40話【出番が少ないからなー。しっかり活躍しておかねーとfromジン】
{どーも、ジンです。
リョーガと行動を共にしてないのでオレに視点が移りました。
ここまで読んでくれた読者であれば分かってくださるだろう。
オレに視点が移ると言うことは、リョーガの補足する回だと。}
って、なんだこれ。何故こんな立て札が山道に?
つい読んでしまった。
「なぁティー。この立て札はなんだー?」
「どうしたの?ジン。立て札など何処にもないけど」
「あれ!?」
どういうことだ?
まぁ気にしても仕方ない。きっと何処かの作者のアホな描写だろう。
ガツン!
「ってぇ!」
「ジン!大丈夫?」
「いや、なんとか平気だが」
何故いきなり落石が。
山道だからとはいえ、崖沿いでもねーのに。
しかも警戒してたのに。
「取り合えず、はい薬。塗った方が良いよ」
「ありがとなティー」
――――――
ティーがチラチラと後ろを見ている。
他の女の子達も、同様だ。いや、シンシアは何か考え事して、ふと後ろを見る感じか。
「大丈夫だ。リョーガは気負いとかもない、ラフな状態だった。なら、大丈夫だ。寧ろサシで戦いたいんだろう」
「ジンは、リョーガさんのことを良く理解してるんだね」
「まー、なっがい付き合いだからなー」
むっ、霧がどんどん濃くなっている。
「急ごう。リョーガが追い付く前に、他の邪魔な奴を払うぞ」
全員頷く。
「フォーメーションを確認しておくぜー。オレが後衛からの射撃及び指揮。ティーは遊撃、オレと主に組んでくれ。シンシアは前衛、守備重視。マーヴェルは中衛、使役精霊で攻防を、マーヴェル本人はサポート重視。ルイ君は前衛、攻撃重視。ハンナさんはすぐに何処かに逃げるか隠れるかしてくれ」
全員また頷く。
大体こんな感じ良いはずだ。
リョーガ不在時には臨時で俺が指揮を執ることになる。
あまり得意じゃないんだがな、上の立場って。
それに幾つかの心配事がある。
シンシアの様子が少し変だ。リョーガも気にかけてたし、何もないなら良いんだが、集中力を欠いてるしな。
そして、一番の心配事が、ルイだ。
オレはまだ、ルイのことを信用出来てない。
リョーガは実際に戦って、語りあってたから、信頼出来る何かを見つけているようだが、オレはまだだな。
この劇団や宝塚にいそうなカッコよさげなところは良いんだが、何か違和感があるというか。
何なんだろう。
気にしても、分かるわけではないが、気になっちまうな。
「しかし霧が濃いな。あまり標高も高くないってのに」
「この濃さは確かにおかしい。けど、ないと言うわけじゃないからね」
ティーはこの辺の地理を総括して把握している。
濃すぎるが、異常かどうかは微妙なのか。
霧と靄の違いは1㎞先が見えるかどうからしいのだが、30mも見渡せねーぞ。
「……騒いでる」
「マーヴェルちゃん、どうかしたのか?」
「精霊達が、騒いでる。何かが起きようと、いや起き始めてる」
「?この霧は、精霊が関係してるのか?」
「(こくんっ)」
精霊族のマーヴェルは精霊と話せるらしい。
基本的にリョーガにしか心を開いておらず、オレ達他のメンバーには、多少開いてる程度だ。
しかし、霧に関係有るとはな。精霊は万物に宿るものらしいから、それも当然、なのか?
一般人のオレにはよくわからないな。
エティさんは研究職だから何か知ってるかもしれないし、リョーガは何か分かってるみたいだし。今度聞いてみるかな。
少し早足で山頂に急ぐ。標高はあまり高くないが、道は整備されてないし霧が濃いしで中々進めない。
霧と地面、そして落石に気を付けるため上方にも。
全方位警戒と言えば聞こえは良いが、実際には難しく全体的に集中力を欠いてしまう。
それでも、勘が反応した。
リョーガがオレの勘はかなり優れていると、野性的な勘が研ぎ澄まされていると言っていた。
(なんだ?何か、居るのか……………!?)
