
「どういうつもりですか?
そこをどいてください」
動揺を表に出さないように語調を強める。
「ここを通りたければ条件がある」
「条件……?」
どういうことだ?
敵ならすぐに殺せばいい。
この人の技量ならそれは難しいことではないはずだ。
「私を雇え、キョウヤ
もちろん報酬はいらない」
「……は?」
予想外過ぎて変な声を出してしまった。
何を言ってるんだこの人は……
勇者を相手にすると言ってるのに協力すると、そう言っているのか??
「あ、相手は勇者ですよ!?
今知り合った私のために命まで張らなくても……!」
その言葉を聞いてアスカはふぅと一つため息を落とす。
「私もそこそこ有名になったかなと思っていたんだけどな……」
「え?」
「こう見えて私も勇者なんだよ」
頭が追い付かない。
落ち着こう。
目の前にいるアスカは勇者で、リゼリアを助けるのに無償で協力してくれると……
「何故……ですか??
アスカさんには何の見返りも無いじゃないですか」
「別に理由なんか無いさ
強いて言うなら私が今時間を持て余していて、私がキョウヤを気に入った
それに勇者であることを盾に悪事を働く奴は嫌いだからかな」
都合が良すぎて怖くなる。
けど、死ぬ気で助けに行く気持ちでいたのだから恐れることなんて無い。
そんな気持ちにもなってくる。
「アスカさん、依頼していいですか?」
「もちろん、まずは情報の共有だな
探してるツレの情報と他に何かわかってることがあるなら教えてくれ
それから一緒に仕事をするんだ、いつまでも"さん"付けはやめて欲しい」
魔族であることはもちろん伏せてリゼリアの背格好。
そしてステイルという勇者のことを伝える。
「ステイルか……いい噂は聞かないね
女の子を拐うなんてちょっと懲らしめる必要がありそうだ
キョウヤはどこに連れ去られたのか思い当たる所はあるのか?」
「いえ、まったく……」
「そうか、あくまで噂に過ぎないがステイルが使っているという建物を一つ聞いたことがある
ハズレかもしれないが無闇に探し回るよりは良いだろうし、まずはそこに向かってみようと思うんだがどうだ?」
「はい、お願いします!」
「よし!
じゃあ行こうか!」
そう言ってアスカは先導するように駆け出す。
日はすっかり沈んで、月が明るくなり始めていた。
アスカのキャラデザ担当してた人が他作品のキャラを想像してて実際何も固まってなくてかなり大変だった