44話【ならばもっと見せてみろ。見せて、妾を魅せてみろ!fromリアトリス】
我ながら、よく生きてるな俺。
俺、リョーガは燃えた。触れたもの凡てを燃やし尽くす焔を食らって、燃えた。燃えるはずだった。
デカイ焔弾を食らって、とどめに沢山の焔弾を雨霰と撃ち込まれ、火柱が上がって止まらないくらいの終わりッぷりだった。
でも、それでも、俺は生きている。
今、思考している。多分地の文になっている。なら、俺はまだ生きているってことだ。時折幽霊的な人も喋る業界だけども、こうして考えて、喋って、息して、鼓動を感じて、そしてリネットの力を受けているってことは、生きている。
生きているなら、戦える。そういうこった。(どういうことだ?)
何故俺が生きているのか。何故燃やし尽くす焔を受けて身体を保っていられたのか。
それは俺の修得していた技、そしてシントウ流という俺自身を体現する流派の特性が要因だった。
―――
「どうやら、本当に生きているようだな。どうやった、どうやってだ? 妾の焔を完全に受けて、どうやって生きているッ…!」
「随分と興奮しているな。そんなにも以外だったか? 心をそこまで動かせる位に」
見て容易に分かる。距離が少し有ろうと、見て取れる。
「ああそうだ。以外だったとも。心に響いたとも。妾の、妾達の焔を受けて死んでいない。燃え尽きていない。そして、欠片も戦意を失っていない! これで心が動かないほど、妾は悟っても老成してもいないのでな!」
本気で、喜んでいる。本気で嬉しがっている。
「ここからは、本気を出して貰えると嬉しいね。俺は手加減するのは好きだけど、手加減されるのは基本的に嫌いなんでね」
「気付いていたか。そうだ。本気を出したのは最後の全方位型の焔壁のみ。それを破った時点で妾は感動を得られた。そこで終わりだと思った。だが、貴様は、リョーガはそこで終わらなかった! 勿論本気で行こう。投げやりな、生半の力ではない。本気の力を、妾がこの世に生を受けて初めて、全力を注ごうではないか!」
瞳を輝かせ、夢見る少女のように、だが行動はメルヘンから遠く離れたバイオレンス。
俺を全力で殺しにいくという、普通なら殺意や敵意から来る行動。しかし彼女は純粋な、何処までも純なる俺への好意で、殺しに来る。
それに対し、俺は戦意を滾らせたままで、そして笑みを浮かべる。
「さあ、始めよう。神域の力を、俺に見せてみろ!」
身体に走る、気が狂う程の激痛を悟られない程に完璧な、戦闘狂の笑みを。
―――
リアトリスは背から翼をはためかせる。
嘘を見抜くという、断罪の焔翼とは焔の色が違う。
「それが君の翼か。空に羽ばたくための、焔の翼。綺麗なものだな。大きな力を感じるが、それ以上に美しさを感じる。さながら、天使とでも評するのが合っているかな?」
翼の全長は、リアトリスが両腕を横に広げたくらい。それが1対、背ではためいている。
天使と評せるような、正しく翼。色は白ではなく焔の紅色。だが神々しさを感じることに変わりはない。
翼からは火の粉が零れ、在るだけで熱を放っている。
「その表現は正しくはない。この翼は鳥の因子を持つ妾に備わっているものだ。それが焔であるか、羽毛であるかの違いしかない。それに、天使と一緒にされては困る。妾は天使達のように破壊の権化ではない」
「……てことは天使居るの?」
「居るぞ? 神が居る世界、天も居る世界だ。ならば天使くらい居るに決まってるではないか」
「破壊の権化、なのか?」
「妾ではないが、大戦期の妾達が交戦した記憶が有る。天使は主の命に従って凡てを滅ぼす。妾の焔が児戯に見える程の、理不尽な強さだったそうだ」
「マジかー」
天使か、この世界本当に何でもありだな。だとすれば、なんでも有りなのだとすれば。
「妾がこの翼を出した理由、分かるか?」
「ああ。翼が有る。俺にも翼がある」
「随分とヘンテコな翼ではあるがな」
「ほっとけ。なら、後は簡単だ。空中戦、だろ?」
「それならば、周りにも被害が出ない。妾も本気が出せる」