だけど、勘だけでは足りないとも言われたっけな。
最初に気付いたのはマーヴェルだった。
「…!?敵襲!」
「気を付けろ!」
次に気付いたのはシンシア、ぼけーっとしてるように見えてきちんと警戒していたようだ。
全員が、マーヴェルの指差す前方上空を凝視、す、る!?
「<風精は楯となりて我らを守護する>!」
「<風は渦を巻き我らに堅固なる防壁を与える>!」
マーヴェルが風の精霊を使役して風の盾をパーティー全体を護るように幾つも張り出す。
シンシアが攻撃を弾き、敵を寄せ付けない風のヴェールを展開する。
霧を弾け飛ばしながら、それは、放たれた。
「グヴゥゥ、ガァァァァァアアアア!!!!!」
―――――
マーヴェルの張った風の楯は、一瞬それを止めたものの、粉々に。
シンシアの展開する風のヴェールも、一瞬抗したが、消し飛んでしまう。
一瞬と一瞬、合わせて二瞬。
「<カミカゼ>!」
その間にルイが動き、あらゆる攻撃を払うというカミカゼを使用。
なんとかそれを防ぐ。
それそれ言ってたそれ。
それは、
「グギャアアアアア!!!」
「竜、だと……!!!」
竜の代表的な技、吐息
竜種の殆どが使えるという衝撃生む吐息。
その威力は、竜とは高次の存在であると頷けるほど。
「翼、飛竜!?なんでこんなところに飛竜が居るの!?」
大きさは小型飛行機程。一狩り行こうぜで狩りに行くと会えそうな感じ。
形は西洋竜、トカゲから進化したタイプ。体色は赤黒い。
どういうわけだか、完全にオレ達に敵意むき出し。誰だヘイト値上げたの。
とにかく、
「フォーメーションを取れ!防御、回避を主体。ハンナさんは逃げるか隠れるかしてくれ!」
「もういないぞ!」
「はやっ!」
オレはガンズ・カーニバルを発動。
狙撃銃を造りだし構える。宙空に16丁の拳銃を待機させる。
ティーはベルトから柄を取りだし、武器部分を生成する。
造り出すのは弓、持ち手を中心とし上下に源子が伸び形を形成する。
ティーは柄、或いは媒介となる持ち手があれば、様々な武器の形に出来る。
それは近接武器に止まらない。銃は無理なようだが、弓くらいなら造れるし、矢は源子のみで形成出来る。
それぞれの武器の練度や硬度、強さはそこそこなものの、多様な武器を造り出せるというのは結構使い勝手が良い。
マーヴェルの回りに精霊達が形を成し、集まり始める。
種類は様々だな。オレが見たことあるのは炎、水、電気の精霊だけだが、もっともっと種類があるらしい。
形は騎士型だな。マーヴェルは人型か獣型をとらせるのが透きだとリョーガが言っていた。
シンシアは愛用のレイピアを構える。
なんだか、構えがリョーガに似てきたな。
ルイは構えるだけだが、技のレパートリーが多いし元々無手だしな。
地形は、よし。運が良いのかな。
山だが、ここはぽっかり広くなっていて、回りは土の壁。崖はないから落ちる心配はない。
逆に言えば囲まれて逃げ場が後ろか前しかないが、この飛竜は倒す、逃げる道はない。
飛竜、翼は大きく、はためく度に霧が動く。
牙がきらめくアギト。ぶっとい腕と凶悪なる爪。
その尾は柔軟にして強靭。鱗は赤黒く、光沢を持ち、その硬度を主張する。
そして両の眼窩に収まる、蹂躙者たる凶暴な眼。
濃い霧の中でも、その双眸は光を失うことはない。
ファーストアタックは取られちまった。いきなりおそいかかってきた、ってやつだな。だがそれは無効化した。
さぁ、始めようか。反撃、開始!
ドォォォンンンン!!!!!
―――――
開幕の号砲代わりに狙撃銃からレールガンを放つ。
狙撃銃は銃身が長いから、加速距離を長く持てる。故に、電磁による加速力は通常の拳銃より二乗倍だ。
バツンッンンン!!!
額にぶち当たったが、大したダメージなし。
ってあれ?ヘイト値上がっちゃった?
