8話【そしてお約束は続くってか】
銃弾は発射され、銃声は鳴り響く。
銃弾は左肩へ当たり、体内で爆発する。
そして上がるは悲鳴。
「グッ、ガァァァ!!!」
俺のだけどな。間一髪間に合った。
なんとか足が、瞬加が使えた。
左肩、左腕が使い物にならねぇが、構わねぇ。
「シンシア、無事か!」
「ああ、でもリョーガ、貴様は大丈夫か!?」
「ふん、こんなもん大したことねぇ。………出て来やがれぇ!」
およそ30メートル先、拳銃か?そのわりには弾速が遅かった。
シンシアに当たる前に割り込めたのはそれが要因だ。
(て、ことは、魔法か。拳銃ありとかマジかよ!)
ここは開けた場所、周りの森林から撃たれた。
そして、その方向から二人の男がやってくる。
一人は右手に拳銃を、一人は左手に錫杖を。錫杖?
だが、そんなことより、
「おま、え。ジンか!」
「その声、リョーガか!?」
そう、拳銃を持った男は、俺の親友(笑)の伊久佐刃、カッコ本名。キラキラネーム顔負けだ。
こいつが撃ったのか。
なんつー最悪な組み合わせだ。
もともと、ゲーセンに行こうとしてた俺達。
俺は格ゲー、クイズゲーが得意なのに対し
そして刃は、シューティング、ガンアクションを得意とする。
つまり、拳銃を持たせれば無敵だ。
「てめぇ、何してやがる。会えたのは嬉しいが、こりゃなんの仕打ちだ、ジン!」
「会えて良かったのは俺も同じだがなー。なんせ1週間振りだ。だがよー、おめぇこそ何してんだ?何でおめぇさんは巨人族を殺したっつってんだ!」
「なんの、ことだ。ジャイアントなんて何処にいる!」
「それだけじゃねぇ、あの砦にゃあ奴隷にしてる女子供が沢山居んだろ。辺りの異人種を殺しまくってんだろー?何でてめぇはそんな奴等に協力する!」
どういうことだ。1週間振り?異世界へ来た時間が違うってのか。それにジャイアント、異人種。
見間違い、いや、幻覚か!?
「俺達【ゴゥアフト】は、弱者を救い、クズ野郎をぶちのめす。あの砦にいる奴等はみんなクズ野郎だ。そして奴隷達を解放する。だから、邪魔すんなリョーガ。悪いが、そっちのおとこもやらせてもらうぞ」
俺はもう刃の話を聞いてない。見ているのは隣の男。
そして光っている錫杖!!!
「ジン!てめぇは騙されている!さっき倒したのはドラゴンだ、そしてここにいるのは女の子だ!!砦にいるのは王族で、お前たちこそ盗賊だ!!!」
「……ちっ、騙されるな刃!そいつはデタラメ言って混乱させる気だ!」
「ベイ、そうか、分かった」
刃は拳銃を構える。
「<爆発弾6発装填>悪いのはお前だ」
「くっ、ジィィィィンンンンンン!!!!!」
6発全弾、リボルバーから撃ち出される。
パパパパパパン!
ドドドドドドン!!!
「ガッ、ガァァァ!!!!」
―――――――――
砦内に運ばれたキャラバン。
中から、盗賊団【ゴゥアフト】戦闘員が攻撃を開始する。
「我等は【ゴゥアフト】!我々の流儀に載っとり、貴様らの総てを奪わせて貰うぞ!」
「!!!?敵襲だぁぁぁ!!!」
(フフフ、やれやれ、もっと派手に殺し合え。そしてあの忌々しき人間の王族どもを殺せ!)
―――――――――
苦悶の嘆きが上がる。
しかしこれは俺じゃない。
これは、
「刃、なん、のつも、りだ!」
ベイと呼ばれた男のものだ。
「…ジン?」
「ふん、おめぇさんが悪いと言ったろー。残念だったな。リョーガは嘘を吐かねぇんだよボケ。なら、間違ってんのはオレだろうよ」
「!!!???」
まっ、そりゃそうだわな。理解出来ねーだろーよ。
俺もわかんねぇもん。だけど、信じてくれてんのかね。
流石は俺の親友(不笑)だ!!!
