24話【防衛戦と攻城戦。RPGって、敵が来てるのに悠長だと何時も思う】
太陽は頂点に昇るちょっと前。
俺達は関所に辿り着いた。
東城はモンスターに占拠された模様。
俺達はとりあえず西城に入った。
とりあえず、城はRPGの感じを思い浮かべてくれ。
そうそう、そんな感じ。
まぁ、ゲームによって大分違うけどさ。
俺?俺は竜を探求したり、最後と銘打ってるのに何時まで経っても続編があるファンタジーとか。その辺かな。
しかし、ここスゲー人多いな。
「ここは一番広く、大きい城だ。逃げてきた国民が居るのだろう」
「リネット、セリア、とにかく偉い奴は何処にいる?」
「多分上ですね」
「大臣とかって、上が好きなんだよー。とにかく上に居たがるから」
「シンシア、ここの兵隊長は?」
「大臣達と同じ場所にいるはずだ。今の指揮官は強さではなく、参謀タイプであるし」
「よし行くぞ!」
―――――
「おお!セリア様!リネット様!」
「ジェイクさん!無事でしたか!」
この人は大臣、その中でも古株らしい。
その上、欲が無いことで有名らしく、国民からも王族からも信頼の厚い人らしい。
よくそんな人が上に行けたな。
「セリア様、この方々は?」
「私達に協力してくれる人達です。彼等は信頼の置ける人達なので心配はありません。そして私達は先行隊。70名程の援軍が明日には到着します」
「それは頼もしい。我が名はジェイク・ラドクリフ。貴殿方が砦からの連絡にあった方々ですね。お見知りおきを」
「俺はリョーガだ。固っくるしいのは後にしようぜジェイクさん。今はこの事態を何とかしねぇと」
「うむ。貴殿の言う通りだ。早速現状を説明しよう」
ジェイクさんの話を纏めると、
俺がセリアに頼んで出して貰った伝令が関所に着いて、
その後伝令を返そうとしたときに襲撃があったらしい。
モンスターは結構な大軍。おまけに指揮を執る魔人までいるそうだ。
まずは東城に居る兵士達が戦う。
ここは初めから捨てることを決意、その間国民を西城に避難。
そのなかで有志を募り、戦力を増加。
しかし、東城はやはり落ちる。
モンスターは朝方やってきて、夜に一度退くらしい。
現在は北城、南城にて戦闘中。
「死者は出ていませんが、重傷者、重体者も多く、治癒師も少ない為、かなり苦戦を敷いております」
「死者が出てねぇのは、不幸中の幸いだな。セリア、回復に回ってくれ。絶対に死者を出したくないんだ」
「ええ。勿論です」
「ジェイクさん、オリヴィアさんは何処に居るんですか?」
これを聞いたのはリネット、軽く敬語になってる。
「そうでした!オリヴィア様は今、東城に居られます!」
「どういうことですか!?」
オリヴィアの魔法は、味方の強化。士気を上げる魔法らしい。
リネットの魔法と似た効力で、リネットはキスを交わした相手の強化。
オリヴィアは自軍全体に強化を波及する。
一人辺りなら圧倒的にリネットの方が上だが、
全体的に見れば、オリヴィアの方が効率が良い。
オリヴィアの魔法の特徴として、自分と空間的、精神的に距離が近い程効果が高まる。
つまり、後方から魔法を使うのではなく、前衛のど真ん中で使う方が効果を発揮する。
「東城でしんがりを務める部隊と共に居るってわけか。オリヴィア本人の戦闘力は?」
「オリヴィア様の魔法は、自分自身にも波及出来ます。加えてオリヴィア様は槍術を中心に修得しておられます。腕前は隊長クラスに引けを取らないレベルです」
「へぇ。だが東城から煙が立ち込めてたはずだ。あれは?」
「確認しております。左翼辺りにて爆発があったようで。水の使い手がもうすぐ鎮火するかと」
「ん?望遠があんのか?あるなら貸してほしいん「リョーガ!」どうしたジン!」
ジンに呼ばれた瞬間、ゾワッと背筋にきた。なんだ、この感覚。
「これを視てくれ」
ジンがスナイパーライフルを渡してくる。
さっきまで、この部屋の窓から外を視ていたみたいだな。
「狙撃用のスコープだ」
便利だな。銃の付属で造り出せたのか。
倍率は既に設定してあるみたいだ。覗くだけで良いのか。
「なん、だと」
目を疑う。疑ったのは久し振りだな。
「これは、如何なる事態か!?」
隣でジェイクさんも驚愕している。
「城が、凍っている」
―――――
「なんだ、あれは」
「まさか、あの魔法は」
「知ってるのか!ジェイクさん!」
