7話 【ゆるふわ系女の子と、お約束のアイツ】
「ん、ふあぁぁぁ」
初っぱなから、男の寝起きですまんな。
腕時計を見ると朝5時過ぎ。
寝たのが10時だったしな。
昨日は超常現象のオンパレードで、疲れてたみたいだし。
自動巻きの腕時計、これは異世界に来たとき着けたままだった。
まぁ、服はもうこの世界の男性服に変えたけど。
ふむ、絹製品か。あまり元の世界と変わらんな。
着てた服は、入るはずだった高校の戦闘服。
昨日預けて洗濯してもらってる。
さて、どうするかな。とりあえず部屋を出る。
「んー、姫さん達は起きてるかなー。魔法のこと聞きたかったんだが、トレーニングでもすっかなー」
なんのことはない独り言。
しかし返答がある。
「リネット様はまだお休み中です。セリア様は既に起床なされております」
「!?……なんだ、あんたか。ビクッたわ」
いつの間にか、ハンナが居た。
「セリアはもう起きてたのか。……そうだ、今時間どのくらいだ?この世界の時間単位わかんなくてな」
「現時刻は5時14分でこざいます」
「ってことは元の世界と変わんねぇのか。そいつはラッキーだな」
体感での、時間の流れは変わってねぇ。
一日24時間は、ここも同じだったか。
「んじゃ、セリアのとこに案内してくれる?聞きたいことがあってな」
「セリア様は現在食事中です。ご一緒されますか?すぐにご用意致します」
「そうか、そりゃ丁度良い。頼むわ」
腹ァ、減ってたしな。
―――――――――
「あら、おはようございます。早いんですね?」
「単に寝るのが早かっただけだ。セリアこそ、随分とはえぇな」
「仕事がありますから。それでもきちんと睡眠はとってますよ」
「そうか、大変だな」
とりあえず、飯が来たので優先する。
「ふぅ、御馳走様」
「お粗末様です」
「旨かったよ、ありがとな」
「お口に合われたようで幸いです」
ハンナの料理はうめぇな。
異世界人の俺にも、きちんと上手く感じる。
「そんで、セリア、頼みがあるんだが」
「どうしました?」
「今、この砦の中で、【魔法の能力が高い者】、【魔法について詳しい者】を紹介してほしい」
きちんと、学びたいからな。
魔法、カッケーし。
少し悩むセリア。
「そうですね、前者はシンシアでしょう。しかし、後者なら他に居ます。魔法の研究者で、エティ⚫ダーリングと言う者です。貴方なら、きっと気に入って貰えるでしょう」
「ん?どういうことだ?」
「研究者気質なので、【ビジター】という存在に興味があるはずです」
「なるほどね」
【ビジター】は珍しいらしいし、興味を惹かれるってか。
「そうですね、シンシアと一緒にエティさんの所へ行ってみては?今ならもうシンシアは起きてるはずですし、エティも大丈夫なはずです。ハンナ、案内をお願いね」
「はい、ではリョーガ様、此方でございます」
「んじゃ、行ってみるわ」
―――――――――
まずはシンシアの部屋へ。ノックするハンナ。
「シンシア様、起きていますか?セリア様からのお達しです」
「むっ、なんだと!すぐに行く」
タタタッ、っと早足で駆ける音。開く扉。
そして、
「下着のまま出てくるとは、有り難う御座います!」
ガン見しながら深々と礼をする。
「!!?見るなァァァ!!!」
「グパァァァ」
真っ赤になって、バタン!と扉が閉まる。
ふっ、良い蹴りじゃねえか。効いたぜ
それにしても、ネグリジェってやつか?女性服はよくわからん。
あれ?でも成長してんのか、胸。
もしかしてサラシか何かを?
着痩せすんのか。背は小さいのに。
あれはもう爆発と言っても過言では。
なんにしても、俺的にグッジョブです。
「大丈夫ですか、リョーガ様。身体と頭は」
「大丈夫だ。問題ない。そしてサラッと毒吐くね」
「これは侍女のたしなみでございます」
どんなたしなみだよ!
