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真実の中の虚構世界《フィクショニア》  作者: AKIRA SONJO
第2章【首都奪還プロジェクト、女の子が最優先です】
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35話【それは、武力で戦うものに非ず。だが、全てを操ることさえ可能な職種である】

夜、俺の疲労は強制的に治され、

ルイも起きてきた。


「それじゃ、仲間になってくれ」

「勿論だよ」


♪~~♪♪♪~~~~~♪♪~♪♪~~~~~♪♪♪♪~~♪♪♪♪♪


「どこから流れてくるんだい、この音楽は」

「さあ?世界の中心とかじゃね」


さぁ、夕食に移ろう。

展開が早いと思った人、居るかな。

仕方ないんだよ!作者のアホのせいで、全く進まないんだよ話が!

予定だとさ、そろそろ首都に攻めてたらしいぜ?

作者の予定、どうなってんのかね。


ルイは皆にも打ち解け始めてる。

俺ととっくに打ち解けてるのが効いてるのかな。

この後の予定では、夜中1日掛けて語り合うつもりだ。

酒も用意して貰おうと思ったんだが、ハンナは何故かノリノリで進めてくるのだが、皆がやたらと止める。

何故だ。俺に何故飲ませようとしない。

良いさ、ノンアルカクテルだって、旨いのはたくさんある。

ルイはカクテルそのものも作れる。

そう、そのイメージのあれ。シャカシャカ振るやつ。

夜もノンアルカクテルを作って貰おう。

だが、その前にやることがある。


――――


俺は、西城に用意して貰った自分の部屋に戻る。

ベッドとデスク、そこそこの部屋。

全く、あまり気を使わなくても良いのに。

まぁ、用意してくれるもんは使うけど。


コンコン。


「ハンナです。お申し付け通り、参りました」

「おう、入れ」


俺はベッドに腰かける。


「よしハンナ。まずそこで、正座しろ」

「畏まりました」


あれ?何故受け付ける。そして何故軽く喜んでいるんだお前は。

綺麗に、ピシッと正座している。


「さてと、ルイの件だが」

あの件(・ ・ ・)で御座いますか?」

「違う。そっちじゃない。ルイが俺の技のことを知っていた件についてだ」

「その件で御座いますか」


ルイは俺のことを、かなり調べていた。

噂以上に知っていたようだ。

ルイはかなり強かだ。きちんと情報収集という段階を経て、俺達に接触してきた。

問題は、


「なーんで、そんなに俺の情報が漏れてたのかなぁ?業焔剣嵐に至っては、一度しか使ってないんだがなぁ。何か知ってるかハンナ」

「はい。勿論で御座います」

「ほう、なんだ」

「私が噂に流しました」

「よしそこに直れ俺直々にお仕置きしてやる」

「ではこれをお使い下さい」

「へ?これは?」

「調教用の短鞭です」


あれー?おかしいな。想定したシナリオに進まない。

何故だ?何故自らお仕置きを受けたがる?

