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真実の中の虚構世界《フィクショニア》  作者: AKIRA SONJO
第2章【首都奪還プロジェクト、女の子が最優先です】
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37話【神話って、この世界が神話みたいなものじゃねーかなーfromジン】

春の3月、2の日。


近衛隊を鍛える修行を始めて4日。

レゼルという謎の情報屋からもたらされた新キャラ枠の情報の裏付けが完了した。

あまり、望ましく無い方向で。


「5人中、4人が居なかった、だと?」

「はい。確認したときには、居ませんでした。いえ、襲われていたという方が正しいと思います」

「何時襲われたか、予測はつくか?」

「情報屋が接触してきた、1日か2日後かと」

「マジか」


つまり、あの情報は、危険が迫っているという通告でもあったわけか。


「モンスター、いや、魔人か?」

「魔人かと。統率した襲いかたの形跡があったので」


俺、リョーガは軽く頭を抱えたくなった。


信用の出来ない、初顔の情報屋の裏付け操作は、ミスだったか?

いや、もしかしたら、襲われることを込みで、5人も教えたのか?

答えは出ないが、情報の5人に特徴があったからな。


5人中、4人は人間、ただし種族が違う。

全員、獣人というのが近いな。猫耳とか犬耳とかだった。

そして、その4人が消えている。

襲われて、殺されたか、連れ去られたか、逃げ延びたか。

多分、殺されはしないだろう。

ヴェルの時は、誘拐しに来たことを確認している。

力を持つものを、手当たり次第に連れていってるのか。

そして最後の1人。


【シグナル・コードに記されしリバティに縛られた少女】


と書かれている。

他の4人は、鮮明な画像があった。

しかし、この娘の画像は荒かったし、何より名前の記述がなかった。

情報が無かったのか。或いは、意図的に伏せたか。

となると、彼奴がメインに据えたのは、この娘だろうか。

この娘を仲間に引き入れて欲しい理由があったのか?