「ジン、多分のそいつの錫杖だ。そいつがジンに幻覚を見せる核のはずだ」
「そうかー。なら、<破壊弾6発装填>」
放たれる弾丸。6発の銃弾は錫杖を砕く!!!
「んっと。こりゃー認識互換だったのかー?女の子が男に見えてたなんてなー。んで、ベイ、おめぇはなにもんよ?」
「ふん、話すと思うか。この裏切り者がっ!!!」
ドドドン!!!
3連発。
「裏切り者はそっちだろ。話せよ、つーかこんだけ撃ち込んでんのに、何で血も出てねぇんだー?さてはおめぇ魔人だなー」
「!?」
「アッ、アブザー?」
聞き慣れない言葉。しかしベイとか言う男は目に見えて反応する。
「ちっ、仕方ねぇ。<解放>」
男は立ち上がり、身体が変化する!
瞳は獣がごとく、爪は刃のように、歯は牙となり、
いかにも魔人ですが何か?みたいな感じに。
でも確認出来たのはここまでだ。何故なら、
「<一点に集約せし轟なる風は必断の斬撃となる>」
シンシアが既に、真一文字に斬っていたからだ。
これ迄のやり取りのなか。源子の回復を図り、
そして相手が化け物と分かった瞬間の必殺。
「相手が魔人なら、手加減は必要ないな」
シンシアの魔法、戦闘技術はドラゴンのようなデカブツよりも、
人型を対象とした方が真価を発揮できるとか。
それが、銃弾で血も出ない化け物を一刀両断。
レベルがちげぇな。
そして上半身だけになった通称ベイは、
「グッ、貴様らっ!くそっ、源創体がズタズタだ。1度本国に戻るか。覚えてろよ、何時か貴様らに復讐するからなぁぁぁ!」
いかにもヤラレ役な台詞を残して、消えた。
倒したときの消え方とは違う、これは、
「空間移動か、仕留め損なった」
ル○ラですね、わかります。
「って、何でもありかよ!」
「いやー、ここ異世界だぜー?」
そうだったね!
便利だよねルー○。
―――――――――
「きゃあ!」
「大丈夫ですか!?リネット様、セリア様。お隠れ下さい!」
「私の回復魔法は有用です!私も出ます。リネット、貴方は隠れなさい!」
「そんな!姉上を残して逃げるなんて!」
「貴方の源操因子は戦うことに向いてないでしょう!それに……、誰かは必ず生き残る必要がある!貴方は生きなさい!」
「そんな、そんなこと……」
「ハンナ!リネットを頼みますよ!」
「了解しました。リネット様、失礼します」
「ハンナ!?姉上、姉上ェェェ!!!」
―――――――――
「まずい!!!」
「どうしたジン?」
「砦を仲間が襲っているはずだ!」
「なにっ!?……まさか、あのキャラバンか!」
「ああ、その手筈になってる。俺は強い奴を引き付ける役だかんなー。そんで多分、みんなも騙されてる」
「魔人がまだ居るのかっ!?」
「ああ、多分男は全員魔人族だろうよー。ゴゥアフトは女子が殆どらしいからな」
「やべぇな、俺は左肩をやられてる。シンシアは源子の残りが少ない。ジン、手伝ってくれるな?」
「あたりめぇだ。あいつらに世話になったしなー。でも、魔人達に世話になった覚えはない。魔人は全員撃ち抜いてやる」
「よし、先ずは移動するぞ!時間が惜しい」
「ああ、勿論だ!」
「残り少ない源子だが、移動速度を上げるくらいなら出来るぞ」
「それを使ったら後は回復に専念してくれ。行くぞ!」
頼む、間に合ってくれ。
会ってまだ24時間経ってねぇ。
でも、あいつらは大切な人達なんだ!
ここで守れねぇで、なんのためのシントウ流だ!
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〔物語は動き出すか〕
何処が誰かが呟いた。いや、思ったと言うべきだろう。
〔その始点を押したのは私だがな〕
とても黒幕っぽい台詞と共に、また呟く、いや思う。
〔この程度の障碍で、終わってくれるなよ?〕
まだ、出番は来ない。