「恐らく。あれを引き起こしたのは魔人、氷冷喚ぶ使者と称される魔人ラターニャでしょう」
「魔人か!氷系の魔人か。通り名まで付いてるってことは有名なのか?」
「ええ。彼女の凍結は全てを封じ込めるとまで言われています。まさか、そんな大物が率いていたとは」
二つ名かー。良いなー。
しかし二つ名か、とうとう作者も出したくなったか。
「オリヴィアに勝ち目は?」
「難しい。いや皆無に近い。それほどに強すぎる」
「そいつを倒せば、モンスターは退くか?」
「いいえ。魔人は他にも居ます。ですが彼女が中核を成しているのは確かでしょう」
「なら、そいつを倒せば、ちったぁ楽になるか」
「倒せるのですか!リョーガ殿!」
「さあな。やってみなくちゃわかんねーけど。とにかく、助けにいかねぇとな!」
――――
「これから東城に乗り込む。達成目標は二つ。オリヴィアを助け出す。魔人ラターニャを倒す。この二つだ」
「メンバーは?」
「俺とジンは確定。ヴェル、一緒にいっ「行く」食いぎみだな」
「私も行くよ!」
「リネット。……分かった。俺の強化を頼むぞ」
「うん!」
はぁ、言っても無駄だこれ。だけど、リネットが居るのは助かる。
負ける気はねぇけど、リネットの強化があれば勝ち目は確実に増える。
ヴェルの使役精霊は雑魚散らしに役立つし、ジンは捨て駒に(うおい!)ちっ、また考え読まれたか。
「セリア、回復に専念してくれ。優先順位はそっちだ」
「ええ、分かってます。分かってますとも」
不満そうにしてるから、先に釘刺しといた。
「シンシアも来てくれるな?」
「勿論だ」
「ゴゥアフトのメンバーは、ティーはジンと組んでくれ。他のメンバーはここで待機を頼む」
「分かった」
ティーはジンと組ませるのが得策だろう。
確実性に欠けるけど、ジンは中・遠距離、ティーは近・中距離型だし。
他のメンバーはサポートタイプ。ここからは自分で戦える(リネット除く)メンバーが必要だしな。
「時間が惜しい。行くぞ!」
「「「はい!」」」
―――――
西城から、東城まで一直線に走る。
東城は上方が完全に凍っていて、徐々に下に下がっていっている。
くっ、無事だろうなちくしょう。
モンスター達は北城、南城に向かっているから、
俺達とエンカウントする奴は少ない。
いても、
「<皆、お願い!>」
「ガンズ・カーニバル!」
まずはヴェルの使役精霊が襲いかかる。
射程距離が広く、尚且つ同時に幾つもの精霊で攻撃できる。
源子は俺が供給して、少しでも消耗を減らす。
そしてヴェルの精霊包囲網を抜けたら、
ジンのガンズ・カーニバルによる殲滅。
たとえそれを抜けても、
「シントウ流<一刃乃風>、及び<斬軌乃帯>」
「<風は斬撃に纏いて敵を討つ>」
俺とシンシアが斬撃波で狙い撃ち。
うち漏らしは無い。
一応、後ろにティーを配置。ヴェル本体も居るし。
ただ一人、大して戦闘力の無いリネットを皆で守る。
この中で最も攻撃力が高いのは俺!(キリッ)
その俺をさらに強化出来るリネットは強力なサポーターだ。
まっ、絶対に俺がリネット守るけど。
全員、省エネ気味に突撃。
源子は俺が供給する。
ジンのガンズ・カーニバルもヴェルのスピリチュアル・ドミニオンも全力を出せば一掃出来る。
だけどすぐにガス欠になるからな。
俺は身体動かしたり、シントウ流使わなければスゲータフだから、
皆に源子を供給しまくる。
―――――
ヲイヲイ、これはねぇだろう。
「城門が、カッチカチに凍りついてやがるぜー」
「シンシア、どこか迂回場所は?」
「この反対側だ。かなり遠いし、敵とも遭遇するだろう」
「門を飛び越えるか」
「リョーガ、止めた方がいい」
「ヴェル?……これは、結界か!」
「そう、張ってある。危険」
アニメとかでさ、凍るっていったら氷柱ごとのイメージがある。
実際に凍ると単に霜が降りるとかだけ。
なのに、この門は分かりやすく凍っている。
アイスドームみてぇだ。
しかも、城壁の上は結界付き。
感覚を尖らしたら分かった。ヴェルは結界を使えるし、エルフは感受性が強いそうだからすぐに感じ取れたのだろう。
「この結界。無理矢理通ると凍る」
「対抗策は?」
「……現状じゃ難しい。この結界。因果に干渉してる」
どんなやねん。強すぎねーか? まだ2章だぞ。
凍るってことはさっき言ってたラターニャって魔人か?