更には、何故攻撃力を増させるのか。

ヒュンヒュン。あっ、これ使いやすい。


「素振りならば、どうぞ私の身体をお使いください」


君は何を言ってるのかな。君のイメージがまた変わっていくよ。


「うーむ。てか、なんでこんな物持ってたんだ?」

「馬の調教用です。今日は一度馬房に行ったので」

「あー、そういうこと……?」


どういうこと?何故まだ持ってるのかな。


「さあリョーガ様。存分にお叩き下さい」

「いや、俺女の子を叩いたりとか、あんま好きじゃねぇんだけど」

「私は全く構いません」

「いや、そこは構えよ!」


流石に突っ込んでしまった。

おかしい、やはりこの侍女、パーフェクトメイドなのに、どこかおかしい。

まっ、別に良いか。俺の侍女やメイドに対する認識は、ライトノベルとかを読んでたせいでかなりおかしくなってるし。


「はぁ、まぁお仕置きは良いや」

「そうですか」


何故露骨にガッカリするんだ。

まるで、お仕置きされるために情報を流したみたいじゃないか。

そんなわけないだろうけど。


「これからは、あまり情報を流すな。流す情報は俺が指定する」

「勝率をあげるために、で御座いますか?」

「ああ。俺のシントウ流は、知られても平気なものが多いが、知られないに越したことはない。きちんと出来たら、そうだな、俺からも何かご褒美を」

「全てきっちりこなしましょう」

「早いなおい。んじゃ、情報を指定していく。まずは何の情報を漏らしたか全て正確に話せ」

「畏まりました」


――――


「やぁリョーガ君。それじゃあ、語り合おうか」

「おっ、それは?」

「カクテル。フォーキールというノンアルだよ」

「なんで皆、俺に酒を飲ませないんだろうか」

「君は、前に飲んだことあるのかい?」

「ちょっとな。この国の飲酒制限が、かなり適当で驚いたぜ」

「ボクも、向こうで少しだけ飲んだことはあるけれど、こちらでは飲み放題だね」


ハンナとの、イメージの変わる密談の後、語り合いにルイが来た。

仲を深めるには、語り合いが一番!て訳でも無いが、やはり、アニメを語るのは楽しいからな。


「リョーガ君、それは何かな?」

「ん?ああ、これか。さっきハンナが来てたんだが、その時に置いてった。馬の調教用の短鞭だとよ」


デスクに投げっぱなしにしといた鞭に、ルイが気が付いた。

ん?ルイの表情が少し変だ。


「これは、馬用じゃないと思うよ」

「え?マジか?」

「知り合いに、ジョッキーが居るんだ。父親の店の客でね。それで馬について、多少は知ってるんだけど。……これは多分馬用じゃない」

「んじゃー、これ何用だ?動物用だとは思うんだが」


ヒュンヒュンとまた軽く振り回す。

やたらと使いやすいのが、逆にあれだな。


「あー、これはね。多分なんだけど」

「見たことあるのか?」

「うん。えーとね。これは、そのー」


歯切れが悪い。

ん?まさか、


「人用?」

「多分」


あの無表情侍女なんてもの渡しやがった!

使いやすいとか言ってた俺はなんなんだ畜生!


「しかもね。それ、多分リョーガ君用にカスタムされてる」

「は?んだそりゃ」

「使いやすいでしょ?リョーガ君の手に合うように、グリップや、重心とか、きちんと計算されてる。侍女さんが渡したって言ってたけど、まさか」

「俺が頼んだ訳じゃねぇよ!」

「だよね。なら、偶然かなぁ?」

「イヤな偶然もあったもんだな」


あれ?なんでルイはすぐにそんなこと見抜けたんだ?

軽く振ってたとはいえ、そんなすぐに見抜くもんかな。

つーか、あの侍女に対する認識が更にダメな方向に進んだぞ。

どうなってやがる。


軽く仕切り直して、カクテルを飲み、アニメの語りを始めた。

少し、観点は違うものの、好みは近くて楽しかった。

気付いたら、2時だって奥さん。丑三つ時ですよ。

話始めたのが、10時だから、四時間ですよ四時間。


まっ、それだけ楽しかったってことだな。


「じゃ、リョーガ君。ボクはそろそろ戻るよ」

「おう楽しかったな!」

「うん。ボクも楽しかった。また語ろう」

「ああ!それじゃ、お休み!」

「お休み、リョーガ君」


―――


こんな夜中まで語り合ってしまった。

リョーガは良い人だ。話も合うし。

ここに来てよかった。でも、少し心苦しいな。

隠し事があるのは。


ふぅ、御風呂入ってから寝たいけど、流石に無理かな。

こんな夜だし。明日、朝になったら、タオルと水を借りよう。

御風呂に入るのは危険だ。


「御風呂のご用意なら出来てますよ」

「うわぁ!」


っと、今は夜中。あまり声を出しちゃいけない。

って、


「ハンナさん。ビックリさせないで下さい」

「そんなにビックリされるのでしょうか?」


無表情だから、尚更怖い。

あれ?でも、少し悲しそう。傷付けちゃったかな?


「それで、ルイ様。御風呂のご用意は出来ておりますが」

「本当に!……あっ、でもダメかな」

「何か理由が?」

「ちょっとね」

「ですが、心配はご無用です。防音ですし、誰も今は御座いません」

「そういうことじゃないんだけどさ」


少し話が通じない。と言うかなんでこんな進めて来るのだろうか。


「ああ、もしかして、女性であることを気にしているのですか?」

「──────!?」


なんで!?しまった。反応してしまった。


「えーと、どういうこと?」

「文字通りで御座いますが。ルイ様が女性なことは、一目で把握しておりましたし、男装しているので隠しているのだろうと」


完全にバレてる!なんで!?


そう、ボク、ルイは性別上、女。

あっ、中身が男とかじゃない。きちんと、女。

この口調も、元々。女の子ぽくないのは分かってる。

そういえば、宝塚の男役に例えられたこともあったかな。


「その、誰かに話した?」

「いいえ、誰にも」

「そっか。ハンナさんしか知らないのか。なら良かった。この事は誰にも言わないで貰えるかな?」

「それは構いませんが」

「?」

「リョーガ様は既に知っておられます」

「────────!?」


再度絶叫しかける。リョーガまで!?なんで!?


「ちょっと待って!リョーガ君は確か、ボクを見たときに、【男か、残念】みたいな顔してたよ!?」

「ああ、そのことですか」


本人は隠そうとしてたけど、父親の店の手伝いをしていたから、色んな人の顔色を見てたから、少し見極める自信がある。


「それはフェイクで御座いますよ」


自信崩壊。


「リョーガ様は、基本的に嘘は付きませんが、フェイクは多用します。親友を騙し、あまつさえ読者さえ欺くほどに、フェイクが多いです。リョーガ様のモノローグは大抵フェイクと真実が混ざっているので、かなり質が悪いですし」


