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seek right  作者: ノラネコ
1章
20/31

19.深夜

話が動き始めます!


面白いと思ってもらえるように頑張ります!

……眠れない


図書館でただ本を読み続けただけの一日だったから頭は疲れていても体が疲労していないのかもしれない


眠れないというのは案外と辛いものだ


下手に他のことをしようとすれば余計に眠れなくなる


だからと言って天井は鑑賞するには娯楽に大きく欠ける


反対側の壁際のベッドの上の少女からは規則的な寝息が聞こえる


暫し瞼を閉じて羊を数えるが眠気は一向にやって来ない


………………。


少し夜風に当たりにいこう


身を起こし、音をたてないようにそっと部屋を出る


階段を降りるために二階の廊下を静かに歩く


階段の目の前、廊下の中程に来たとき反対側の角部屋に誰か、だがどこかで見た気がする人影が入っていくのを見かけた


誰だろうといろんな人を思い浮かべるがその誰とも背格好が異なる


棒立ちでそんなことを思案しているとケイプウッドさんが反対側の角部屋は倉庫として使ってると言っていたのを的外れにも思い出す


そして先ほど見た人影はもちろんケイプウッドさんのものでも従業員のものはなかった


これは宿にとって好ましいことではないのではないか?


つまり行き着いた結論は泥棒なのではないか……と


なおさら音をたてないように階段を降りると従業員室をノックする


この世界では常識なのか、この宿が特別用心深いのかわからないがこの宿では従業員の一人が必ず起きて従業員室にいることになっている


中から出てきたのは……幸運にもケイプウッドさんだった


知らない人影が倉庫の部屋に入っていったと切羽詰まった様子で捲し立てるように話す自分に対してケイプウッドさんの反応はどうにも鈍いものだった


「ん~……そうか……まぁ盗まれて困るような高価なものもないしなぁ……」


「で、でも……!倉庫だけでは飽きたらず、他の宿泊客を襲うかもしれませんし!!」


自分で言っていて不安になるリゼリアは無事だろうか……


「あ~……そうだな、じゃあちょっと見てくるからお前は部屋に戻ってろ」


階段を駆け上がることもなくどうにもケイプウッドさんに危機感を感じられない


ともかく恭弥は言われた通りに自分の部屋に戻る


反対側だから大丈夫だろうと自分に言い聞かせながら……


はたして中には相変わらず安らかに眠る少女の姿があった


安堵と同時に冷静になった頭が本来の働きを取り戻す


そして人影の正体に思い当たる


思い出せなかったのも無理はない、むしろ今さらでも思い出したことを称賛されるべきだ


人影はリゼリアと捕まっていた時、犯人の首を飛ばしたあの男と一致した


ガイウスさんは言っていた


ケイプウッドさんは実は強いと


ではあの男とやりあって勝てるのだろうか……


無理だ、ケイプウッドさんは倉庫に向かったとき手ぶらだった


自分はケイプウッドさんを死地へ向かわせてしまったのではないか?


強い罪悪感、そして激しい動悸に襲われる


このままで良いはずがない、人の役に立つためにこの世界に来たんだ、ここで何もしないで恩人を殺されるわけにはいかない


自分に何度も強く言い聞かせる、それはただの自己暗示


だが、動悸はいくらかマシになった


立て掛けてある、ろくに武器として機能しない剣を掴むと部屋を飛び出す


止まったら恐怖に心が折れてしまいそうで、時間帯も何も気にせず廊下を走り抜ける


倉庫に近づくにつれて中で言い争っている声が微かに聞こえる


まだケイプウッドさんは無事だ


安堵と共に更に加速する


自分がこんなに早く走れるとは思わなかった


ドアを蹴破り、転がり込むようにして部屋の中に入る


中には予想通り人拐いの首を飛ばした男がいた


ケイプウッドさんは頭を抱えている


外傷は無いように見えるが魔法か何かかもしれない


剣を抜くと同時に切りつける……が次の瞬間には手元に剣は無かった


何をされたのか全く見えなかった


遅れてやってくる鈍い痛みが剣を払い落とされたことを伝えてくる


警戒しながら辺りを見回すと剣は男の足元に転がっている


拾うことは叶わない


素人でもそれくらいはわかった


勝てないことは最初からわかってる


それでも何もしないわけにはいかなかった


喧嘩の経験もほとんど無かったがそれでも渾身の気合いを込めて殴りかかる


しかしそれも軽くかわされ足を払われる


勢いよく顔面を床に打ち付ける


その痛みに一瞬ひるんでしまう


それは戦闘において致命的な隙だと即座に思い直し飛び起きて振り返る


男は特に追撃をするつもりは無かったらしい


依然としてそこで剣も抜かずに立っている


睨み合うかたちで対峙する


背中を冷たい汗が流れる


そこに突然ケイプウッドさんが間に割って入る


「落ち着けキョウヤ」


「へ?あれ??ケイプウッドさん無事だったんですか!?」


「俺はこの通り無傷の健康体だよ」


「え?でもさっき頭を抱えて……」


「あぁ、それはお前とこいつが鉢合わせちまったから……」


「……どういう……こと……ですか……?」


「こいつは悪いやつじゃないんだが、キョウヤと会わせたらまぁこうなるだろうと思ったからな」


「で、でも王都に来る前にこの人が人を殺すのを見たんです!」


「あー、知ってる。

それについても全部説明するから落ち着いて聞いてくれ」


恭弥は一つ深呼吸をして気持ちを落ち着けると続く言葉を待つ


「こいつはスロフリバ、世間を騒がせてる"狂勇者"だ」

読者の皆さんは知ってるよ!って感じかもしれませんが恭弥は気づいてませんでした()

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