もし結界系を自在に使われたら、かなりきついな。
「凍ってるなら、溶かせば良いんじゃねーか?」
「後は純粋な破壊だな。リネット、壊しても良いか?」
「そんなこと気にしなくて良いよ。緊急事態だし」
「よし、とりあえずジン、破壊と炎。ヴェルも炎系の精霊で破壊を試みてくれ」
「りょーかい」「分かった」
「ガンズ・カーニバル、炎上祭!」
「<皆、お願い!>」
なんか、炎上って火事よりもネット上で多いよなぁ。
呟くだけで叩かれたり、何かすれば反響が来たり。
彼奴は何を以て炎上などと名付けたのかなぁ?
「だめ、だな」
「なら、ガンズ・カーニバル、破壊祭だ!」
「そのまんまか!」
「いずれいい名前つけるさ。横文字でな!」
んで、効果は薄い。
氷には炎、と安直にやってみたが、ムズそうだな。
んー、氷る。凍る。冷やす。アイス。これは違う。
待てよ、凍らせる?何故凍らせる。
氷は硬い。だが、氷結は必ずしも防御力を上げるとは限らない。
脆くなることもある。
とすれば、凍る、凍っているのは城じゃない。
結界は因果に干渉している。
ならば、単なる現象として凍らせる意味は?
俺の能力(笑)、厨二データベース(ノリで名前変わる)にアクセス。
思考する。思考を加速する。飛躍させる。
得た解は、
「これは、【開くという事象】を凍らせているのか!?」
そう、目に見える氷柱は、文字通り目に見える形で顕れてるだけ。
事象を凍らせる、その下位現象が認識出来るに過ぎない。
俺はこの中で、最も魔法に詳しいだろうヴェルに聞く。
ちっ、エティさんを連れてくるべきだったか。
「ヴェル、現象を凍らせることは可能か?」
「可能、ではある。でも、それを無効化することは」
「それなら任せろ。リネット、頼む」
「うん!<汝は我が騎士にして主也>!」
俺のシントウ流は相変わらずよく解らん。
だが、俺の願いを、望みを、夢を、実現させる力が、ある。
理屈は解らない。でも、シントウ流なら出来る。
不可能さえ、可能にする。その厨二を籠めたシントウ流なら!
リネットからの強化を受ける。
この強化、いや強化と言って良いのかすら分からないほどの力。
この力は間違いなく、シントウ流が力を発揮するための起爆剤になっている。
今、必要なのはこの城門を開く力。
開くことを凍らせることで封印された扉。
イメージする。右手に源子を、イメージを、籠める。
どんなに封じたところで、全てを砕く。その意志を具現化させる。
「シントウ流<攻錠/城解対>!」
拳を握り、後ろへ引き絞り、前面に解放する。
この技は、前にヴェルのところで使った技、ではなく。
派生技、亜種技と言えば良いか。
この技は、城を攻め、城門を砕く破城槌をイメージとして描く。
加えて、対抗する力を強引に解く技。
まさしく、名前の通りだ。
この為に生み出した技、と言っても良い。
前々から妄想していたイメージと組み合わせたものだけど。
俺のシントウ流は、読みは同じで綴りが違う技が結構ある。
理由としては、名前が同じだと、相手を撹乱出来る。
他にもあるけどね。
んで、結果としては。
俺は正☆拳☆突きを繰り出した姿勢で現象を待つ。
パキッ、パキキッ、バキバキバキ!
フッ、カッコつける。
ギィィィィ!!!
「「「開いたァ!!!」」」
「これが、シントウ流の力だ!」
―――――
「あらあら、おねいさんの結界を壊されちゃった」
「ラターニャ様の結界を壊せる者が?」
「こんな辺境に居たのねぇ。楽しみだわぁ」
「楽しみ、ですと?」
「そうよ。おねいさんの守りを崩せるなんて。可愛い男の子だと嬉しいわねー」
「既にこの地で、四人の魔人様方が強制帰還まで追い込まれております。その情報では、16、7才ほどの青年が二人と」
「楽しみね。おねいさん火照っちゃう❤」
氷の魔人が火照るのかよ。部下は率直に思った。
「あらあら、氷ではなく凍りよ?それに、凍りだからこそ火照るのよー。後」
「!」
「おねいさんは魔人ではなく魔女。魔人なんて無粋よ。次思ったら、凍らせるわよ?」
「肝に命じます」
部下は、本気で思った。心を読めるとか、魔女じゃん。
いや、魔女で良いのか。
「早くここまで来ないかしらねー」
―――――
「居るな」
「どうかしたか、リョーガ」
「ああ、居る。天守閣に、凍りの魔人が居る」
「オリヴィアさんもそこに居るはず。急ぎましょう!」