後半は訳がわからないけど、前半は少しわかった。


「リョーガ様曰く、【女の子が1人で、この異世界を旅するのと、男が1人で旅するのとじゃ、かなり難易度が違う。元々顔立ちが中性的で、偶然異世界へのシフト時に、コスプレしてたか、衣装を持ってたんだろ。それに、カクテルにはエンジェル・フェイスというものがある。俺の予想では、この技名は、天使は性別なし、フェイスは顔立ち。つまり、性別を誤認識出来るんじゃないか。それも使って隠してんだろ。こういう技は、消耗が小さく常時発動ってのがデフォだ。本人が隠したがってるならわざわざ暴く必要もねぇ】と。私には、そのフォローを命令されました(実際には頼んだだけで命令はしてない)」

「そこまでバレてたのに、普通に接してくれてる?」

「私には分かりかねますが、1つ言えることは」

「言える、ことは?」

「リョーガ様は女性に対してとても優しい、ということです」

「なんだい、それ」


推測も、大部分は合ってる。

なのに、指摘しない。これから、仲間になるのに。

命を預けるというのに。

彼は一体、何を考えているのだろうか。


「私にも分かりかねます」

「心を読まないで貰えるかな」

「リョーガ様は、私を初めて認めさせた程の(ひと)。いいえ、見抜くことも、見越すことも敵わない御方。そのお心を計るのは、神の領域に入らなければ不可能でしょう」

「君は、本当にリョーガ君を買っているんだね。君の主はリネットさんではないのかい?」

「リネット様は、私が仕えるに値する、とても綺麗な心を持った人です。ですが、私は、私たちは、女性に仕え、男性に全てを預ける。ルイ様とは、価値観がまるで違うので御座いますよ」

「んー、よく分からないかな。ボクはこの世界のことはあまり詳しくもないし」

「それで構いません。私のことなど、些末なことです。それより」

「?」

「御風呂に入られますか?」

「………そうだね。入るよ」

「では、こちらへどうぞ」


―――


一方そのころ、俺はと言えば。


「そろそろ出てこいよ。俺に敵対したいんじゃないんだろ?」


何故かまた、西城の天守閣の上に居た。

俺がこの世界に来て、砦についてすぐから感じていた視線。

それは、ほんの僅かな違和感ぐらいなもの。

とても隠行に慣れているものの視線だった。

俺がそれに気付けたのは、昔から視線を感じる訓練をしていたからだ。

何?厨二じゃないかって?そうだよ!何か文句あるかぁ!

と言うのは半分ホントだが置いとく。

師匠との訓練の1つに、こんな訓練があったんだ。

視線に気付かないと、滅多うちにされたから、必死になって感じたよ。師匠、5歳の子供にやる訓練じゃないっすよこれ。


「流石だな。敵意が無いことまで感じ取っていたか」

「それは途中からだけどな。しかし、見事なものだぜ。忍者顔負けの隠行っぷりだ。天守閣ここまで来るのに、気配の乱れが一切無い」


しかも、速い。俺の瞬連加の限界地点並みだぞ。

西城の、外に居たのに、通常ボリュームで話した俺の声を聞き取り、瞬時にここまで来るとは。

その姿は、よくわからない。

マント?コート?顔から、身体まで、全てを隠せるローブ、かな、これが一番しっくりくる。を羽織っているから体型さえ読み取れない。

声もまた、低く男の声に聞こえるが、変えてる可能性はかなり高いな。


「それで、素直に出てきたということは、元々俺に接触する意思があったんだろ?俺をつける理由は聞いても無駄だから聞かない。用件が聞きたい」

「ほう?ストーキングしていたことを咎めないのか?」

「しても無駄。あと、俺眠いので手短かに頼みたい」

「それが本音だな。………俺の名前はレゼル。偽名だがな」

「偽名かよ」

「通り名のようなものだ。俺は、情報屋をやっている」

「成る程、逆に信用出来るわ。それで、俺の情報を集めるのか。或いは、俺に売りたい情報でも?」

「その通り。だが、今回は初回だからな。信用代金として、無料でプレゼント。信用が何より大事な情報屋だ」

「そ。なら、何の情報をくれる?」

「この周辺に居る、君達だけでは知ることの出来ない人間達。すなわち、君が求めている協力者足りうる者達だ」


スイッチオン。


「その情報を渡すことで、レゼル、あんたのメリットは?」

「ある。俺はな、この国、フェイクライナを無くしたくない。おっと、勘違いしないで欲しいのは、俺はこの国に愛着は無い。情報屋として、だ」

「ほう。なんだこの逆に信用出来る感」

「それで、俺の情報はいるかい?」

「いる」

「即答だね。疑うことはないのかい?」

「ああ。仲間が欲しいのは事実だ。それに、疑う必要がない。俺の信用を得たいなら、或いは騙したいのなら、この初回で俺を欺く必要性がないからな」

「その頭の回転の早いところ、やっぱり良いね」

「んじゃ、情報を頂こう」

「急ぐね」

「眠いからな」

「それじゃ、所在地入り地図と、情報メモ。リョーガ、君に渡そう」

「貰った」

「これからも、このレゼルを御贔屓に」

「ういー」


シュン!じゃない。闇に飲み込まれるが如く消える。

音なんて、まるでない。

情報屋か。これからも、あいつとは色々ありそうだな。

さてと、まずは寝るか。

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