思うだけで、言葉にするのは止めといた。
「待たせたな、それで、セリア様からのお達しとは?」
未だに赤みが抜けてないが、顔はキリッとしている。
「……そうか、ならば行くか。リョーガ、先刻のことは忘れろ。良いな?絶対だぞ」
「へいへい」
勿論、高画質で記憶済みです。
―――――――――
「それにしても、魔法を学びたい、か。今でも充分強い気がするのだが」
「魔法があるんだ。なら、きちんと知りたいしな。それに俺は弱いよ。シントウ流だって、扱えちゃいない」
「そう言えばそうだ。そのシントウ流とはなんなのだ?私の魔法を砕きまくっていたが」
「よくわかんねぇんだよなー、これが。なんか、適当に技放ってみたら効果あったし。それも含めて、魔法について学ぼうかなって」
「てっ、適当って。そんなもので私は負けたのか」
「着きました。ここがエティ様の研究所兼自宅でございます」
「………案外、普通」
「ここは砦だ。本宅の方はもっと凄いらしい」
「へぇ、つーか知ってんの?」
「彼女は有名だからな」
チリーン、チリーン。
来客を告げる鐘。開くドア。
「はぁい?どなたですかぁ?」
そこには、
メガネ+白衣+下着の下のみ
「白衣による着衣とは、有り難う御座います!!!」
「だからマジマジ見るなァァァ」
異世界に来て、良かった。
エロハプニング、万歳!
風を伴った蹴りは、それはそれは凄まじい一撃でした。
「どぅもぉ、わたしがエティですよぉ」
きちんと服は着ている。ゆったりした服に白衣。
白衣はアイデンティティーなのだろう。
手を入れてないのに綺麗な淡い緑の長い髪。
形の良い鼻の上に乗ったメガネの奥に、
トロンとした青い瞳。
そして、超童顔。
美人?いや美少女だねー。マジこの世界最高。
あっ、胸は見えなかった。マジ残念。でも大きかった。なので許す。何言ってんの俺?
「それでぇ、何の御用ですかぁ?」
「これで二十歳、俺より5つ上だと。信じられん」
「私も、本人と会うのは初めてだが、こんな方とは」
「今回、魔法について教唆頂きたくお伺いした所存です」
人体の不思議について考えていた俺とシンシア。
きちんと答えたハンナが、軽く俺達を感情の読みにくい眼で一瞥してくる。
「はぁ、魔法についてですかぁ。もしかしてぇ【ビジター】さんと関係がぁ?」
ゆるふわな話し方をする人だな。
性格もゆるふわ。研究者イメージが崩れる。
「ああ、俺は新藤リョウガ、リョーガと呼んでくれ。俺は昨日この世界に来たばかりでな。きちんと魔法について知りたくてね。教えてもらえないか?エティさん」
「エティ、で結構ですよぉ?リョーガさん。教えるのは構わないですがぁ。1つ条件というか、お願いがありますぅ」
「なんだ?俺に出来ることなら幾らでも言ってくれ」
「貴方のことをぉ、調べさせて欲しいですぅ」
………マァッドサァイエンティィストォ。
「ええと、解剖だとか、危なくないなら別に良いぞ」
「ホントですかぁぁぁ。なら、良いですよぉ」
取引は終了。
ここからは解説コーナーです。
―――――――――
ゆるふわ喋りだと長いので、抜粋しよう。
魔法とは、源子を操作し、現象を起こすこと全般を指す。
他に、源子を使うことから【ユーズ】だとか、源操能力だとか呼ばれることもある。
基本的には魔法と呼ばれることが多いそうだ。
魔法は、文章を作り、言葉にすることで源子を操作する。
詠唱呪文みたいなものだ。
現代はこの方式が主流らしい。
メラゾ○マとか、単語形式は存在したらしいが廃れている。
そして文章構成について。