「そして、それは俺も。というわけか。良いぜ、乗った」
「ならば急いで上がるとしよう。時間はあまりないのだろう?」
「まあな」
おっと、そいつは読まれてたか。まあいい。短期決戦なのは変わらない。リネットの支援が切れる迄の時間はあと数分。だが、ここからはまた高速戦になるはずだ。なら、関係ない。
―――
空中戦は、初めてじゃない。初めてじゃないが、初心者だ。
初めてじゃないだけで、経験などない。
だが、経験が無いのがなんだ。経験が僅かでも有るだけマシだ。
無いのならば、補填する。人が持つ、最大の力。時に無限にまで達する、究極の力。
【妄想力】。
空を飛ぶ妄想なんざ、幾らでもやっている。炎の刃を翼にして飛んでるのは大分予想外だが妄想内だ。
鳥の因子を持つと言っていた。人と鳥のハーフであると。
翼の扱いはあちらの方が圧倒的に上だろう。経験値も桁違いだろう。
でも、そんなもの関係ない。
一瞬一瞬で、成長してやる。
一瞬を極限まで凝縮して、相手を凌駕してやる。
この、妄想力で。
加速力を爆発的に増した炎刃翼で、大空へと舞う。
高度は精々100~120m。精々といったが凄い高さを感じる。高所恐怖症なら卒倒するかもな。
「それで、どう始めようか。一度妾は終わってしまっている。故にもう一度仕切り直したいところなのだ」
「そうか、なら俺はデカイ炎の帯を放つ。君は壁を放ってくれ」
「成る程。その激突が」
「ゴング変わりだ」
理解力はえーなー。厄介だな。でも、仲間にしたら好ましい。
おっと、やる前からこんな思考、フラグになっちまう。
切り替えよう。
「行くぜ」
「応とも」
両手に刀を構える。少し湾曲した曲刀。
斬る。それを意識させた形状。
腕を十字に構え、振りかぶり、振り抜く!
「<斬軌乃交帯炎>」
×字を描き、刀の軌跡を添って炎の帯が表れる。
炎の熱さも、密度も、大きさも。何もかもがスケールアップした斬撃。面積にしてサッカーコートを容易に埋める。
リアトリスも焔の壁を。斬軌乃帯よりも大きく。
激突する、炎の斬撃と焔の大壁。
空に衝突音を残し、対消滅。
その瞬間、互いに異なる翼を、だが互いに炎/焔を放つ翼を迸らせ、炎と焔が激突する。
―――
初手はお互いに剣撃。
俺は双刀、一撃よりも連撃に重きを置いた攻撃。
空中という足場が無いという制限の変わりに、地面が無いとい自由がある。
炎刃翼の噴射。強弱や角度により変化を作り、加速力を得ることで攻撃を繋げ続ける。
傍目から見れば無茶苦茶な動き。身体が上下左右前後にグルグルと回転しながら剣撃を放っている。
だがそれは全て計算の元生まれた動き。地面が無いため、地面に五体をぶつけずに済む分、アクロバティックさはより常軌を逸するものとなっていく。
加速力にものを言わせた空中挙動。だが、リアトリスは対応している。
手には、焔の剣が握られている。
厳密に言えば、それは剣ではない。だが形状から見れば、それはやはり剣だろう。
「そいつ、は! 障、壁を剣! 状にしたもの、か!」
舌を噛まないための訓練が、無駄にならず役に立っている。
かなりの速度にも関わらず、何故かこの世界では会話が成立する。
「まあ、そうだ。妾は大抵の武具を扱えるからの。貴様に合わせ、剣を象った」
リアトリスが剣を、障壁剣を使い俺の剣撃を弾いている。
障壁剣の形状は、細長い二等辺三角形といえばいいか。刀身と呼べる部分は細く、厚みは殆どない。しかし障壁は障壁。相当な硬度があり、壊れることはない。
「<颯舞>。起動」
ここで更に加速する。そして颯舞により、剣撃の技力を跳ね上げる。
ガガカガカガガガカガガカガンと、加速するごとに音の鳴る間隔は狭まっていく。
剣、刀そのものの技力は、俺の方が上らしい。
現に、障壁剣で俺の剣撃を防ぎきれなくなっている。
だが剣撃は通らない。
障壁が有るからだ。身体を覆うように展開している障壁。
何発と、何十発と、何百発斬り込んでも斬り込めない。
一瞬で修復しているようだ。これでは破れない。
