一文無し、タカヤ
一応元の世界の硬貨、日本円を持って、門に入ってすぐの街に来た。金品も適応させてくれれば尚良かったのだが。
「国って言うよりは城と城下町って感じだな」
元の世界のように広大な土地を持つ国はあるのだろうか。
何はともあれ、まずは物々交換を試みようと、近くにあった果物屋のおばちゃんに声をかけた。
「この、リンゴ?ください」
「いらっしゃい!うちの果物はどれも新鮮だよ!…ってあんた勇者様じゃないか!?」
「あ、どうも」
どうして分かったのだろうかと思ったが、リンゴのような果物を渡そうとした自分の手の甲を見て気づいた。紋章だ。身分証明にも使えるとはなんと便利な。
「勇者様なら安くしとくよ!50ロンでどうだい?」
どうやらロンというのはこの世界かミミ国のお金の単位のようだ。
「あー…それなんだけど、召喚されたばっかりでお金になりそうなのはこれぐらいしか無いんだ」
タカヤは財布から百円玉を取り出して見せた。
「見たことない硬貨だね…とりあえず質屋で見てもらったらどうだい?」
「そうだな…やっぱりそれがいいか」
「そいつはサービスだよ、持っていきな!」
おばちゃんは、渡そうとした果物をそのままタカヤにタダでくれた。
「いや、悪いよ。タダで貰うわけには…」
「いいんだよ!代わりに、換金したらまずうちで買い物してくれればそれで」
「ん…じゃあいただくよ。ありがとう」
タカヤは貰った果物をかじりながら、おばちゃんに教えてもらった質屋へと向かった。
初めて口にしたウォンデルの未知の果物は、見た目通りリンゴのような食感だったが味は桃のようで、不思議で美味だった。




