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真実の中の虚構世界《フィクショニア》  作者: AKIRA SONJO
第2章【首都奪還プロジェクト、女の子が最優先です】
21/54

17話【本題に入ろうか、話が進まないんでな】

その頃の女子陣。


「暇だな」


フェイクライナ国近衛隊長シンシアが呟く。


「そうですね」


ゴゥアフト、フェイクライナ方面纏め役ティーことロッティーも呟く。

その他ゴゥアフトメンバー3人も暇そうにしている。


エルフを仲間に引き入れるという名目で来たのだが、

ここに残るように言われたので大人しく待っているのだが。


「何がモンスターを警戒してろだ。まるで見掛けないではないか」

「この辺り、もしかしたら何らかの結界が張られているのかもしれませんね」

「ならば、私達はここで警戒する必要性があるのだろうか」

「………体よく置いてかれた感があるような気も」


基本的に喋る、いや呟くのはこの二人だけ。

他の3人は、単なる任務なので暇は暇で良いようだが、


「折角ジンにくっついてきたかいがないじゃない」

「何のために私はついてきたのだ……!」


思春期によく見られる感情を持て余していた。


「私は別に恋などしては……!」

「いきなり叫んで、どうかしました?」

「いや、何か感じてな」


恋なんて誰も言ってないのに。


「そういえば、何故君は敬語なんだ?」

「えっ?いやその、色々あったので……」

「別に同い年位だろう?敬語など要らないぞ」

「流石に、近衛隊長は権力も凄いですし…」

「そんなことは気にしなくて良い。元々、権威を振りかざすつもりなど無いからな」

「それに、貴女は貴族ですから」

「!!?」

「アタシ達は、基本的に貴族は毛嫌いする傾向にありますが、貴女は良い人だと判ってますから」

「そうか、知っていたのか」

「ええ、調べることはゴゥアフトの任務の1つですから」

「私は、自分が貴族の出であることは好ましく、いや、嫌悪している」

「勿論、言いふらしはしません」

「だから、私は単なる近衛隊長、一兵士で良い。だから、敬語は止めてくれ。その方が気楽で良い」

「それでは、……それじゃあこれで良い?シンシア」

「ああ、ありがとうティー」


はっきり言って、微妙な関係だった二人。

ちょっと仲良くなったところで、


「おやおや、邪魔が居ますねぇ」


変態が現れる。


―――――――――


「!?」

「皆、構えて!」


シンシアは細身剣レイピアを構える。

レイピアと言えば突きの為のイメージが強いが、

それはフェンシングの影響だろう。

初期のレイピアには刃はついていて、尚且重量もある。

この世界では、騎士階級に好まれる武器だ。

美しさに加え、攻撃力もある。

シンシアは単に、適性があったからという武人めいた理由だが。


ティーはゴゥアフトメンバーを後ろに下げ、サポートに徹させる。

ティー自身は、身体に巻いたベルトから、筒状の物体を取り出す。

言うなれば、つかだろうか?


「<柄より出でよ剛なる棍よ>」


柄から、エネルギー、源子が迸り形を成す。

文の通り、棍の用に。


「貴様、何者だ!」

「ふぅむ、違うねぇ。褐色でもないねぇ。後ろの3人も違う。君たちに用はない。用があるのはエルフだけだからねぇ」

「エルフに何をするつもり?」

「なぁに、強い力を持つと聞ぃたのでねぇ?拐いにきたに過ぎなぁい。邪魔をする気かなぁ?」

「なんか、気持ち悪い」


外見、一見すると普通だ。

スーツのような服を着て、髪はオールバック。

顔立ちは悪くは無いだろう。

だが、何だろう。

顔付きがいやらしい。

生理的に受け付けないと言うべきか。

周りにいる、粘着質で、ぬめっとした性格、

両生類みたいな人間という評価が近いだろう。


「倒すのはともかくぅ、面倒ぅ、面倒ぅ」

「きっ、気色悪い」


女子陣は悪くないだろう。

キモいのだ。

そして、言われて喜んでいる節もある。

しゃべり方は何処ぞのゆるふわ系研究者と被っているのだが、

こちらはキモさが具現化したようなものだ。


「ふぅむ、解放かいほぉう

「!、魔人(アブザーダ)か!」

「御名答ぅ、でも相手はしないねぇ。こやつらに任せよう」


魔人達は【解放】というなんの捻りもない文言で力を、

本性を覚醒させるらしい。

今までは、外見も大きく変わっていたのだが、

変化は薄い。

強いて言えば、髪が黒から毒々しい黄色に変化したぐらいだろう。

そして、解放後、腕を振った。


「あれ、は……!」

「まさ、か」


振った先の地面に、何かが蠢いていた。

地面から、栄養を吸い大きくなる。

たくさんの触手を滑らせて。


「「「「「キモい!!!!!」」」」」


全員の感想が、一致した。

リョーガ達が居たらこう言うだろう。

触手好きドMの変態魔人!?


