18話【そりゃね、異世界だもの。居ると思ったさ。人格までキモいとはね】
ったくよー。空気読んでくれよ。
普通さ、助けたら、救ったらそこでイチャイチャだろうよ。
つーか、なんかキメぇな。
凄い気持ち悪さ。
ありゃしょうがないか。
このために見張り役をつけてたが、抜けられたのか。
多分、倒されたのではなく、戦闘継続中か。
仲間、或いは手下に任せてきたってところか。
「おい、てめぇ、ジンはどうした」
「ジン?知らないねぇ。誰のことかなぁ?あぁ、前の大部屋に一人居たねぇ。もう戦闘不能だったからほぅってきたがねぇ?」
「そか、なら良いや。んで確認すっけどさ。お前の目的はヴェルを連れていくことなのか?」
「まぁ、そういうことになるかねぇ」
ヴェルこと、マーヴェルを説得?し仲間にした。
直後に乱入してきた変態。
なにかが来ることは予想してたけどさ。
こんな変態とはね。
構図としては、
ここは大きな、ホールみたいな場所。
入り口側に変態が居る。
中程に俺とヴェル。
俺が前に出て、ヴェルを後ろに庇ってる。
なんか、やけにビクついてるな。
「どうした?ヴェル、怖いのか?心配すんな。俺が守るからな」
「えっと、違う。なんか、あいつ、怖いというか、イヤ」
「まぁ、変態みたいだし」
「それもあるけど、違う。もっと、深くイヤな感じがする」
小声で話す俺達。
んー?どういうことだろ。
「てめぇ、アブザーダなのに、なんでエルフが必要なんだ」
「エルフというより、そこのお嬢さんだねぇ。とっても強い、そして稀有な能力らしいからねぇ。捕まえて洗脳しようかとねぇ」
うん、殴る。
でも駄目だ。もっと情報を。
「だがよぉ、てめぇに捕まえられるのか?確かに、ヴェルはスゲー強いけどさ。てめぇはどうなんだ?ヴェルを捕まえられる程強いってのか?」
「いやいやぁ?たぁしかに強いけど、まともにやったらそのお嬢さんの方が強いかねぇ。でもぉ捕まえられるんだねぇ」
「てことは、相性か」
「そういうことだねぇ。見せてあげようかねぇ。<解放ゥ>」
魔人が、変態が、変態を始める。
身体が溶け始める。
この変化は初めてだ。まぁ、魔人との遭遇自体少ないがな。
スライム状に変化、いや、あれはスライムというより、
「あ、ああ、ああああ。イヤ、イヤ、イヤァァァァ!!!!!」
「ヴェル!?大丈夫だ、俺が居る!!!」
恐慌に陥ったヴェルを俺は抱き締めて落ち着かせる。
変態は、触手に進化していた。
―――――――――
「触手?軟体動物タイプか?」
「いやいやぁ?触手という単体の生物だよぉ?」
「触手が苦手だったのか?」
苦手というレベルじゃねぇような。
「ああ、相性について教えてあげよぅ?エルフという種族はねぇ、触手に弱いんだ。それはもう、見ただけで身体がすくむ。決定的に相性が悪いんだよぉ?」
エルフ×触手=…………
誰得だ!
完全に薄い本向けじゃねぇか!
人間には、蛇を見ると恐慌状態になる遺伝子が組み込まれてるらしい。これは、猿から進化した人類の特徴らしいな。
それと同じことか。
生命の根幹に、触手は無理と、精霊族はなってるのか。
うん、おかしいね!
しかし、現にヴェルがめっちゃ怯えている。
可愛いことは確かだが、ここまで来ると可哀想過ぎる。
俺サドじゃねーし。
あん!?誰だじゃあマゾなのかとか考えたやつは。
俺はSでもMでもねーよ。
まぁ、どっちか決めろと言われたら、
Sかなぁ?前に刃のアホにSっぽくねと言われたし。
「キモいな」
「褒め言葉だねぇ。触手たる我々にはねぇ」
「………」
「おやおやぁ?まっ、君についてはどうでも良いんだがねぇ?退いてくれるかなぁ?」
「けっ。分かってんだろ。退くわけねぇ。ヴェルを守る」
「男を弄る趣味は無いんだけどねぇ。需要薄いし。まぁ良い。では行くよぉ?そうそう、名前は」
「ああ、いらん。めんどい。今日はもう疲れた。すまんが、速攻で決めさせてもらう。第一、てめぇは変態で充分だ」
「…酷いねぇ。まっ、君に出来るかどうか。そこそこ強いよぉ?このボクわっ」
聞いてるのもキモい。
なので、瞬加で近付き、刀で切り裂く。
「ふむふむ、ボクに刃物はあまり効かないよぉ?」
「だからどうした。再生機能ぐらい予想住みだ」
「なら、どうするとぉ?」
「決まってる」
幾重咲き、からの剣嵐舞闘。
再生するより早く、早く速く疾く!!!
