タカヤ、賢者モード
「使い方は大体分かりましたか?」
「ああ。あとは魔法を使える条件、って言えばいいのかな?そういうのはあるか?」
タカヤは立ち上がって服についた土を払い落としながらレイに問うた。もし、こんな規模のものを乱発できてしまえば本当に世界が破滅しかねない。
「そこで必要になるのが、スピリトです」
「例の、大地から放出されるってやつか」
「普通はそうなんです。空気中に漂っているスピリトを魔法に変換して発動するのですが」
ケモミミだらけの世界に登場した『フロなんとか力』みたいなものか。
「タカヤの場合は空気中のスピリトに関係なく魔法を使うことも可能みたいなんです。今、この場には魔法を発動できるほどのスピリトは、召喚魔法で消費されて残っていないはずなんです」
「え、もしかして俺AU王の血筋を引いてて…」
「あ、それは違うと思います」
「Oh…まじすか…」
バッサリ斬られた。一瞬でも舞い上がってしまった自分が恥ずかしい。
タカヤがどこかに自分が入れるくらいの穴を探していると、レイがあわてた様子で付け加えた。
「あの、えっとですね、タカヤは今まで魔法を使ったことが無いんですよね?ならまだなんとも言えないというか…」
なんだか気を使われたのはなんとなくニュアンスでわかるぞ。
「…レイはどうしてだと思うの?空気中のスピリトに関係なく魔法を使える理由」
「うぅ…ごめんなさい…タカヤを召喚する際に必要だったもの、覚えていますか?」
「えっと…たしか1000年分のスピリト?」
「そうです。そこで考えたのですが、その1000年分のスピリトはどこに消えたのでしょう?」
「どこにって、召喚魔法にだろ?」
スピリトは魔法に変換されるもののはずだ。先程も召喚魔法で消費されたと言っていたし。
「言い忘れていたのですが、魔法は発動を終えるとスピリトに還元されます。例えば、火の魔法を発動したとします。そして発動を終えて火が消えると、火の魔法で消費された分のスピリトが還元されるのです」
「スピリトすげぇ」
スピリトさえあれば地球も安泰なのにな、と考えていると、レイが再び口を開いた。
「でも召喚魔法で消費されたスピリトは未だ戻っていないんです。だとすれば、その1000年分のスピリトは全てタカヤの中にあるのではないでしょうか?」
「マジかよ…じゃあ俺は1000年分のスピリトの量だけ魔法発動できるのか」
今のタカヤはMP999状態、下手したらMP9999状態のようだ。ある意味賢者モード。
「これは切り札になるかもしれません…っくちゅ!」
「くしゃみもかわいい!っとそうじゃなくてだな、冷えてきたし、これからそのビスティアに向かうのも遅いと思うし、その、うち…俺のゴーレムに来ないか?」
なんだ、うちのゴーレム来る?って。そんな台詞初めて聞いた。まあ、俺がその第一号なんだが。
「いいんですか?一度入ってみたかったんですよ!」
よかった。変な意味にはとられなかったようだ。
「ああ、召喚されたてでごちゃごちゃしてるけどいいか?」
「かまいませんよ!ほら、早く!」
「お、おう、わかった」
とタカヤが言いきる前に、レイはマイゴーレム(仮)へと小走りしていた。
どうも、肉付き骨です。
この作品では今のところ狐耳の彼女と人間の彼しか出ていませんが、他にも様々な種族が登場する予定ですよ。エルフとか出したいですね。
そして今回から、毎週日曜の11時に一話ずつ更新していきます。
間隔が長すぎるというご意見があれば検討してみますが、さすがにもう二日一話ペースはやらないと思います。
ご理解いただけるとありがたいです。