防御を無視し、リアトリスが強引に斬り込んでくる。
ガキィンッと、鍔は障壁剣に無いが鍔迫り合いに。
「妾の剣も又、打ち合い、切り結んだ相手の剣を燃やし傷付けていくものだ。だが、貴様の刀には効いていないようだな」
「そうそう壊されてたまるかよ」
「だが、何度も打ち合えば、幾度と切り結べばいやでも分かる。ようやく分かったよ、貴様が生きている訳をな!」
「ほう? なら言ってみろよ。君の導きだした結論を」
キィインッと、お互いに弾き少し離れる。
「リョーガ、貴様は」
一息。
「貴様は妾の焔を盗んだな!」
―――
簡単なことだ。相手が神域の力を使うというならば、こちらもまた神域の力を使うしかない。
だが、今の俺に神域の力はないし、そもそも神域とはどういうものか、名前から類推は出来るが正確には掴めない。
ならば、神域だと分かっているものを使えばいい。
たとえそれが、相手の力だとしても。
俺は神盗流。神の力を盗む流派であり、そして神の力に到る流派でもある。
俺には発火能力はない。だが操炎能力はある。
それを用いて、強引に操っているのだ。
「だがそんなこと、出来るわけがない。他人の力を操るということは酷く難題だ。相手の許可がある場合でも難題だと言うのに、敵対する相手の力を操作するなど、狂気の沙汰だ」
相手の力を操る。それは簡単なことではないということは、誰でも分かるだろう。自分の力を操ることも難しいのに、他人の力を操るのは尋常ではない。しかも自分に敵対するのなら尚更だ。
単にベクトルを操るだけならば。合気道のように、相手の力を流したり利用するものもある。だがそれは、相手の力をあくまで流すだけ。あくまでも、間接的にしか使えない。
相手の技や魔法を操るには、相手の制御能力を圧倒的に上回るしかない。多少強い程度では意味がない。
相手の魔法を操る魔法。といった特殊な例を除き。単純な操作能力、制御能力だけで相手の魔法を乗っとることは、それこそレベルが一回りも二回りも離れてなければ出来ない芸当だ。
加えて。
「妾の焔は神域。曲がりなりにも神の焔を謳っている。人間の身で操ることなど、出来るわけがない」
そう。出来るわけがない。そもそも相手の方が強いのだ。ライターの炎を操る人間が、いきなり神の焔を。それも相手の攻撃である焔を操ろうなどとは、恐れ多いにも程がある。
「それが出来るからこそ、神盗流なんだよ」
代償が無いわけではない。寧ろ代償は現在進行形で俺の身体を蝕んでいる。
炎を操るだけなら、反動はほとんど無くなってきた。
炎の扱い方を心得てきて、尚且つ操炎能力が熟練してきているため、軽い火傷で済むレベルに留まっている。
だが、神域の焔は文字通り、いや文字以上に桁が違う。
気を抜けばその一瞬で燃え落ちる。それがたとえ刹那以下の時間だとしても関係ない。俺の身体のありとあらゆる箇所から、全ての痛覚が俺に狂う程の信号を送ってくる。
気が狂い、気を飛ばすことすら出来ないほどの痛みが、骨の髄まで駆け抜けている。
「だがこれで合点がいった。妾の焔に耐えたのは、そういう理屈か。その代償に、死を逃れるという代償に、死以上の痛みを感じているはずだ。よく、常態でいられるな」
「ハッ。こんな代償くらい、なんでもねぇ。死なねぇなら安いものだ。それに、君と打ち合えるぐらいになっている。君から盗んだ焔で、君を越えることが出来るのなら、戦うことが出来るのなら! どれだけの痛みにだって耐え抜いてやるよ」
まっ、カッコつけたは良いが、気が狂う寸前なのは変わらねぇ。
だが、気が狂いそうでも、精神をどれだけ圧迫されていても、思考に翳りは一切みられない。
思考を重ねるうち、気付いたことがある。
炎の出力が上がっている。爆発的に上がっているのは分かる。焔を盗み、取り込んだのだ。取り込んで、身を焼きながら、回復で拮抗するという常軌を逸する循環で、押さえ付けているのだ。
炎の力が強くなるのは理解できる。
だが、何故身体能力が上がっている?