飛竜がアギトを大きく開け、霧ごと大気を吸い…、
「散開!」
「ガァァァァァアアアア!(バアァァァ)」
オレはティーを抱えつつ、爆発弾を使って爆裂ダッシュ。
他の皆もそれぞれの技でダッシュし散開。
さっきまでオレ達が居た場所に、業火がちらついている。
「炎のブレスだと」
「燃え上がる吐息だよジン。あの飛竜、多分鱗からして炎属性だ」
ティーはオレに抱えられつつ、矢を射放つ。
しかし矢は鱗に通じず、弾かれる。少し鱗を削れた程度だ。
「鱗の色って。そのまんまじゃねーかよー」
宙空の16丁が火を吹き、オレが今使える属性の弾丸を浴びせる。
マーヴェルは精霊騎士を突撃させる。半分を攻撃に、半分を護衛に残している。数体をオレ達皆の盾として配置。
シンシアは風魔法で攻撃。遠距離魔法は不得手らしいが、それでも風の砲弾や斬撃を放つ。
ルイもまた、遠距離技で攻撃。多様な属性で攻撃する。
全員に意図が伝わってるな。こいつには、どの属性が効くのかという意図が。
空を自在に飛んでいるから、攻撃も中々当たらない。
しかし何故かあまり高くは飛ばないので、射程そのものは届いている。
放ってくるブレス、インパクトとバーニングを時には避け、時には防ぎ、時にはしのぎ、チャンスを探す。
不意打ちだったから防御が甘くなっただけで、きちんと対応すれば防御は出来るようだ。
真正面から受けず角度を作り受け流したり、ブレスの瞬間に強攻撃で攻撃を逸らしたり。
しかしキツいな。飛竜の攻撃は現在、上空からのブレス、バーニングとインパクトのみ。きちんと対応すれば被弾はしない。
しかし、防御力が高すぎる。
赤黒い鱗が攻撃を殆ど防いでしまう。
打撃点を集中して、なんとか通るくらいだ。
目だとか、飛膜も狙ってみたが、どうも防性フィールドが張ってあるようで全て燃え落ちてしまう。
飛竜の属性は炎だが、炎に絶対的に強いわけではないようだ。
全般的に対属性値はあり、どれもそこそこ以下の効果。
上空からブレスを放つだけだが、避けるのが上手く、また隙が小さく大技を放てない。
防御に人材を割かなければいけない分、攻撃役も減る。
主に攻撃をオレとティーが。
マーヴェルとシンシアが防御を担当し、ルイが遊撃。
ルイは飛行能力を持つが、飛行時間に限りがあるし、飛行中は使える技が少なくなるため、勝機を見いだすまでは使わない。
まだまだ限界は来ないが、リョーガの源子供給が無いのはかなりキツいな。
修行・訓練の時に、源子供給をしないメニューの方が多かったのはこれが狙いか。
さて、何かないか。何か変化が。
いや、待つんじゃない。起こすんだ、変化を。
探せ、変化点を。変化させる始点を。
スコープを造る。スコープを覗くのではない。スコープから通る光を、映像を、直接頭に繋げる。
スコープを覗く余裕などない。スコープから得られる視覚情報を、直接頭に送る。そして、スコープは宙空で展開している銃にも。
視覚情報もフィードバック。
グゥゥゥ、頭が、割れそうだ。
これはキツすぎる。処理能力がまるで足りないな。
(だが、1つ見えたぞ。飛竜、この戦いの変化点を)
「ティー、数秒任せた」
「分かった!」
ティーが弓に矢をつかえ、思いきり引き絞る。
源子を全力で籠めたパワーショット。
ぶっとい左腕に被弾。
ダメージはあまり無いが、気を引くことは出来る。
それを見たルイも攻撃を放つ。
手に、源子を黄色く彩りながら集束し形を造っていく。
あれ?構えが、あれは撃つのではなく、投げる?
「<ブル・ショット>!」
黄色の軌跡を描きながら、飛竜に迫る。
あれは、ダーツの矢か?名称的に。いや、錐?
高速で迫り、左腕に突き刺さる。鱗を貫通している!
