ビギンズ・ナイト
神崎タカヤ、18才。
遂に両親に見捨てられた。
スポーツ万能頭脳明晰。そんな弟がいるから、大企業の創始者の父と母にとって、使い物にならない兄など目の上のたんこぶでしかなかった。
世に出すのも恥ずかしいと言われ、世間から兄の存在は力によって消された。
『大企業社長の御曹司、富士の樹海にて消息不明。』
表向きではそう言われているが、真実は違った。
辺境の土地の山の中腹にわざわざ家を建て、俺と俺の持ち物全てがそこに放り込まれた。
さすがに自分の息子を殺すわけにはいかず、毎月生活費を送るようにしたらしいが、今さらそんな慈悲を、情けをかけられてもむなしいだけだ。
「これからどうすっかな…」
父の部下はすでに帰り、家の中に荷物は全て運び込まれている。
「目立たないように好きに生きるっつってもな」
青年、神崎タカヤは、ぼやきながら荷物の整理を始めた。
段ボールの中身は、主にパソコン、漫画、ライトノベル、ゲーム類など。衣服は主に黒中心。
荷物の整理が終わった頃には、外は真っ暗になり、雨が降っていた。
「買い出しは…明日からやるか」
特に寝る場所は決まっていないので、段ボールから布団を取りだし、そのまま眠りについた。