33話【ボクとキミを合わせたら、どんなカクテルが生まれるかな?from??】
さて、いきなり会うといってもきちんと対応を練らないとな。
まず、面接官を決める。
俺、ジンは確定。
「リネット、セリアも面接に出てくれ。王族がいた方が都合が良い」
「わかった!」「わかりました」
「シンシアも出てくれ。兵士としての意見が欲しい」
「ああ」
「ヴェルは精霊で警戒してくれ。敵じゃないとは限らないからな」
「うん」
自分から売り込みに来るパターンは、裏切りフラグもある。
警戒に越したことはねぇ。
「準備は良いな。行くぞ!」
――
「あっ、リョーガさん。ちょっとぉ」
「ん?」
――
「どうも。キミがリョーガ君かい?」
「どーも。リョーガ君だ。こっちのバカがジン。こっちの2人は第1、第2王女。こっちの少女騎士が近衛隊長だ」
「まさかボクの為に王女方が面接してくれるとは。嬉しいな」
外見を把握。不躾にならない程度に観察。
肩、いや肩甲骨辺りまでかかる光沢のある茶髪。これは染めてないな、地毛だろう。
中性的で、年齢不詳な優しげな容貌。
線が細く、背も156程だがナヨナヨした雰囲気はない。
服は、ん?見たことある。いや、観たことがある。
あれは、学園系アニメの制服だ。
レイヤーか?やたら似合ってるから、全然違和感ねぇが。
武器類は、見たところなし。隠し武器の気配は、わからん。
気配が少し曖昧だ。中性的なのと関係があるだろう。
さて、そろそろ描写がめんどくさい。
何故ならば、こいつは、
「初めまして。朱剛流唯です。よろしく」
お・と・こ、じゃねぇか!
―――
ちょっとヤル気落ちた。美形なので尚落ちた。
だけど、なんかさ、このルイくん、良い奴っぽいんだよ。
顔良くて、性格も良いって、マジ萎えるわー。
とは、おくびにも出さん。
きちんと面接はするさ、そのくらいの分別はあるんだぜ。
ジンには気付かれてたけど。
(ちゃんと気張れよー?男だからって)
(わーってるよ。俺が主導でやるから、時折補足頼むぜ)
(必要ない気もするがなー)
面接部屋には、長めの机と椅子、対面に椅子。
これぞ正しく、面接だ!高校入学時を参考にしました。
「それじゃ、面接を開始します。俺とジンはビジター、つまりルイさんと同じ、あっちの世界の人間だ。そして、ここに居る3人は理解があり、秘密も守るから大丈夫です」
「さん付けは要らないよ。ボクもキミのことを君づけにするから。生意気に感じたら言ってくれ。敬語に直そう」
「そうか、ならルイと呼ぼう。面接は俺が主に聞くことになる。言いたくないことは言わなくて構わないし、気楽にしてくれて構わない。それじゃあ、簡単に自己紹介からお願いしよう」
「名前はさっき言った通り、ルイだよ。向こうでは、東京の学校に通ってる。いや、通っていた、かな」
学校の名前を聞いた。結構有名な進学校だ。
固有名詞は出しませんよ、ええ、出しません。
「リョーガ君と同じ、高2だね。ボクはゲームやノベルが好きでね。春休みの間、ゲームを攻略してたんだ。春休み明けに、面白いゲームがあると聞いて買いに出掛けたんだ。そしたら、出会ったんだ」
――――
〔君にも適性がありそうだ〕
「誰だい君、いきなり話しかけてきて」
〔興味はないかな?幻想が真実となる、虚構だらけの世界に〕
「?よくわからないな。君は厨二かい?」
〔なら、分かりやすく言おう。魔法が実在する異世界に興味はあるかな?〕
「そんなものがあるのなら、行ってみたいものだね」
〔じゃあ連れていこう〕
「え?」
――――
「と、こんな具合さ。やたらと綺麗な、女神みたいな存在に連れてこられたのさ」
この時、俺とジンの思考がシンクロした。
((あのクソガイド、随分とまぁ対応がちげぇじゃねぇか!))