しかも、凍り始めた!範囲は広くないが、深く刺さり、ガッチリ凍っている。
何故?ブルショットでなんであんな効果が。
(リョーガ's厨二データベース。
ダーツ用語では、ど真ん中のブルのみを当て続けるルール。
カクテルとしては、酒とスープを混ぜた異色中の異色のカクテルで、シェイクし氷の入ったグラスに入れたりする。
また航空機、Tu-22のコードネーム、その形状から別名シーラ、錐と呼ばれている。
合わせて考えると、命中精度の高い、フリーズの追加効果のある錐/ダーツといったところだろう)
なんだろう。何も知らないのに分からないのに、分かった気がしてきた。
さて、一瞬の時間は稼げたかな。
構える。64倍式狙撃銃。
通常時よりも、銃身は長く太く、そして強く。
思いきり力を注ぎ込んだ弾丸を籠める。
そして、電磁をありったけ。電磁の力はこれからのオレに確実に必要になると思って、集中的に修行した。
スコープを直接覗きこむ。直接頭に送るキャパなんて残ってない。
狙う。狙う。狙う。
シンシアが不得手ながらも、大風を起こし、飛竜の動きをほんの僅かでも絡めとる。
マーヴェルが飛竜の顔面、目玉付近で電気精霊をスパークさせ視界を眩ませる。
狙う。狙う。狙う。
「<電磁加速式炎弾狙撃>」
音を置き去りにした弾丸は、飛竜の左腕に、今まで攻撃を集中したその場所に吸い込まれる。
凍りついた腕に、劫火の炎弾が直撃する。
温度差が生まれ、脆くなった腕は血飛沫すら出ず破壊される。
破壊範囲は狭いが、かなりのダメージだろう。
眼の色を変えて、燃え上がる吐息をオレに狙い定めて飛竜は放つ。
大技直後で硬直中。だが、それは読んでいる。たとえ大ダメージでも、竜をうたうならば怯むどころか凶暴性を増すだろうと。
ティーの武器を弓から鞭状に変形させ、オレの腰に巻かせてある。
それを引っ張ることで即脱出。
ついでに靴裏に仕込んでおいた指向性爆発弾を起爆させ更に加速。
ふぅ、なんとか避けられた。
だけど、オレの狙いは左腕を壊すことじゃない。
狙撃銃に電磁をリチャージ。
さっきの1発で疲労が来始めてるが、気合いでねじ伏せる。
完全にオレを最大目標に定めた飛竜はブレスを放ちまくる。
くっ、避けるのに集中しなくちゃならないし、狙撃銃に創造リソースを割いてるから銃は造れない。
ティーが飛竜に睨まれない程度に、しかし確実にオレを振り回し安全圏に退避させる。
指向性爆発弾の爆風で加速と姿勢制御。
だが、リチャージ速度がかなり遅くなる。
焦っている内心を悟られたか、執拗にオレを狙ってくる。
シンシアが風で攻撃を加えたり、ブレスを逸らしたりしているがまるで気にかけてない。
マーヴェルもスピリチュアル・ドミニオン、槍を持つ多属性な騎兵隊を突撃させて、赤黒の鱗を貫通に到ってるが、それでもオレ狙いは変わらない。
ブレス。避ける。ブレス。避ける。ブレス!避ける!!!
「グガァァァ!!!」
業を煮やした飛竜が、範囲を広げた火炎ブレス。
「くっ」
避けきれない!爆風による弾幕を張り、少しでも防御を図る。
チャンスと見た飛竜は大きく息を吸い込み、集中型のブレスを放とうとする。
そう、放とうと、した。
「<スカイ・ダイビング>・キィーーーーーック!!!!!」
「グギャァァァアアア!!!」
ルイが先に攻撃してなければ、な。
オレを狙わせて、その隙に霧に乗じてホワイトウイングで離陸。
上空からスカイダイビングで急速落下、青い軌跡が槍のように飛竜の背中に激突、
まるで予期しておらず、またルイのフルパワー、かなりの大ダメージ。
こればかりは飛竜もルイに狙いを変更。
飛竜がダメージから立ち直る一瞬の間に、ルイは白い翼をはためかせ上空へ。
おい飛竜、そんな上を向いたら、喉元ががら空きだぜ。
狙撃銃に電磁をリチャージ。
本来ならまだ時間がかかる。
危機を感じ取ったか、飛竜がオレに向き直る。
でも遅い、既にリチャージ済み。
狙いも、既に定めている。
連チャンはキツいが、やってやるさ。
「<電磁加速式貫通爆破狙撃>」