魔法は保有する源操因子によって、使えるものが違う。
これは適性というだけでなく、操作方法まで関わる。
焔の力を持っていても、それを体外に顕現させる因子を持ってなければ、焔を放つことが出来ない。
メラ○ーマを例えに使うと、
【炎】【球】【顕現】【放つ】【遠距離操作】など、
これだけの因子が必要となる。
でも、基本的に因子は個人に幾つも存在するので、持ち腐れになることは少ないらしい。
そして、因子の組み合わせにより、魔法は多様性を持つそうだ。
例えば、シンシアなら、【風】【顕現】【操作】【纏わせる】などの因子を持つが、遠距離に放つ因子は乏しく、近、中距離型になるらしい。
因子は、自分を構成する源創体、その源子を読み取ることでわかる。
意識を自分の内側に向けることで、読み取ることが出来る。
これをエティから、聞き、翻訳するまで時間がかかった。
しかし、
「なあ、因子っていうの、全くわかんねぇんだけど」
「うぅん、それはぁ、【ビジター】だから?構成要素が違うからぁ、因子そのものが違うかもぉ」
「じゃあ、俺は魔法をつかえないってのか!?」
「それはぁ、違うかなぁ。源子を操作出来てるしぃ、そのシントウ流とかいうのぉ、魔法を使ってるとしか思えないかなぁ」
ともすれば、うざいギャルみたいな語尾伸ばしだが、
このゆるふわ童顔おねえさん?にかかればあら不思議。
可愛さしか存在しない!
そして、この調子で説明された俺の疲労感。察してほしい……。
「やっぱりぃ、【ビジター】に対してぇ、情報不足ぅ、研究不足だからぁ、わからないかなぁ」
「そうか、まぁそいつは仕方ねぇか」
内心仕方なくなんて無いのだが、解んないんじゃどうしようもない。でもシントウ流が魔法か、それについて言及出来たのは良かったな。
「さぁてぇ?これからぁ、調べさせてもらってもぉ、いいですかぁ?」
「え?いや、それはそのぉ」
「調べればぁ、何か解るかもぉ。魔法のこととかもぉ」
「それなら、しゃーねぇーな。んで何を調べるって?」
「まずはぁ、触ってもいいですかぁ?身体がどう違うのか調べたいですぅ」
うわーお、研究者なのか、やっぱり。
そんじゃ、
「なら、俺もエティのこと触っても良いか?」
「そんなことくらいぃ、全然構いませんよぉ?それならぁ、触られた感触も調べられますねぇ。ならぁ、いっそのことぉ、一緒に触りっこしますかぁ?」
そんなもの決まっている。
「よっしゃああああ!!!!!今すぐ始めようぜぇぇぇ!!!」
「ダメに決まってるだろおぉぉ!!!」
「それはいけませんよリョーガ様」
シンシアの激しいツッコミ。
そして、ハンナの的確な押さえ込み。
この侍女、戦闘力あんだろこれ。
俺をサッと押さえ、今も動けねぇ。なんてこった。
「これは研究の為だぞ!何もやましいことなど無い!」
「やましいとか言ってる時点で有罪確定だ!」
「えぇー、此方としては何も不都合は無いのですがぁ」
「ほら!ああ言ってるよ!良いじゃねーかよぉ!」
「それでも、ダメなものはダメです」
ギチッと、完璧に関節取られてる。どこでこんな技能を。
「侍女のたしなみです」
たしなみこぇぇぇ。
そこに、
「近衛隊長!大変です、哨戒班から報告です。ここへ来る一団がモンスターに襲われてるそうです!」
伝令がやって来やがった。
「なに!行くぞリョーガ!」
「なにぃ、それじゃお触り天国はお預けか!」
「こちらです!」
くそぉ、俺の天国を奪った罪、万死に値する。
何処のモンスターだ!!!
こんちくしょぉぉぉぉ!!!!!
