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捨てられ勇者の奮闘記  作者: 肉付き骨
飛ばされて異世界
10/19

ウォンデルF

 朝ごはんを食べ終え、身支度を済ませたところでふと思った。


「なあ、ここからミミ国までどれくらいかかる?」


 少なくとも、この場所から見える距離には建物らしきものが無いことは、昨晩確認済みだ。


「全力で走って一日かかるくらいですかね」


「全力ってどれくらい速い?」


「一時間に60キロメートル走れますよ!速さには自信あります!」


 ガッツポーズをして見せるレイ。ダメだ。人の子である我には到達できぬ領域である。

 それに、一日も走り続けるなんて。


「うん、俺ムリ!」


「そうですか…」


「しかもこいつらを置いていかなきゃいけないのは辛いな…」


 生活必需品やら食料や道具、あと紙書籍や電子機器。どうせなら全部持っていきたいのだが。


「え?このゴーレム動けないんですか?」


「ゴーレム?あ、ああ、ゴーレム。そうだな、動けな……って、そうだよ、動かせばいいだけの話じゃんか」


 なんてったってここはファンタジー世界ウォンデル。魔法があるのだから。


「操ったりとかできるかな…っと」


 意識を集中し、このゴーレムがどこかの動く城のように動き出すイメージを練る。


「どうしたんですか?いきなり黙りこんで……きゃあ!?」



『全機、トランスフォーメーション!』



 老年の艦長を思わせる貫禄のある渋い声。いや、どっから出てきた!

 そして、けたたましく鳴り響く警報音とともに、シャッターのようなもので部屋ごとに区切られ、揺れ始める。タカヤとレイは揺れに耐えられずソファーに座った。

 なんかイメージと全然違う。


「なんですかこれ!?」


「いや、俺もよくわかんないけど、トランスフォーメーションっつってるし変形するんじゃね?」


 十秒後、警報音が止み揺れも収まると、



 シャキーン!シャキーン!シャキーン!



『コンプリート!』



「いや、本当になんだよこれ!?終わった後にいらん効果音つけんなよ!」


 雷魔法の着弾地点といい、自分の魔法はどうも不安定なようだ。不安定という一言でまとめていいものではないと思うが。

 依然としてシャッターは閉まったままだが、何が起こったのか確認するために立ち上がろうとすると、ソファーの前に大きなディスプレイが現れた。


『目的地を 設定してください』


「カーナビかっ!」


 画面には見たことの無い世界地図が広がっていた。


「広すぎるわっ!この近辺に範囲絞っとけよ!」


 こんなやりとりを前にテレビで見たことがあるような。たしか映像を駆使する芸人さんだったか。


『拡大します』


 カーナビの声に合わせて地図が拡大され、だいぶ範囲が絞られた。


「あ、意外と言葉通じた…レイ、頼めるか?」


「任せてください!えっと、今ここだから、ここから南へ…これです、ありました!ここを触ればいいんですか?」


「たぶんそうなんじゃないかな」


 レイがそこをタッチすると、その地点に向かって現在地から矢印が伸びた。うん、完全カーナビだわ、これ。


『目的地を ミミ国 に 設定しました。自動操縦を 開始 します』


「おっ、こいつ自動でミミ国まで連れていってくれるみたいだぞ」


「タカヤがそういうふうに魔法をかけたんじゃないんですか?」


「え?あー、うん、そうだった。タカヤうっかり☆」


 またしても誤魔化してしまった。勇者召喚が失敗したと思わせたくないから。


「これ、どうなってるんでしょう?」


 レイが不思議そうに目の前の画面をつついていると、地図から画面が切り替わり、人型ロボットの図が現れた。


「えっと、なになに…《ウォンデル級移動住宅 ザ・カンザキ》って書いてありますね。あ、右下に小さく《元神崎邸》って出てますよ」


「なんだよウォンデル級て!しかも名前ビミョーだな!」


 さらにこの図、どうやったらこんな形になるのか、と思ったほど変形していた。割と直方体っぽさは残っているが、顔と手はどっから出てきた。


「まあ、動き出すまで待つか。幸い、部屋の移動は階段でできるみたいだしな」


「そうですね、くつろがせていただきます」



ー6時間後ー



「外には出られないし、窓はシャッターで閉じられてるし、画面は地図に戻らないし!こいつダメじゃね!?」


 変形後から震動がない。燃費が悪すぎて自分のスピリトが尽きてしまったのだろうか。


「さすがに長いですよね…」


『目的地 に 到着 しました』


「はい!?」


「おかしいだろ…」


 シャッターが開き、窓から見えたのは木々に囲まれた大きな城。


「間違いありません、ミミ国です!」


「フォールド航行でもしたのかこいつは…」

 貯蓄ができたので四日サイクルに切り替えまする。

 なんというきまぐれ。

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