まず、あまりにも少ない情報を精査する。

まずはシグナル・コード。

基本的な、翻訳の仕方でも何通りもある。暗号・暗号とかは除外するとしても。

記されし、とあるから、文字のあるもの。書き込めるもの。

例えば歴史書。もしくは、世界の根幹的な何か、みたいな。

んー、情報少なっ!これについての考察は一時停止。

でも、残しておく。このワードは、確実にメインストーリーに関わってくるはずだ。

そして、リバティに縛られた、だ。

リバティとは、自由のこと。それも、戦うことで得られる、掴み取った自由、という面が強い。

しかし、自由に縛られるとは、変だな。

リバティには、別の意味があるのか。

もしくは、リバティという読み。リバティと発音する以外に、レバティだとかリビティとか、何か意味があるのだろうか。

考えても、答えが出ない。

下手な考え休むに似たり。生産の無い思考は無駄か。

ふむ。皆に相談しようか。


―――――


「リバティの少女ですと!?そんな大物がこのフェイクライナに居たとは」


1発でヒットした。

俺は今、首脳陣とでも言えば良いのか。

リネット、せリア、オリヴィア、ジェイクの居る所までやって来た。

一段落着いたところを見計らったので、邪魔すぎないはずだ。

んで、聞いてみたら、ジェイクさんに反応あり。


「シグナル・コードについては存じませんが、リバティという名には聞き覚えがありますな」

「へぇ。説明してくれる?」

「ええ、勿論。リョーガ殿、過去の大戦についてはご存じですかな?」

「大戦?いや、聞いたことねぇな」

「数百年も前のこと、人々の悪意が高まり、あらゆる国々が戦争を起こしました。二度にも渡って。悪意の収束と共に収まったそうですが、とても悲惨な時代だったそうで」


過去2回の大戦、ねぇ。

心当たりは無茶苦茶有るんだが、関係無いわな。

第一、時代が合わねぇ。


「んで、その大戦時に活躍したとか?」

「察しが良いですな。その戦争は、人間だけでなく、あらゆる種族にも及んだとか。その時、リバティという名を持つものがとある人間と手を組み、戦争を動かした」


一息。


「リバティの名を持つものが放った一撃は、平野に広がる何万の軍勢を、無慈悲に燃やし尽くしたとか」

「わーお」

「これは、実在せし伝説(リアル・レジェンド)ですな。リバティには幾つかの二つ名があり、【生ける鳳】【勝利奪いし乙女】【神をも弑す死炎】等々」

「ん、鳳?不死鳥か?」

「何でも、生を象徴する不死性と、死を象徴する神殺しの焔を所持するとか」

「チートか!」

「確か、エティ殿が詳しい経緯を知っているはずですな。大戦時にリバティを操ったのは、その時代のビジターだそうですからな」

「あの人か。説明分かりにくいんだよな」

「呼びましたぁ?」

「それじゃ、説明宜しく」


(驚かないのかー?)

(気配を感じた。あと勘)

(しかし、なんという二枚舌だよ)

(気にすんな)