スピードも、炎の出力アップかとも思ったが瞬時にその判断は捨てた。
全てのスピードが、炎に由来しないスピードまでもが変わっている。それも数倍どころではなく、数十倍以上。
パワーも増し、テクニックすら上昇している。経験が不可欠な分野の能力ですら、だ。
源子の出力も上がっている。
何故だ。何故上がっているんだ?
俺は焔を取り込んだ。しかし、【覚醒】を経た訳ではない。
それとは違う感覚。だが、分からない。何か掴めそうだが、掴めない。ピースが足りないのか、或いは単純に考察力が足りないのか。
だが、それは今はどうでもいいことだ。
今重要なのは、戦えるということ。
リアトリスと互角に、戦うことが可能であるということ。
リネットの支援限界まで、1分を切った。
「そうか。既に、狂っているのだな。………面白い。そうでなくてはな。来い。妾の障壁。この障壁は勝利の力の顕現。超えてみせろ。貴様が、貴様のシントウ流とやらが、神へと到ると謳うならば!」
「ああ。やってやるさ!」
―――
炎刃翼をフルブースト。双刀の炎を集束。遠距離系の攻撃は無意味。
至近距離で叩き込み、あの障壁を破らなければならない。
瞬加も併用し、再接近。
双刀の嵐撃。やることはさっきと基本は同じ。
リアトリスは対応を、変えてきた。
障壁剣は防御のみに。剣技では敵わないと見て、小太刀状に守勢。
攻撃は焔弾。だが密度が決定的に違う。
数は30~40。それが、全方向から、緩急をつけて迫り来る。
それを俺は、斬り、逸らし、時には蹴り飛ばして防ぐ。
これ以上ダメージ食らったら、ホントに意識が飛んじまう。
100撃以上は、障壁に加えた。だが破れない。
それは予想済み。故に、攻撃法を変える。
「<砕牙>及び<崩牙>」
右手の刀は砕牙を。突き技にして破壊技。打点を基点に、破壊の力を叩き込む。
左手の刀は崩牙を。突き技にして崩し技。打点を基点に、障壁に綻びを与える。
結果は近いが、根本から違う似て非なる技。
効果は出た。砕牙はヒビを。崩牙は揺らぎを。
そしてすぐに修復。だが、効果はあった。リアトリスに表情にも、驚きと焦り。そして更なる期待が浮かんでいる。
リアトリスもまた戦法を変える。
単なる焔弾から、爆焔弾に。着弾と共に爆破。任意にて爆破。
それを俺は、風を用い、また加速と減速のチェンジオブペースで避ける。
そしてもう1つ。
「障壁!? 貴様、よくよく人の力や技を盗む男よな!」
仲間のレイピア使いから、同意の念が発せられた気もする。
そう、俺も障壁を張る。俺が前から使えたのは、<掌壁>という、手のひらにしか効果のない小さなもの。
それを、見よう見まねでリアトリスの障壁のように全身に広げた。
<装壁>とでも名付けるか。
「<砕牙連突>!」
双刀から砕牙を。それも連撃で。実は名前がヤバイかなーと思いつつ気に入ってしまったので使っている、この便利技。
計20発の砕牙は、ヒビだけで、やはり貫けない。
数ではなく、力か。
「良いぞ。良いぞ良いぞ良いぞ! もっとだ。もっと見せて、魅せてみろ!」
リアトリスの攻撃も、よりを熱を増して苛烈になる。
更に加速。加えて瞬連加を起動。この状況でやれば自分の首を絞めることになる行為だが、首が落ちるよりはマシだ。