―――――――――
異世界のモンスターといえば、何を思い浮かべるだろうか。
俺ならまず、プルプルで青くて真っ赤な口に真ん丸のお目目、
ス○イム様を思い浮かべる。
そして有り得ないの代表格といえば。
あいつだと、俺は思うわけだ。
「西洋竜はねーよ、どう勝てと」
大きさはトラック2台分くらい。
翼は無いが、二足歩行。
鱗は茶色。何となく、地竜って感じ。
「彼奴は竜種だが、爬虫類からの進化体だ!強さは真竜とは較べるくもない」
「ならイケるか、でかいトカゲだっつーんなら」
「だが奴は強いぞ。まずは人命救助だ!みんな、私達が彼奴を引き受ける。近衛隊はモンスターを、衛兵達は救助だ!」
「私、たち?」
ったく、やるしかねぇか。
確かに、救助が先だろう。
キャラバンと称すれば良いだろうか。
女性が多く、男性は数人。なるほど、砦に来るグループか。
回りにはオオカミの獣型モンスター。
こいつらがドラゴンに先行して襲ってきたのか?
オオカミは近衛隊に任せて、俺達はドラゴンの気を引こう。
「この先に開けた場所がある、そこに誘導するぞ!」
「彼奴について、何か情報はないか!少しでも欲しい」
「二足歩行するタイプだ。動きはあまり速くないが、攻撃力は高く、鱗は硬い。なにより、まずい!避けろ!!!」
ドラゴンが息を吸い込む。
「え?まさか……」
「そのまさかだ!」
グアァァァ!!!ドダガガガ!!!!!
間一髪、避ける俺達。狙ってくれたお陰でキャラバンに被害なし。
「ブレスだとぉ!お約束すぎんだろぉぉこれぇぇ!!!」
「あれは大抵のドラゴンが保有する【衝撃を生む吐息】だ、彼奴はそれ以外の特技は無いが、かなり厄介だ」
「なんつー威力だ、こりゃ確かに場所を選ばねぇとな」
「まずは私が一当てするから、気を引いてくれ!」
「了解!」
瞬加で一足で近づき、
「シントウ流<鱗破旋>!」
捻りを加えた左パンチ、鱗を砕きにかかる。
しかし、
「かってぇなおい!」
「いや、効いている。よし、<風は剣に寄り添う>、そして<剣線に合わせ嵐は凝縮し荒れ狂う>!」
剣に纏わせた風。振り抜いた先にいるドラゴンに向かって強力な風が吹き荒れる!!!
「あれだけのでかい風でもピンピンしてんのか、なんつー硬い鱗だよ、ドラゴンってのは」
「その鱗に対し、パンチでヒビを入れた男が言うことか」
「いや、シンシアの風もキズつけてるけど」
「深度がまるで違うだろう。しかし、かなりの大技なんだがな。むっ、完全に気を引けた。誘導するぞ!」
「よっし!」
――――――
「まさか竜の鱗を拳で砕くとは。あんな者が居ると、聞いてないんだが。まぁ良い。どれだけ強くても、不意を突けば関係無い」
戦闘の様子を、男が見ていた。
いや、視ていた。
人間かどうか、疑うような遠方から。
――――――
「よし、ここなら大丈夫だ。反撃に移るぞリョーガ!」
「具体的な、作、戦はあんのか!?」
攻撃、ブレスを避けながら話す。
「ああ、ただ気が進まないのだがな」
作戦はこうだ。
俺がアタッカー、シンシアがターゲットを取り続ける。
ドラゴンに対し、攻撃力は俺の方が上、それはさっきの鱗破旋で証明済み。そして瞬加による瞬発機動力がある。
シンシアの魔法は近、中距離型であり、遠距離は強くない。
そして【風】故に、回避、防御力が高い。
風による加護で、平均機動力もある。
なので、
「攻撃は任せる、私は撹乱させよう!風の加護もつけるからな!」
「よし、この爬虫類さっさと倒すぞ!」
瞬加で接近、鱗破旋を放ちヒットアンドアウェイ。
シンシアからの風魔法強化で、攻撃力と速度が上がる。
そのシンシアは最も厄介なブレスを引き受ける。
風による加速で避け、避けられないときは
「<渦巻く風は障壁と成りて攻撃を拡散する>!」
強力な防御魔法で防ぐ。
あれは常時型ではなく一瞬型。
性能もその分良いそうだ。
消耗が大きく、連発出来ないのが弱点だと。
しかし、
「何発打ち込んだと思ってる。こっちがへばりそうだ」
「私も、保有源子力が少なくなってきているか」
この爬虫類の耐久性は桁外れだった。
流石は竜。蛇竜といえど、かなりのものだ。
被弾はしてないが、拳がやられてきてる。
シンシアも疲労が出てきている。
ここらが決め時だな。これ以上はジリ貧になる。
「シンシア、俺が1発ブレスを防ぐから、デカイのを食らわせてくれ」
「しかし、効くかどうかは……」
「威力より、足止めが目的だ。一撃食らわす時間が欲しい」
「…解った、やってみよう」
俺とシンシアが、ドラゴンから見て一直線になる。
これは本来悪手だ。しかしブレスを誘うなら最適となる。
そして、ブレスは来た!