「さぁて、任せましたよぉ、きみたちっ!足止めぐらいやっておきなさい」


意外?にも素早く扉を開け入ってしまう。


「しまった!キモくて捉えられなかった!」

「それは仕方ない、相手は魔人だ。それよりシンシア、こいつらをどうにかしよう」


蠢く触手は3体、キモさ全開の緑色。

乙女達は、絶対に触れることなく倒すことを決意した。


―――――――


「やっと、辿り着いたぜエルフっ娘」


時は少し遡り、リョーガがエルフの元へ突入したところから。

やっと主人公に視点が戻る。


「……………………」

「ヲイヲイ無言ですか」

「エルフと種族名で呼ばれるのはキライ」

「そうか、だが俺は君の名前を知らない。知っているのは【ヴェル】という愛称らしきものだけだ」

「っ!……。マーヴェル、マーヴェル⚫ダウティクス。それが名前」

「へぇ、良い名前だな」


それを言った瞬間だった。

バァン(マーヴェルが炎弾を放った音)

スパァン(俺が刀を創造、斬った音)


「いきなりだな」

「何が…、良い名前なの。こんな、こんな」


刃が血路を開いて造った道を、

一刃乃突颯にてくぐり抜け、

扉をこじ開けて入り、

話しかけて30秒で決裂かよ。

いや、違うな。

この反応、考えろ。

俺の武器、思考すること、分析すること、読み解くこと。


「成る程、嫌ってる。違うなそんなレベルじゃないな。呪ってるのか、自分の名前を」

「……そう、わかるの。呪ってるよ、こんな名前」

「エルフにとって何らかの意味合いがあんのか、もしくは過去に何かがあった雰囲気だな」

「凄い洞察力」

「そりゃどーも」

「褒めてない」


マーヴェルね、良い名前だと思うんだけどなぁ。

俺が知ってる意味とは違うのかねぇ。

ん?そういやヴェルって、おかしいような。

確かマーヴェルの略称、愛称はマーヴとかだったはず。

まぁ良いか、文化違うし。


「貴方は、仲間を置いてきたのね」

「ん?なんか酷い言い草だな」

「事実、400のモンスター、ワタシの強化もかかってる。その軍勢がいる場所に貴方は仲間を置いてきた」

「んー、それがどうかしたか?寧ろ君が何故心配するのかが分からないな」

「ワタシは死ぬところはみたくない。ただ追い返したいだけ。でもここまで辿り着いてしまった。二人なら逃げられる。でも一人じゃ逃げ出すことも難しい」

「ほう、追い返すね。そのわりには別の意図を感じたんだがな。つーか、あのモンスターは操ってないのかよ」


マーヴェルは優しい系だな、決定。

ツンデレってわけでもねーよーだが、

照れ屋ではありそうだ。


「あのモンスター達は、ワタシに襲わないようにしてるだけ。命令には従わない」


想像通りか、ここまで合ってるとチートくせぇな。


「ふーん。でもよ、1つ間違ってるぜ?」

「なにを?」

「ジンは負けねーよ」

「確証はあるの?」

「ああ、ある」

「どんな?」

「あいつが、刃だからだ。それだけで充分だ」

「……!?」


絶句してる。

理由になってないもんな。


「扉はどうしたの?」

「扉?」

「あの扉は、モンスターを全部倒さないと開かない仕組み」

「ああ、そういや鍵かかってたな」

「どうやって開けたの?」

「壊した」

「貴方、デタラメ」

「俺にとっちゃ誉め言葉だね」


シントウ流には、良い子は真似すんな、悪い子は別に良いよ、

という、覚えちゃダメな技術がある。

シントウ流は、格闘術じゃあない。

あらゆる技術を吸収している。

そう、あらゆる場面で役にたつように。

そして、そのなかに盗賊系の技はどれ程あるだろうか。

いやいや?使ってませんよ?