「大体、俺達と似たような感じだな。それから、こっちに来てからはどうしてたんだ?」
「ここから、南の方に飛ばされてね。近くに無人の町があったんだ。そこでしばらく、保存食などを探して過ごしてた。そしたら、キャラバンが休憩に立ち寄ってね。そのキャラバンから、【北にフェイクライナ国の首都機能を持った城がある。そこでは戦力になる人材を探している】という情報を貰ってね。ここに来たんだ」
「そういう経緯か。この世界に来たのは何時なんだ?」
「二週間ほど前かな。確か、4月12日だよ。この世界では、春の2月、12の日だったかな」
「ふむ。ちなみに、その服は?」
「これかい。ボクの好きなアニメの制服でね。ボクはレイヤーなのさ。知ってるかい、このアニメ」
「ああ。原作も読んだ。バトルシーンが派手なだけじゃなく、きちんと計算されてて面白かったよ」
「そうかい?ボクはキャラ達の心理描写に唸らされた。ああまで描けるものなのかとね」
「よし、この話は今度とことんまでやろう。しかし脱線は困る。話を戻そう」
「それもそうだね」
小さく笑いあう俺達。えっ?ルイ君のこと?めっちゃ良い奴じゃん。語り合えそうだよ。
「後は、特に自己紹介することは無いかな。好きな何々とか、必要ないだろう?」
「ああ。それは今必要じゃないな。それじゃ、ここに来た動機を聞こう」
「1つは寂しかったことだよ。異世界に来たと言うのに、会うのはモンスターばかり。しかも仲間になりたそうな目でこちらを見てこない。そこに、仲間を求めてる人達が居るというじゃないか。ボクはこれでも、そこそこ強いと自負している。きっと仲間にしてくれると思ってね」
「成程、それで、俺達はどうだい?」
「仲間になりたいね。一晩中語り合えそうな人も居るし。それにこの城、この国、ピンチではあるものの、とても良い国だと聞いてね。こんな風になるまでは、善政だし、王族達の評判も、一部を除きとても良かった。ここなら、力を預けても後悔しないと思ったんだよ」
「それはありがたい。それじゃあ、君の魔法、能力について聞いて良いかな?」
「うん。ボクの魔法は、少し変わっているんだけどね」
「気にするな。それを言ったら、俺は何時もチートだなんだと言われてる。ビジターは強いけど、特殊な力を持つ場合が多いそうだし」
「そうなのかい。ボクの魔法はね、名付けてカクテル魔法さ」
「カクテル魔法?混ぜて、多属性魔法を使うのか?」
「違う違う、もっと単純さカクテルの名前って、気取っていたり、技名みたいなものが多いだろう?」
「!まさか、カクテルの名前の技か!スクリュードライバーとか」
「その通り!お酒を飲める年じゃないけれど、カクテルが好きでね。ボクの親がバーテンダーなのが影響したのかな。そんな魔法なのさ」
「面白いな!その魔法、見てみたいな。セリア、場所あるか?」
「ええ、人が来にくくて、安全な場所が」
「よし、ルイ。君をスカウトするのはほぼ確定だ。その前に、俺と模擬戦して、力を確かめさせてくれ!」
「本当かい!それじゃあ、ボクの魔法、とくと見てくれ!」
―――
「リョーガ、ルイのことだが、仲間に入れても大丈夫か?」
「ああ、不審な所は無かったし。嘘もついてない。俺達は、ビジターなのかどうか分からないが、リネット達は何も言ってなかった
から」
「ビジターであることに間違いない、か。それにガイドのことも言ってたし。何より」
「あのアニメを知っていたしな。裏切る可能性も無い訳じゃない。でも、信じていい気がする」
「ふん、ならオレは、信じるだけさ。オレより仲良くなったら、嫉妬するかもよー?親友」
「キモいな。後、それは決して無いだろうから。安心しろ親友」
うむ、キモい。
いきなりこんなこと言うとは。
ルイは、嘘はついてない。でも、少しだけ違和感がある。
まっ、大したことない違和感だがな。