表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真実の中の虚構世界《フィクショニア》  作者: AKIRA SONJO
第2章【首都奪還プロジェクト、女の子が最優先です】
32/54

28話【激戦後はぶっ倒れる。これもまた、世界の理】

「とりあえず落ち着いてくれェェェェ!!!」


オーアールゼーット!

シントウ流奥技の1つ。

膝を畳み、両腕を前に、額を地面に叩き付ける!

燃える平身低頭。つまりは、フレイム・ドゲザだ!


「先に、他の人を助けてからにしてくれ!それからな煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」

「既に焼けているだろう。お前は」

「リョーガ君、後でちゃんと、だよ?」

「身体、大丈夫?」


ヴェル、君の優しさが身に染みるよ。


「後でじっくり聞くから」


君もなのね!


―――――


「燃え上がれ!」


燃え上がーれー♪燃え上がーれー♪フンフフーンー。

はっ、しまった。ワンフレーズやっちまった。


精神力落ちかけたけど、未だ炎は燃え盛っている。

まずは凍りついた兵士達に、炎を一閃。


「「「「「あっちゃァァーーーーー!!!」」」」」


よし、成功。

適当過ぎないかって?良いの良いの。男は適当で良いの。


目の前の氷像を見る。視る。診る。

槍を携え、気品を持ち、美しさを凍り尚も輝かせる。

オリヴィアを、復活させる。

ラターニャの言では、適当でも、全力でやっても殺しちまう危険性がある。

だからまずは兵士で試した。

炎を、操る。縦令他人産炎(たとえヒトのほのお)でも。何故エセ漢文だよ俺。

腕を前に、掌を前に、右手を前に、左手を添える。

炎を手に集中。手を、凍りに押し付ける。

感じとれ。出来る出来ないじゃなく、やる。

凍りの感覚を。中のオリヴィアを。オリヴィアの命の灯を、感じ取る。

さあ燃やせ。練り上げ、繰り上げ、集中した焔を、解放。

壊す焔じゃない。融かす焔を。命を燃やす焔を。

願う。イメージする。繊細に。だが力強く。


焔が、浸透する。

カッ―――――!!!