元の世界で使うことなんて有りませんでしたよ?


んで、今回使った技はシントウ流<抗錠壊耐コウジョウカイタイ>。まぁ、錠、鍵を壊す技だ。

といっても、壊す対象には、魔法や術式も入る。

モンスターの生体反応とリンクしていた、

扉を閉めている鍵を壊したってわけだ。


「それで、貴方の目的は?」

「君を、フェイクライナを救うための戦力としてスカウトしに来た」

「随分と自分勝手ね」

「というのが、姫様達を納得させるための建前だ」

「…え?」

「本当は、単にエルフと会いたかっただけだ!」

「………バカなの?」

「バカで結構!」

「じゃあ、叶ったんだから帰って」

「おっと、そうするわけにはいかないな」


そう、一目見た時から決めたんだ。


「もう、建前やらなんやら関係なく、仲間にしたいと決めた」

「それは、エルフだから?もしくは強い力を持っていそうだから?或いは」

「可愛いからだ!」

「………」

「可愛いは最強だ。理由になる」

「……本当にそれだけなの?」

「まぁな。つっても俺は外見だけで全ての判断はしねーよ。話してるうちに、君の人となりは少しずつ分かってきた。んで、より仲間にしたくなった」

「……それで、どうするの?ワタシはお断り」

「んじゃあ説得するよ」

「無駄、仲間になる気は無いし。帰って」

「嫌だね、仲間にすると決めた。帰らん」

「力ずくで追い出すよ?」

「追い出せるものなら」

「殺したくなんて無いけど、死ぬ可能性もあるよ?」

「殺せるものなら」

「そう、バカなのね」

「言ったはずだ。バカで結構。それに、俺に勝てると思ってるのか?」

「なら、試してみる?」


途端、マーヴェルから放たれる威圧感が大きくなる。

でもな、君は優しいよ。

殺気は無い、害意すら薄い。

君からは、試しているような印象を受けるんだ。

その理由は分からない。

推測しか出来ない。

俺が君を仲間にすることに決めた理由、

それは簡単だよ。

寂しそうなんだ?とても、とても。

悪いが、全力で行かせて貰う。

君を1度倒す。君を助けるために。

さあ始めよう。さあ、物語を進めよう!


――――――


「<支配を受(スピリチュアル)()し精霊群(ドミニオン)>」


マーヴェルが文言を放つ。

ん?なんだ、技名?スピリチュアル⚫ドミニオンだと。

精霊の支配権といったところか?

でも、発動形式が違う。

そして、起こる現象は、


彼女に周りに、使役精霊が現れる。

彼女を王として、数十、数百の精霊が顕現する。


「おいおい、なんて数だよ」

「今まで貴方たちにぶつけてきた精霊とは、比較にならない」

「だろうな。しかし、技名による魔法行使とは。最初に命令文型使ってたから、てっきり人間と同じと思っちまったぜ」

「それは、使えるというだけ。元々使役精霊魔法に、言葉は要らない。意思を伝えれば応えてくれる」

「便利なこった」


俺は刀を構える。

これだけの数、さっきのモンスターボックスと大して変わらん。

だが、違うのはマーヴェルが操るということ。

刃はよく誤解したり、間違って認識していることがあるが、

シントウ流とは、全局面に対応するために創られたもの。

相手が多数ならば、それに対応するまで。

事前にありとあらゆる技を、

足りなければその場で創り、造る。

今回使う技は、


「シントウ流<颯舞>!」


襲いかかってくる多種多様な使役精霊達。

それを、颯舞の高速の斬撃で、切り払っていく。


「ワタシを舐めてるの?」

「なんのことだ?君を舐めるだなんて、するわけないだろ。ただでさえ精霊一杯できついってのに」


事実だ。敵は多く、さらに強い。

それでも、俺の方が速い、速いからこそ対応出来ているだけだ。


「その、ハヤテマイという技はもう見てる。貴方なら、ワタシが視ていたこと位気付いてる。なのに、同じ技を使った。舐めてるとしか

「ハッ、舐めてるのはどっちだ」

……どういうこと?」

「もしかして、1度見たくらいで俺の颯舞を攻略出来るとでも?バカにされた気分だ。颯舞は俺の技の中でも、特に気に入っている技だ。そして、攻略不能(⚫ ⚫ ⚫ ⚫)を唱ってんだよ」

