興味津々なお姫様
「どうしたらここまでごちゃごちゃになるんですか!?」
「だから言ったじゃん、ごちゃごちゃしてるって。…予想以上だったけど…」
急いで家を飛び出したためあまり気付かなかったが、改めて見ると酷いものだ。
食器棚から食器は落ち、本棚は倒れ、まるで大地震の後のようだった。
「召喚されるのってどんな感じだったんですか?」
「あれはきつかった…」
タカヤが詳細を説明すると、レイの顔がだんだん青くなっていった。
「想像しただけでも気分が……それは申し訳ありませんでした…」
「帰りもこれなら帰りたくないな」
タカヤがそう言うと、レイは一瞬目を輝かせたと思うと、すぐに暗い顔になってしまった。
「どうかしたのか?俺、また何か変なこと言っちまったか?」
「あ!いえ、タカヤはいずれ自分の世界に帰らなければならないと思うと…」
「あー、俺帰るつもり無いから。あわよくばここで生きてこうと思っちゃってるから」
「っ!本当ですか!?でもタカヤの家族はあちらに…」
「うん?いないよ。縁切られちゃったからな」
「あっ、ごっ、ごめんなさいっ、嫌なこと聞いちゃって!」
「いやいや!謝る必要は無いよ!あっちの世界では邪魔だったからこっちの世界に来られたと思ってるから、結果オーライってやつだ」
もちろんこれは本心だ。この世界でどうやって生きていくかはまだ検討中だが、あんな辺境の地でひっそり死んでいくよりよっぽど楽しそうだと思っている。
「軽く片付けようと思うんだけど、レイはこのゴーレムの中、自由に見て回ってていいよ」
「いいんですか!?あっ、でも片付けるの手伝った方がいいんじゃ…」
レイの口はそう言っているが、明らかにソワソワしてキョロキョロと辺りを見回しているし、しっぽが先程からパタパタと動き続けている。
「いや、いいよ。たぶん適当に片付ければ10分くらいで終わるから。あ、もう遅いし休んでいてもいいんだけど。布団しか無いけどいいかな?」
「休むくらいなら見て回ります」
「ん、いってらっしゃい。なんかあったら呼んでね」
タカヤが喋り終わるより早く、レイはゴーレム内探険を始めていた。
「さてと、始めるか」
手始めに、倒れている家具を元に戻すことから始めた。駄目になってしまった食器類はビスティアで代替品を見つけなければ。
次に散乱した本を適当に本棚へ戻した。本当はシリーズごと、巻数順に並べたかったが、あまりレイを待たせるわけにはいかない。幸い、表紙やページが折れたりすることはなかった。
次に自分の部屋へ向かうと、そこにはレイが座り込んでいた。
「ここで何してるんだ?」
「ひゃっ!?たったたたたた、タカヤ!?」
なんだろう。世紀末の漫画でも読んでいたのだろうか。ここはあべし!とかひでぶ!とか言った方がいいのだろうか。
と、レイの手元に目を移すと、そこには禁断の薄いバイボゥが。
しかも、獣耳系の。
「……えっと、レイはここで何をシテルンデショウカ?」
ノンストップ冷や汗。
「だ、だってタカヤが、何かあったら読んでねって」
「違うよ!リードの方じゃなくてコールの方だよ!?読むじゃなくて呼ぶの方だから!」
2度とは戻れない夜。神崎タカヤ終了のお知らせ。
俺たちの戦いはこれからだ!今までありがとうございました!神崎タカヤの来世にご期待ください。
とタカヤが諦めムードを漂わせていると、レイが読んでいたページを広げて指差し、こちらに見せてきた。
「たっ、タカヤはこういうことしたいんですか!?」
「いや、あの、その、ね?俺も健全な男子だから仕方ないっていうかなんていうか健全な男子は持っていて当然というかなんていうか許してくださいお願いします……って、あれ?」
レイが見せてきたページにはいわゆる18禁ページではなく、まだ主人公と獣耳の少女がイチャイチャしているところだった。
そしてレイの指先にあるシーンは、主人公が少女を撫でているコマ。
「…えーと、そうだね、正直してみたいね。でもその前にこれは回収させてもらうよ?」
レイの手から例のブツをひったくり昔使ってた教科書の隙間に華麗にスローイン。召喚後だったため仕方ないとはいえ、次からは隠し場所を真剣に検討しよう。
どうも、肉付き骨です。
注意しておきますが、タカヤは学生ではありません。よいこの皆さんは誤解しないようにしましょうね。
しばらくはこんな感じでゆったりした雰囲気で進んでいくと思います。