15.王都1
久し振り!
失踪してないよ!大丈夫、大丈夫!←
書き溜めてもいないけどね!
今後更新速度がどうなるかちょっとわからないけどまた再開していく予定です
「ギィ!ギギィ!!」
目の前の緑色の小鬼もといゴブリンが耳障りな声を上げて威嚇してくる
身長1m弱しかないが侮ってはいけない
生身でゴブリンの振り回す棍棒を打ち所悪く食らえば骨折だってする
慎重に剣で撲殺する
村から持ってきた剣は刃こぼれも錆も酷くとても切れるようなものではない
とはいえ鉄の塊だ
力一杯殴り付ければゴブリン程度は一撃だった
慣れとは怖いもので、初めのうちはゴブリンを自ら殺すどころか人が殺すのを見ていても吐き気を催したのに今となっては自らの手でそれを為すまでになった
切れ味の悪い剣で殺そうとすると頭の半ばまで剣がめり込んで殺す何てことも少なくなく大分凄惨な死体になることもあるのだ
ガイウスさん……黒羽亭で色々教えてくれた橙タグの人が「探索者のなんたるかを教えてやる!」と言って手伝ってくれていなければ初仕事でゴブリンを殺せずにお陀仏だったかもしれない
……いや、それはないか
そうなっていたらリゼリアがきっと魔法を使って助けてくれたのだろう
事実、リゼリアの放つ魔法の威力は抜群だった
一撃でゴブリンが炭になるほどだ
ただ、魔力量は少ないらしく連発は出来ないらしい
他に何ができるのかと聞いてみたが、水と火くらいしか出し方がわからないそうだ
国からの依頼である街道付近の安全の確保と王都の薬師からの依頼である薬草の納品を毎日二人で繰り返している
この二つの依頼は常時出ているものなので他の探索者と被って仕事がなくなるなんてこともなく安心して回せる
俺がゴブリンを倒して、お互いが目視できる範囲でリゼリアが薬草を摘む
今となってはライフワークになっている
何より危険が少ないのが良い
しかし、同時に問題もあった
単純に実入りが少ないのだ
今はウッドケイプさんに宿代を無料にしてもらってるから良いものの、普通なら宿代だけで収入が全部飛んでいく位に報酬が安い
困ったな……
リゼリアが薬草を摘むのを見守りながら頭を悩ませる
こうして眺めると美少女が花を摘んでるようで絵になるなぁ……
リゼリアは恭弥の視線に気が付くと駆け寄ってきて薬草の入った籠を見せてくる
何も言葉を発してはいないが、何を言いたいのかは大体わかる
「おー、たくさん採れたなぁ」
そう言ってリゼリアの頭を撫でてやると嬉しそうに相好を崩す
正直、薬草の単価は安い
多少多くとれたところで報酬はさほど変わりはしない
まだこんなことを言うような年じゃないけど娘を持った父親はこんな気分なんだろうなぁ
「そろそろ日も傾いてきたし帰ろうか」
「……うんっ」
ギルドに寄って報酬を受け取り、帰路につく
いつも通りの日常…………とはいかなかった
突然、道を歩いてた人の波がざわつきながら左右に割れていく
全く意味がわからなかったが、何となく自分も道の端に寄ってしまうのは日本人の癖か
何事かとキョロキョロしていると、無人になった道の中央を悠然と歩く一行が目に入る
素人目にもわかるような高そうな装備に身を包んだいかにも強そうな四人組
しかし、足が悪いのか杖をつきながら必死に歩いてこそいるが端に避け損ねた老婆を前に一行の足は止められることになる
少し避ければ済む話なのにわざわざ止まったのだ
そしてリーダー然とした男が軽く腕を上げる
その瞬間、何が起こるのか恭弥は察してしまった
そして走り出す、老婆が飛ばされるであろう場所へ
男は軽く払うように腕を振るう
しかしその行為の見た目とは裏腹にまるで羽のように老婆は壁に向かって飛ばされた
寸前のところで恭弥は壁と老婆の間に体を滑り込ませる
そして老婆を受け止めようとしてその勢いに驚く
具体的に言えば受け止めようとした恭弥の足が浮いた
いや、もろとも吹き飛ばされて恭弥の体は壁に叩き付けられた
カヒュと肺から空気の漏れる音とミシミシと骨のきしむ音がする
あまりの衝撃に恭弥は何が起こったのか理解も追い付かないまま意識を落とした
恭弥気絶しすぎぃ……