「シントウ流<貫き>!」
シンシアの風砲弾を割ったこの技。
ツラヌクことを具現化させるこの技に、貫けないものはない!
なんてな、だけど出来る気がする。
そして、ほら。実際に貫けた!
俺は瞬加に入る。
「<我は剣を風と共に投擲する><剣に纏う風は荒れ我が敵に牙を向く>!」
二重詠唱。そこそこの高等テクニックだ。
本来は投剣に風を纏わせ、簡易爆弾とする魔法。
竜相手には効果は薄い。だが、足止めならば充分すぎる!
「おおおおお!!!!!シントウ流四大舞闘が1つ<颯舞>だ!」
颯舞はシントウ流の中でも、速度と連撃のある技だ。
そして打ち込む箇所は、これ迄鱗破旋を放った箇所。
則ち、皮膚が露見した場所を滅多うちにする!
正拳裏拳肘鉄膝撃前蹴踵落。
不可避怒涛の20連撃!!!!!
「ぜぇ、はぁ、はぁ、どうだっ、この野郎!」
「はぁ、やっぱり、凄いなリョーガは」
息も絶え絶え。だがきちんと打ち込んだ感触がある。
シンシアが俺に近付いてくる。
笑顔を青ざめさせながら。
「そんな、あれだけやって」
「!?」
しまった!?倒しきれて無いのか!
ドラゴンはフラフラと、しかしその獣特有の瞳には戦意をたぎらせる。
そして、息を吸い始める。
「まずい、源子が、もう」
シンシアの防御は見込めない。逃げも通用する段階じゃない。
貫きも、放てるかどうか。
そして、ドラゴンの溜めが、終了する。
(どうする、どうする!真正面からあのブレスを打ち破る術はない。かといって防ぐのも避けるのも無理だ。なら、ならどうする。編み出せ、思考を加速させて、この状況を打開させる閃きを。その為のシントウ流だろうが!!!)
タイムオーバー、西洋竜が咆哮する。
編み出した答えは、
「シントウ流<空転>」
ブレスが迫る。右手を突きだし、空気の固まりを掴んで捻る。
「うそっ……、ブレスが、曲がった、?」
シンシアが驚愕し、心なしかドラゴンも驚いてるかな。
編み出した答えは、真正面から対抗出来ないなら、真正面から対抗せずに受け流す。
手のひらでのベクトル操作。この世界では源子操作で良いのだろうか。
(はぁー、ビビったァァァ!成功して良かったぜ畜生)
空転は、シントウ流の中でもお気に入りの技であり、
元の世界でも有用だった数少ない技である。
こっちでも使えて良かった、マジで。
「さて、良いな?この爬虫類。今度こそ終わりだ!」
沸き上がる源子を脚にありったけ籠める。
「シントウ流<瞬加蹴討>!」
瞬加による加速、からのドロップキック!
瞬加の派生技の1つだ。
そして今度こそ、ドラゴンの身体が光に、粒子に、源子へと変わっていく。モンスターを倒した証。
「はぁー、勝ったー。異世界2日目で、死ぬかと思った」
「私も、あんなに彼奴が強いなんて」
ドラゴンを倒したことで、ようやく警戒を解ける。
そして、狙ったように、事実その隙を狙って銃弾は放たれる。
ドゥン!
「……え?」
「シンシアァァァァ!!!!!」
―――――――――
「ふん、あんたたちが悪いんだぜー?」