切り刻む。
てか触りたくない。
「無駄だと言うのにねぇ。ボクの再生は君が考えたものとは多分違うよぉ?」
けっ、早く斬っても、再生より速くても、効果は薄めか。
ダメージも無さそうだ。
「君は、武術と、風系統みたいだねぇ。相性が悪い悪い。ボクはねぇ、炎とか爆発とかじゃないとダメなんだよねぇ」
「……。そうだな。俺に爆炎系は使えない」
そうか、効かねぇのか。
相性わりぃな。
だけどな。
「はぁ、なんてこった」
「悲嘆にくれるのは仕方ないねぇ。勝てないのだからねぇ」
「違うけどな。説明する気もねぇがよ」
「んんぅ?どういうことかn」
懐に潜り込み、右パンチ。
そして、爆発。
「なっ、何故ぇ……!?」
「説明する気無いと言った」
こいつ、触手の癖に動き遅いな。
いや、手部分が速いのか。本体はおせぇ。
この辺は、油断もあるけど。
左パンチ、爆発。左飛び膝、爆発。
回し蹴り、爆発。再度左パンチ、爆発。
「がっ、がっ、ぎゃ、ぐがぁぁぁ」
左蹴り、俗にケンカキック、爆発。
「なめ、るなぁ!」
触手を10本伸ばしてくる。
これは、指みたいだな。
だが無駄だ。
こちらもまた、十の刃が宙を舞う。
切り裂く。縦に、横に、ぶつ切りに、千切りに、滅多刺しに。
右キック、爆発。
ジャンプ及び急降下踵落とし、爆発。
左パンチ、爆発。
左キック、爆発。
おまけでドロップキック、おまけの精神で大爆発。
何故俺が爆発を使えるのか。
簡単だ、これは刃の爆発弾を利用しているからだ。
俺がこの大部屋に入る時の連携。
あいつそのときに、俺に銃弾を託した。
ったく、こういう場面で渡すと、その後に使い道がある。
もしくは、それで窮地を打開するとかあるけどさ。
役立ち過ぎだって。
爆発の威力は、俺が源子を大量に籠めてブーストしてある。
刃の爆発弾は、爆発するという機構を持っているが、
爆力は、源子量に正比例する。らしい。
「フフフ、なぁるほど。これはこれは。中々のものですねぇ」
「なんだが、これではボクを倒せない、とでも言いたそうだな」
「先取りしてほしくないですねぇ。ですが、事実。ボクを削れても、倒せない。一体どうしようというのでぇ?それに、この爆発、君の力じゃないねぇ。最後のドロップキック、かなりの爆発。つまり、弾切れだねぇ?」
これは多分意図したものじゃねぇだろうけど、
ドンピシャだな。
「だからどうした」
「ならば!ここからは、ボォクのターンですねぇ!」
「はっ、こねぇよてめぇのターンは」
「えっ?」
決めるか。
爆発弾は、後1発。
勘違いどうも。まっ、そのように爆力を変えたけどさ。
刃の瞬間創造弾数は、俺の知ってるあいつで12発。
11発使って、試した。
俺が今出せる源子をありったけ弾丸に注ぎ込む。
弾丸は握った右手の中に。
シントウ流の、基礎にして奥技。
「<シン、ッケン>!!!」
踏み出し、右手を振りかぶる。
生まれる現象は、
「ギャァァァァァァ!!!!!」
触手全てを無差別に払う爆発と、
変態の断末魔。(正しくは違う。どうも逃げたらしい)
これぞシントウ流奥技、【シンケン】。字は、真拳だ。
「もう大丈夫だぜ、ヴェル」
「うっ、うん!って右手!」
「これか?大丈夫大丈夫」
爆発を制御したわけじゃないし、俺には無理だし。
右手ごと爆ぜた。
つっても、真拳には拳の防御もあっから、
なんとか動くけど。
ヴェルが俺の右手を見つめてる。
気にしなくて良いのに。いや、違う。
ヴェルが俺の右手に精霊を送ってる?
「んっ。これは、回復魔法?」
「癒しの精霊を付与した」
「おっ、痛みが引いてく。治り始めてる。スゲーな。回復まで使えんのか」
「うん、良かった。この力は好き」
「あっれー。良かった良かった。ちゃんと仲良くなってんなー」
「ジン。ヴェル、こいつはジン。俺の親友だ。視てたんだろ?」
「うん、よろしく」
「リョーガに隠れながらかー。まぁ良いや。しかし、役に立ったみてぇだな」
「ああ、最高だぜ」
「すまんな。変態を一人通しちまった」
「良いよ。バテてたんだろ。今もバッテバテだ」
「リョーガもな」
お互いに、満身創痍。
「さて、行こうかヴェル。俺に付いてきてくれるんだろ?」
「うん、行く!」
「ここはどうする?荷物とか」
「あっ、ちょっと待ってて」
―――――――
「けっ、良い技手に入れたみたいだな」
「そっちこそ、可愛い長耳っ娘を落としたみたいだなー」
「手ェ出したら、ジンでもマジでヤるかんな」
「へっ、オレがそんなやつに見えんのかー?」
「それはどうかな?親友」
「濁すなよ、親友」
―――――――
「ごめん、待たせた」
「いやいや、結構早かったな。そのザック1つで良いのか?」
「うん、大丈夫」
「なら、外に仲間も居るから合流しよう」
こうして、エルフのダンジョンをクリア。
中ボス、モンスターボックス。
ボス、 マーヴェル。
裏ボス、変態。
マーヴェルを仲間にして、終了。
おかしいな、大して時間かかってないはずなのに、
数週間くらいかかった気がする。
後始末は、明日から!
次回へ持ち越し!
また次話で!
これ、後書きで良いような。