『リョーガ君! もう本当に限界が近いよ!』
加速を加える。なんだか2重表現だ。気にしてもしゃあない。こんな状況下。
「<斬軌乃帯炎>!」
障壁よりも更に大きく、高密度且つ巨大な炎を。
「大きさはともかく、この程度の炎では、障壁を焼くに能わんぞ!」
知ってるさ。焼く為じゃない。燃やす為じゃない。
目的は、
「ムッ…!? 何処へ!?」
目眩ましだ。
この隙に上空へ。
「……ッ! 上か!」
下へと、リアトリス目掛けて急加速。
重力も味方につけ、炎刃翼を爆発させる。
「<双刃乃突風>」
突撃技を起動。この技は起動時、前方に風と衝撃波の幕を生じる。この幕は、攻撃になり、また防御幕としても機能する!
リアトリスの焔弾による絨毯爆撃。それを全て、突風となりて退ける。
再接近にして最接近。
「食らえッ!」
腕を引き、肘を曲げ、力を貯めて、放つ!
「<双穿崩牙>!」
ガキィンンンン!!!
刀が、否、俺の牙が障壁に突き立たる。立っただけで、貫けない。
だがそれも、
「残念だった、なァ!?」
「予想済みだ! <砕牙>!」
速度を叩き込んだ為、身体の速度は落ちている。それを利用して、腕をもう一度引き、重力落下に合わせ、突き立つ刀の柄尻に、掌底を叩き込んだ! 技を発動するために!
バリィィィイイイインンンン!!!!!
障壁は、砕け散る。
追撃。刀を、掴む。
掴むその手は、俺のではない!
「やはり、残念だったな」
その手で、刀を掴んでいた。両手で、しっかりと、刀の先部分を、血を滴らせながら!
「だが、傷をつけたことは誇って良いぞ。だが、終わりだ!」
焔弾が殺到する。
それは、焔を盗んだ時と似た構図。
あのときは、最初は俺の炎で対抗しようとしたが、無理だと悟った。そして、どうにもならないと気づき、どうにもならないのなら、どうにかすれば良いと。
神の焔だかなんだが知らねぇが、勝手に人を燃やすなと。全力で挑んだ。決死の行動は、袖を焼き払ったが、それ以上は燃えなかった。取り込むことで、存在を保つのに成功した。
だがそれは、リアトリスがまだ加減し、焔が弱かったから出来たこと。
本気の本気で、一瞬の猶予もなく、消し炭にする攻撃。
刀も取られ、残りは背の翼。再精製の時間など、ありはしない。
目の前は、暗すぎるのでもなく、明るすぎるでもない。
視界全ては炎一色。
「楽しかった。本当に、心の底から楽しかったぞ、リョーガ」
…
………
………………
……………………だから、
「勝手に人を殺すな!」
「何ッ!? まだ、耐えられるのか!」
全ての焔が、俺の右手に集束していく。
「妾が今攻撃した、焔全てを、操ったというのか…!?」
「神到流<神討滅却>。終わるのは、リアトリス、君の方だ!」
心頭滅却することで、全ての炎に耐える力を得、全ての炎を集約することで、神討滅却へと到る、シントウ流の真骨頂。
右手は貫き手に。
左腕を前に出し半身に。
そして、放つ。神をも殺す焔を一点に凝集した貫き手を。
リアトリスの首筋目掛け。
「ルゥゥウアアアアアア!!!!!!!」
雄叫びを上げ、腕を前に打ち抜く。
そして俺の右手は、
焔よりも紅く明く、そして赤い、
純血で、穢れ行く。