駆け出す。キャッチ成功。


「もう、大丈夫だ」


オリヴィアを助け出した。だから大丈夫。

お姫様抱っこ状態のオリヴィアに衝撃が行かないように、後ろにぶっ倒れる。

さーすがにもう、 限界だわ。

意識が、保てない。視界が暗転する。


―――――――――――


「リョ、リョーガ!?」

「リョーガ!」


オリヴィアを抱えたまま倒れるリョーガ。


「流石に、私も限界」


強化を送り続け、常時リョーガの身体を回復していたリネットも、源子切れ、疲労限界を迎えていた。


「ジン!ジン!!!」


ティーはジンの介抱を。


「ティー、そっちは?」

「ジンは大丈夫。力を使いすぎ反動。そっちは?」

「結構まずい。身体の焔がまだ鎮火していない。オリヴィア様を焼くことは無いようだが、リョーガはダメージを負い続けている」

「とにかく、移動しよう」

「マーヴェル。ああ、だが持ち上げられるだろうか」

「精霊達にも、協力して貰う」

「それには及びません」

「「!?」」

「そこまで驚かれると、少し心外なのですが」


何時の間にか表れた侍女ハンナ。


「一体何時!?」

「先程で御座います。オリヴィア様とリネット様は私がお連れしますので、御二人はリョーガ様をお願いします」

「あ、ああ。ってモンスター達は?」

「魔女が去った直後、東へ逃げ出して行きました。防衛成功で御座います」

「そうか!なら、早く戻るか。マーヴェル、私が支えるから、回復を頼む」

「うん。分かってる!」


―――


「セリア様、兵たちは?」

「皆、もう大丈夫です。モンスター達は?」

「退いていきました。リョーガ殿達がやってくれたのでしょう」

「ええ。無事だと良いのですが」


負傷者の癒しを一身に引き受け、疲労を美しい顔立ちに色濃く残している。


「少し、お休みになられては?御疲れでしょう?」

「いえ。リョーガさん達が怪我をしているかもしれませんし、何より、まだやるべきことがあります」

「それは一体?」


「「「うわぁぁぁぁ!!!」」」


「!」

「ジェイクさん!行きましょう!」

「うむ!」


―――


「<解放>」


魔人が、真価を表す。

怪我人に紛れ込んで、西城に忍び込んで居たのだ。


「貴様!」

「大臣とお姫様のお出ましか。丁度いい。俺の使命は要人達を道連れに自爆すること。喰らえぇ」


自らの使命を暴露し、自爆を謀る。得てしてそんな輩は、失敗するもので、今回も。


「なっ、何!?身体が、動かん!」


ゴゥアフトのメンバー達が、魔法で押さえ付けている。


「流石リョーガさんですね。この自体を想定していたとは」


ゴゥアフトメンバーを連れてきたのは、行軍速度を上げるためではなく、この時の為。


「ジェイクさん!」

「承知!」


創造するものは、短槍。

年老いているとはいえ、此処は異世界。年齢は元の世界とは違い、影響は少ないのだろうか。


「<我が槍は最短にして最速の必殺を表す>」


正しく一閃の突き。

簡単に言うのなら、会心の一撃だろう。

大臣にして、王女に槍術を指南する程の人間が、

単なる老兵であるはずがない。

必殺を体現した一突きは、瞬時に魔人の意識と、命を貫いた。

いや、命とは言えないだろう。

消えていく。それは転送の発光現象。

倒しても、殺せた訳ではない。

必殺なのに、殺せない。それは突っ込んではいけない真実。


「はぁ、はぁ、流石に疲れました」

「素晴らしい動きでしたよ、ジェイクさん。また兵達の指南をされてみては?」

「有り難い御言葉ですが、体力が有りませんで。あの暴れ姫一人が精一杯ですよ」

「ご謙遜ですね。まだまだイケますよ」

「そうありたいものですな」


―――


「セリア様、リョーガ様の負傷が深刻です。癒しをお願い致します」

「これは!早くベッドに!」


―――――――――――


春の2月、15の日。

………15!?


「ぐっ、あっ、って痛たたたた!」


久しぶりに日付出たと思ったら、3日過ぎてね!?

確か12日だったよな、関所に来たの。

倒れたあと、回復までこんなに時間かかったのかよ。

まだ身体痛いし、筋肉痛ぱねぇな。

つーかここ何処よ。ベッド?


「起きたようですね」

「んあ?」


聞いたことの無いアルトボイス。

耳に心地よい音色、じゃなくてどなた?

肩までかかる、艶のあるシルバーブロンド。

セリアの白銀より、色が濃いな。

強い意思、いや意志の宿るアクアマリンの瞳。


「ああ。オリヴィアさんか」

「はい」


………ん?何で居るんだこの人。ってかこの人凍らされてたのに、大丈夫なの?