長い銃身を進むごとに、電磁によって加速を繰り返す弾丸。
放たれた時、音を置き去りに、空気すら貫通し、飛竜の喉元。
そう、竜に必ず存在するもの。
それは、
「逆鱗ってのは、弱点でもあるよなー?」
触れればキレる逆鱗。しかし、何故キレるのか。前にリョーガは考察を重ねていた。
神聖の高い龍はともかく、粗暴な竜の逆鱗は弱点になる。
何故触るだけで殺すほどキレるのか。
それは、そこに神経が集中しているからではないのか、と。
結果はこうだ。
逆鱗に触れ、即粉砕しながら貫通し、強靭な飛竜の身体さえも突き通る。
そして、貫通した端から爆発し続ける。
ペネトレイト+。ようやく、複数の属性の弾丸が実用レベルに達したんだ。
一瞬、飛竜はビクンッと仰け反る。
直後、翼の動きはなくなり、ゆっくりと、そして加速しながら地面に向かう。
それは下降ではなく落下。
地表に、激突。
竜は、動かない。その瞳は開かれていた。
強烈な圧迫感を与える双眸。光は、消えていた。
―――――
ドクンドクンと、心臓が脈を打つ。
やった、のか。
「やった、やったよジン!」
「ふぅ、やったねジン君。見事な狙撃だったよ」
「やるじゃないか、ジン」
「………(こくっ)」
皆が、寄ってくる。
竜に変化はない。ほんとに、やったみたいだな。
「皆、ありがとなー。あんな適当な指示を聞いてくれて」
「あれで正しいと思ったからね。実際に上手くいったし、ジン君、君にも指揮の才能はあるみたいだね」
「ジンの言うことなら、勿論聞くよ!」
「まぁ、少し詰めの甘いところもあったが結果オーライだろう」
「………」
シンシアは少しキツいな。それも仕方ないか、実際にギリギリだったし。
マーヴェルは、シンシアに同意みたいだな。
ティーの意見はあまり参考にならない。
ルイは褒めてくれてるみたいだけど、オレは信頼して貰ってるのかな?されてると良いな。信頼しやすくなるし、貴重な男友達だし…?あれ何か引っ掛かる、なんだろ。
この戦闘の中で一番活躍したのはマーヴェルだ。
パーティーの中で、オレの指示を精霊を通じて届けたり、全員のバックアップをしていた。
オレの狙撃銃の電磁リチャージを早めたのも、マーヴェルのお陰だ。電気精霊を投入して、強引に電磁をリチャージした。
マーヴェルは攻撃に精力を傾ければ、相当な攻撃力を発揮しただろうけど、今回はサポートに回ってもらった。
サポート力もかなり高いからな。被弾時のヒールも来たし。
「ねぇジン」
「どうかしたかー?ティー」
「なんで警戒を解いてないの?」
「ここは戦場だぜー?気は抜けねーさ」
「でも、気が入りすぎじゃない?狙撃銃もそのままだし」
「あれ?ほんとだ。なんで?」
「いや、アタシに聞かれても」
―――――
霧に紛れている。
誰も、気づかない。
エルフであり、知覚力が高く、尚且つ精霊に情報を貰っているマーヴェルでさえ気付かない程に紛れている。
それは、その影は、その人影は、魔人だった。
杖を持った、魔人だった。
一瞬、杖が光った。
魔人は、倒れた。まるで、命の全てを使いきったが如く。
―――――
(なんでオレは、オレの身体は警戒を、最大級の警戒を解いてない。何故、ここまでオレは嫌な予感を感じている…!?)
もう一度、飛竜に目を向ける。
変わっていない。圧迫感のある、その双眸にも変化はない。
変化はない?なら何故、……何故、
「なんで光が輝いてんだよ!」
狙撃銃を向け、通常弾でもなんでもいい、とにかく放つ。
ドン!
額に、埋まる。埋まる!?何故埋まる!固いはずだろう!
なんで血が吹き出ているんだ!
「どうしたのジン!飛竜はもう……!!?」
額から、銃弾が出てくる。まるで再生のため異物が弾かれたが如く。
「そん、な」
額から血が流れていたはずなのに、血さえ止まっている。いや、傷すらなくなっているじゃないか!
「飛竜が、甦った!?」
「GIIIiiiii、GYAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
まだ、竜の驚異は、去っていない。