「攻略不能、大きくでるのね」

「ああ、それだけ自信があるってこった」

「なら、崩す」


使役精霊が殺到する。

戦意を秘め、だが害意は薄いままに。


シントウ流四大舞闘が1つ、颯舞。

それは疾風が如く、刀を閃かせ、全ての敵を一息に切り裂く。

という技ではない。

元々、シントウ流、舞闘の類いは瞬間発揮の必殺技ではなく、

長期戦用の技術体系だ。

舞闘の名の如く、踊り、日舞からコサックダンス、サンバなど、節操なく俺は取り入れている。

この舞闘とは、踊りという技術を、体術に組み込む冒涜にもなりかねないものだ。

目的は、疲労を最小限にしつつ、長期戦を戦う為のもの。

想定は、局地戦制圧、一点防衛など。

俺は普段から颯舞を使っていたが、刹那的なものばかり。

颯舞は、攻撃が高速連撃という形をとる。

そのため、俺は好んで使ってた。

単に好きな技だからというのも否定しない。


颯舞を、本来の形で発動すれば、

体力、身体疲労を抑えながら、連撃を放ち続けることが可能となる。

ただし、精神的に疲労しやすくなる。

それは、一瞬一瞬で判断を下しながら、

消耗の少ない動きをとるからだ。

思考は常時フル稼働、それでも、肉体的疲労よりは軽いものだ。


放たれる使役精霊達を、

ステップを踏み、合わせて腕を閃き、敵は散っていく。


「なんで?攻撃パターンが読めない」

「何でだろうね?」

「っ!」


攻撃密度が上がった。


颯舞は、経験を積めば積むほど強くなる。

これは、RPGのレベルとかじゃない。

颯舞の動きは、経験によって増えていく。

それは、一人で素振りするより、戦闘時でより増えていく。


颯舞の真骨頂、それは瞬間判断に基づく最適解の行使。

つまり、その状況下で、自分が有利になる行動を起こす。

ただ、それだけ。

刹那より短い時間で、最も優れた行動を選択、

そしてそれを行使する。行使し続ける。

例えば、敵に囲まれた際、誰から倒すか、どの攻撃は避け、

どのタイミングで防御するか。

そして、判断した行動を正確に行使することも重要。

颯舞には、センスと経験が要求される。

経験は、無数の攻撃パターンを生む。

今この瞬間に増えていく。


何故俺が【颯舞】と名付けたのか。

簡単だ、名前からのイメージによる誤認識を狙うため。

颯舞と聞けば、速い攻撃だと想像するのは容易いだろう。

それを狙う。そこで思考を止める。

それによって、颯舞の本質を隠す。


斬って斬って斬りまくる。

3分程経った。


「!……モンスター達が、倒された!?」

「ほう、流石。なっ、言ったろ。あいつなら大丈夫だってな」

「でもこれで、全力を出せる」

「やっぱりな」


倒されれば、そいつらに使ってた制御力が戻る。

厄介度が増したな。


「強いな。俺の颯舞で防戦一方になるとは」

「よく言う。攻めきれない、余裕のある完璧な防御」

「エルフってのは、皆こんなに強いのか?それとも、君だけ特別なのか?」

「特別っ!なんかじゃ、ない!!!」


攻撃の密度が更に増した。


「こんな力要らなかったのに。こんな、力なんて」


力を持った者の悩み。持ってしまった者の悩み。


「君がこんなところで一人でいるのは、そのせいか?」

「っ!本当に良く頭が回る」

「そりゃな。結界まで張ってあったし」

「それで何が判るの?」


結界については、ここに着いたときに把握した。

俺たちに害するものじゃなかったから、

何もしなかったけど。


「結界は気付かれない為の隠密。そして、特定対象の侵入不可の二種類。その対象もまた2種。モンスターと、精霊族エルフ、なんだろう?」

「結界に気付いただけじゃなく、仕様まで読み取るなんて。どんな感覚をしてるの!?」

「さぁ?ビジターだからじゃねーの?」

「それは関係無いと思う。でも、なんのために張ったかなんて、貴方に判るの?」


ふぅむ。試されてるな。

敵対心を見せようとしてるが、甘いな。甘いよ。

俺には通じない。

判るわけがない、でも判って欲しい、ってか。