―――


それはとある神話から始まった物語。


かつて、何柱もの神々が争っていた。

神々の争いは、何時終わるとも知れず続いていた。

その神々の一柱、神を殺すことに長けた神在り。

その体躯は巨なるが如し。

煌煌と燃えゆ武器を手に、幾多の神々を蹂躙せし。

彼の神の目的は、神を殺すことに非ず。

彼は、神ならぬ、小さき生命を愛す。

故に彼の神は、小さき生命を脅かす神々に刃を向ける。

彼の神は、一柱で戦い続けた。

相手が何柱で在ろうとも、彼の神の前では等しく灰となる。

しかし、彼の神の進軍は終わりを迎える。

神といえど、限界は在る。

そのことは、千を超える神々を屠ってきた彼の神が一番分かっていた。

だが彼の神は、魂の焔が燃え尽きるまで、進軍は止めず。

彼の神、小さき生命と出会う。

小さき生命を護るため、彼の神は力を振るう。

小さい、彼の神にとっても、矮小な人間にとっても小さな生命。

小さき、鳥と人の混血児有り。

人にも鳥にも迫害されし。神々さえも、その小さき生命を摘む所業せし。

彼の神は、最後の焔を燃やし、混血児を護りきる。


『神よ、何故我を護るのか』


混血児、神に問う。


『意味など非ず。我望みに従ったまで』


混血児、再び神に問う。


『神よ、何故燃えているのか』


『我魂の最後なれば。我命の燃える輝きなり』


混血児、三度神に問う。


『神よ、我に出来ることを問う』


『小さき者よ。我は汝に望まず。望むは生なり。彼方へと行くがよし。未だこの地は危険なり』


混血児、迷いたり。


『行け。小さき者よ。我命を案じてくれるなら』


混血児、飛び立つ。


彼の神、燃えゆ。

焔に包まれながら、今生を想う。

周りより、彼の神に敵す神々来たり。

彼の神、既に払う力非ず。

覚悟決め、身体に来るだろう撃を予感す。

しかし、感じるは水。感じしは熱。


『小さき者よ。何故戻る』


混血児、小さき身体に水蓄え、戻り来たり。


『我、微なれども、苦を和らげたく』


小さき故に、水、瞬に消えゆ。

小さき身体使いて、焔の熱を替わりす。


『止めよ、小さき者よ。汝まで燃え付きゆ』


『神よ、我は汝を護りたく』


神、困惑す。

護るべき、小さき生命。なれど今は、護られし。

神は想う。我が成せし事柄、無駄では無きと。

神は想う。我今生に、悔いは無きと。

神、心安らかに感ず。


神は、瞬の間、忘却せし。

敵なる神が、迫りしことを。

十を、二十を、五十を超えし神来る。

神々、殺意持ち、彼の神に迫る。

混血児、我が身を楯に神に挑む。

彼の神、驚愕せし。

混血児、瞬もなく、絶命す。

神に勝つる者、神以外に無きが道理。

彼の神、咆哮す。

燃え尽きん身体、奮い立つ。


『神よ、覚悟有るか』


『聞くに及ばず』


彼の神、立つ。


『神々よ。小さき生命達、尊き者なり』


神々、笑うこと限りなし。


『神々よ。我命、ここに尽きる』


『我等、汝に引導を渡せし』


『されど、汝らと共に逝く!』


彼の神、その輝き、天よりも明く。

命を、魂を、存在を、焔に変えて五十の柱を灰にせし。


『済まぬ。小さき者よ。汝を護れず』


彼の神、焔なれど、水流す。

閉まりゆく双眸より、熱き涙を、混血児に捧ぐ。


神の祈り、誰ぞ叶えるか。

しかし、奇跡は叶う。


『神よ、我は一体』


『小さき者よ。汝、大事ないか』


『分からず。しかし、数瞬の命は感じし』


奇跡は起こる。なれども、命の時を、僅かに延ばすだけなり。


『我、汝を救う。我最期の願いなり』


彼の神、燃える命を、混血児に託す。


『神よ、この焔は』


『汝に、新たな命を。それは呪いに近き。汝、命を望むか』


『神よ、汝が命は』


『我は尽きる。願わくば、汝に命を繋ぎてほしい』


『望みましょう。汝の願いと共に』


『我願いと共に、汝に命を。汝に力を。汝に焔を。願わくば、呪いならず祝いになることを』


彼の神、灰となる。

灰は混血児に被る。

混血児、灰より出でし。

否、混血児、新たな生を行く。

灰より羽ばたきし焔の鳳。

煌煌と輝き天を行く。


―――


(なっがいわー!)

(落ち着けジン。俺も同じだから)


「これが神話の概略ですねぇ」

「でも、神話だろこれ」

「はいぃ。次はぁ、実在せし伝説と呼ばれた理由をぉ、説明しますねぇ」


(リョーガァァァ!これ校長並みにきついぜぇぇぇ!)

(心配すんなぁぁぁ。校長なんて目じゃねぇぜぇぇぇ!)