寝起きでアタマ回んねー。


「丁度起きたところで、タイミングが良かったですね」

「んー?どゆこと?」

「ご挨拶と、感謝をお届けに参りました」

「そー。とりあえず敬語は要らないよ。第一オリヴィアさん、暫時国王でしょ?俺の方が敬語じゃね?」

「暫時、ですし。敬語が要らないのでしたら、リネット達と同じようで?」

「それでいいや。てーか、挨拶はともかく、感謝なんて要らねーよ?」

「いえ。きちんと感謝は致します。しなければ、私の気がすみません」

「あっ。そーなの」


俺、ホントにアタマ回ってねーな。どっかに打ち付けるか。


「フェイクライナ王国、代理国王オリヴィア・ユン・フェイクライナ。この度は、我が国の危機を救って頂き、感謝の意を表します」

「お堅い文言だこと」

「仕様ですから。そして、リネットとセリアの従姉妹のオリヴィアです。助けてくれて有難う。リョーガさん」

「うーい。感謝受けとりました。まっ、俺だけじゃねーけどさ」

「ジンさんにはもう挨拶を済ませました」

「彼奴もう起きてたのか。って今は昼の1時!?」


完璧な丸3日。寝過ぎだろーよ。


「力の使いすぎだと、エティさんが言ってましたよ」

「あの人来てんの?」

「エティさんは、研究者としての経験で、医療関係も高水準なので。治療はセリアとマーヴェルさんが全力でやったんですよ?身体がもうボロボロでしたし」

「あー。お説教は後で良い?多分まとめて来るし。とりあえず」

「とりあえず?」

「飯食いたい」


丸3日何も食ってなくて、空腹限界だわ。


―――――


ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツゴックン。

なんだかこっちに来てから、大食いになったな俺。


「おし!復活だ」

「良く食べるんですね」

「だから、敬語は要らないって。オリヴィアさんの方が歳上だし」

「そう言われても、これは半分地ですから」

「そういうタイプか。そういや、身体は大丈夫なのか?結構長い間凍らされてただろ?」

「身体は平気でした。存在ごと凍らされて、逆に疲労やダメージは無かったようです。解凍のとき、リョーガさんがきちんと処置してくれたお蔭でもあります」

「処置出来てたのかなぁ?まぁ、無事なら良かったわ」


ふぅ、腹ごしらえも済んだし、


「今の状況を、教えて貰える?」

「はい」


倒れた後、西城に運ばれたらしい。

此処は西城、しかも王族専用の部屋を使ってた。VIPだVIP。

俺の命懸けで使った焔は、終わった後も燃え続けていたらしい。

何かを燃やすことは無いが、俺の生命力をガリガリ削りまくった。

皆全力で治療してくれたとか。MAX感謝だな。

おっと、西城で魔人の自爆騒ぎもあったとか。

知ってる?俺は知らなかったの!

予想はしといたけどさ。まさかジェイクさんがそんなに強かったとはな。

オリヴィアさんに槍術を指南しているっていうし、それだけの実力があるんだろう。今度手合わせを願おうか。

モンスター達が去っても、仕事は山積み。

倒して終わりじゃない。今回は倒せなかったけどさ。

凍りついた東城は、徐々に解凍したが、内装はボロボロ。

後回しにして、北城と南城、一番無傷な西城を中心に後片付けをしている。

フェイクライナ国民、更に駆けつけた近衛隊も加わったから、良いペースで進んでる。

元々関所に居た兵隊は、かなり消耗しているから、大して動ける人数も居ないとか。

死者や再起不能者が居ないことは、かなり良かったけど。

凍り付けにされ、俺が解凍した兵達も無事だ。少し火傷したくらいで、今も動いてる。

火傷ねー。それくらい耐えろよなー。

え?俺のせいじゃないかって?男は良いんだよ、男だから。

メインパーティー達は、

セリアはヒーラーとして動きまくってる。時折休みながらとはいえ、相当魔法を酷使しているらしく、周りから心配されてる。

うーん、やっぱ芯は強いんだな。

リネットは俺に強化を送り続け、ダウンしていたが、数時間で回復。リネットにかなり負担掛けちまったな。

今はオリヴィアやジェイク、他の大臣と共に政務活動中。

ヴェルも回復をしてる。セリア程ではないとはいえ、怪我を治せるし、ヒーラーの数が足りないから重宝されてるとか。今は休憩で寝てるらしい。

シンシアは近衛を率いて作業中。と言っても、身体ちっさいし、魔法でカバーしてる。パワーあっても小さいからなぁ。

ティーはゴゥアフトメンバーと共に活動中。ジンもくっついている。彼奴役に立つのか?

ハンナは、今何処に居るのか不明。何処かで侍女作業してんだろう。てゆか、俺を運んだのはハンナらしい。あの人、ホントに何者デスカ?

エティさんも、くっついてきて診察しているらしい。

何やら、研究成果を応用した回復道具も造れるとか。

ぽわぽわしてるだけじゃないんだな。俺の診察もこなしたらしいし。少し不安ではあるけどな。

しかし、研究者って色々使いやすそうなキャラ設定だな。


「んで、俺に何かやれることはある?」

「休まなくて良いんですか?まだ身体治りきってないでしょう?」

「動いても平気だ。筋肉痛ズッキズキくらい、動いてる方が気にならないし。寧ろ、身体の調子を確認するために動きたいからな」

「それでは、片付け作業をお願いできますか?男手が減ってますから」

「構わないぜ。東城か?」

「はい、お願いします」

「オリヴィアさんはこれからどうすんの?」

「私はこれから政務に戻ります」

「そうか。なら、他の奴に俺のこと伝えといてくれ」

「ええ。わかりました」


冷静に考えたら、俺、女王に命令してんのか?

まぁ、良いのかなぁ?この国の人、皆なんだか気の良い人だし。

それよりも、まずは東城に行くか。逃げるために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