―――


元々、伝説と言われていた、リバティの名を持つ、不死なる鳳。

それは伝説の中だけのはずだった。

それは神話で終わるはずだった。

大戦期、それは焔を振り撒き現れた。

とある騎士の命を受け、焔の翼をはためかせる乙女は、勝利を全て奪っていった。

その焔は、余りにも熱く、明く、大きく、死の焔と呼ばれ。

その身体は、あらゆる攻撃を、焔を上げて治りゆく。

とある騎士は、誰にも仕えず、大戦を止めることだけを望んでいた。

その為に、あらゆる命を護るため、その身を散らしながら、戦に明け暮れた。

その姿は、かつての神を思い起こすに足る、魂の輝きを放っていた。

かつて伝説だった少女は目覚めた。

かつて神話だった乙女は覚醒した。

騎士に仕える乙女を、人はリバティの再来だと認識した。

違えることが無いほどに、乙女は焔を纏っていた。


―――


「すまん、要領を全く得ないんだが」

「仕方ないですぅ。そもそもぉ、情報があまり残ってませんねぇ。不自然な程にぃ、大戦期の情報はぁ、消えているんですぅ」

「その為、大戦のことを知らぬ者も多いのだ。リョーガ殿の耳に、今まで入らなかったのも無理からぬことだろう」

「んで、そのリバティの少女の能力やらなんやらは?」


―――


神より賜ったのは、尽きること無き命の焔。

神をも燃やす、死の焔。

勝利を呼び寄せる、煌煌の輝き。

しかしその力は、従のもの。

自ら扱うより、誰かに従い扱うことに適していた。

そして、その力は呪いでもある。

不死という自由を得た代償に、死ねないという不自由を得た。

リバティという名称の意味も、ここにあるという説もある。

不死身の属性を持つ者の類似性として、精神に限界があるとされる。

その例に漏れず、リバティもまた、精神を磨耗していた。

生きる中で、感動を得る。

感動を得ることは、生きることと同義でもある。

そして感動は、重ねる毎に、弱まっていく。

既に知っている感動は、感動にならない。

感動は精神を活性化させる。

感動がなければ、精神は死んで逝く。

神は、それを憂いたのか。

リバティには生殖機能は無い。

しかし、転生する機能があった。

死の焔で身体を包み、灰へと還り、生の焔を上げる。

最低限の知識のみを引き継いで、母から娘へと、生まれ変わる。

感動を失わない為に。

そして神の憂慮は1つの現象を、世界に刻み込んだ。

生の焔を持ち、死の焔を纏い、勝利の輝きを放つ少女を倒した者は、彼女を従えることが出来る。

この従えるとは、正しく、彼女の全てを所有するということ。

不死にはならないが、神域の焔を扱うことを可能とする。

しかし、彼女を、彼女達を従えたのは、過去に1人のみ。

すなわち、大戦期の騎士のみである。


―――


「あー、えーと、つまり?不死身で、神殺しの焔を使えて、勝利の力を持つ美少女を殴り飛ばしたら、自分の奴隷化?」

「奴隷化ではないそうですけどねぇ。感動を得る手段だそうですぅ。それにぃ、美少女とは言ってませんよぉ」

「大抵美少女だよこういうの。神話的なものは、明確に不細工となってない時は、美少女がデフォだからな」


しかし、何て言うかな。

倒したら、所有出来るとか。なんか物扱いで腹立つな。

多分、彼の神とかいうのの、計算違いだろうけど。

しかし、過去1人か。倒せないくらい強かったのか。

或いは、倒すだけじゃダメなのか。


「そういや、何でフェイクライナに居るんだ?この辺に何かあるのか?」

「そういった謂れは全く無いはずなのですがなぁ」

「何もないから、ですねぇ」

「どゆこと?エティさん」

「転生するときはぁ、それまで居たことの無い地域に行くとかぁ。感動を失わない手段ですねぇ」

「成る程。んで、転生の周期とかは?」

「分かりませんねぇ。その当代のリバティ次第ですからぁ。記録ではぁ、最短で20年とかぁ?最長ではぁ、神話の時代から、大戦期までとかぁ」

「その辺は、確度が低いな」

「これまでぇ、リバティの確認例が無いことからぁ、未だ転生してからあまり時間は経ってないかとぉ。この画像を見てもぉ、まだ子供ですしねぇ」


ふぅーむ。

考え込む。

………………………………………よし。


「彼女の元へ、行ってみよう」

「それは、オレ達が、か?リョーガ」

「ああ。パーティー全員で、だ」

「その理由はー?」

「恐らく、いや確実に彼女の元にも魔人が襲いに来るだろう。負けるとは思わないが、小さな女の子が襲われるのに、傍観するってのは、俺の主義に合わねぇし。何より、仲間に出来たらかなり心強い」

「仲間、か。リョーガ、お前は、仲間にしに行くんだな?倒して所有しに行くのではなく」

「当たり前だシンシア。女の子を殴って所有物とか、頭おかしいだろ」

「ふん、なら良いさ」


軽く笑っている。お前、ホントに疑ってたな?

ん?しかし、シンシアの表情が少し固い。


「そういや、この世界での神属性ってのはどうなんだ?」

「基本的にはぁ、神の領域に届いた者、が神属性ですねぇ。神様とは違うんですぅ」

「へぇ。しかし、神話を聞く限り、神から力貰った感じだが」

「それは、賜った、ですからぁ。元々が、神じゃないんですねぇ。根幹から神なのとぉ、後付けで神の領域はぁ、違うんですぅ」

「成る程ねー。神から直で貰っても、元々が人と鳥のハーフ。そこから神への領域になっただけってことか」

「それでもぉ、圧倒的な強さを持つことはぁ、確かですねぇ」


ふぅむ。

皆の顔を見渡す。

反対する者は、居ないな。


「よし。これは急いだ方が良い。しかし、準備を整えた方が懸命だ。明日の朝出発する。準備を始めるぞ!」

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