精神支配(⚫ ⚫ ⚫ ⚫)という、強すぎる力を持ったが故に迫害され、ここで一人で居る」

「っ!……なんで、それを」

「判るさ。俺ならな」


スピリチュアル⚫ドミニオン。

マーヴェルは精霊使役の技をこう呼んでいた。

直訳すれば、【精霊を支配する】で良いだろうが、

俺はこの技名を、総括的なものではないかと考えた。

技名ってのは、あらゆる種類があり、

その技に、何を籠めたかを端的に表してるからな。

スピリチュアルってのは、精霊的という意味。

そして、別訳として、精神的という意味がある。

モンスターを操っていたのはこれだろう。

モンスターにも精神があることは、何となく解っている。

戦ってたら、何となーく有る気がした。

結界を張るのも、これだろう。

ドミニオンには、領地とかの意味がある。

精神に作用する結界ってところか。

気付かれない、も、近寄れない、も、

精神に対して効果を及ぼしてる気がするしな。


「やっぱり、君は優しいんだな」

「何をっ、言ってるの……!」

「精神支配を使えば、迫害されるどころか女王になることだって可能だろう。なのに君はしない。それは優しいからだ」

「優しくなんてっ!」


ちょっと泣きそうになってる。

涙目ってのも可愛いね。


「それに、最初に俺に撃った風の攻撃。クッションも有ればダメージも無い。ここまで来るときの精霊達の動き。全部おかしかったぜ?君の力、強さに全く見合ってない」

「そ、んなことは」

「手加減じゃなくて、俺達に怪我をさせたくなかったんだろ?第一、心配してたよな?モンスターボックスについて。君は優しいんだよ」

「もう、やめて」

「やめないさ」


あっ、戦いながら話してるよ?

攻撃の密度は少し落ちてるけど、俺はずっと颯舞で、

精霊と踊り続けてる。

颯舞を選んだ理由はここにもある。

戦闘中に喋るとかさ、普通無理じゃね?

でも、それが出来た方が役に立つ。

そう厨二パワーを持つ俺は考えた。

颯舞は無意識領域の判断で動いてる。

その方が、相手の動きに対応する速度を得られる。

でも、疲れるねえ。

まっ、マーヴェルと話すのは楽しいけれど。


「貴方に何がしたいの」

「そうだな。君をここから連れ出したいかな。最初は仲間に引き入れる為だけど、今は違ぇ。君を救いたい」

「……貴方には無理だよ」

「ほう?なんでだ」

「貴方は強いけど、ワタシより弱い」

「なにぃ?」

「ワタシの精霊達を突破出来ない。それが証拠」

「なら、突破してやるよ」

「どうやって?貴方の力はもう把握した。貴方には不可能」

「把握した、ね。シントウ流には無意味な言葉だな」


確かに、俺じゃあこの精霊達の壁を突破するのはムズい。

一刃乃突颯は突撃用だけど、精霊達を一掃しなくちゃ、

すぐにまた囲まれる。

なら、一掃すれば良い。

そして、力が無いなら成長すれば良い。


「シントウ流は進化する。進化して、到る」


望むは精霊の一掃。

一振りの刀では足りない。

ならば、一振りじゃなければ?

例えば、十の刀の乱舞なら?


「シントウ流<幾重咲き>」


両手で2振り、回りに8振りの刀が浮いている。

いや、刀じゃなくて良いな。

望む。願う。創造する。


「刀が、剣に?それが10本?」


振り、な。やっぱ形状変えられるのか。

幾重咲き、幾重は名の通り。

咲きは、裂きや割きに通じる。

そして、幾重咲き発動で使うことが出来る技。


「シントウ流<剣嵐舞闘>!!!」


剣が嵐が如く舞い、使役精霊達を切り刻む。

両手の剣は閃き、宙空の剣達は次々と軌跡を残し舞い踊る。


幾重咲きは単に刀、剣を造り出すだけ。

それを使うのが、この剣嵐舞闘だ。


「そんなっ!?ワタシの精霊達が、追い付かない!」

「これがシントウ流だぜ、マーヴェル!!!」


かかった時間は15秒程か。

かなり疲労する技だこりゃ。


「どうだいマーヴェル?俺はつえぇぜ」

「それでも、ダメ」

「なん、そうか。もしかして、精神支配は操りきれないのか?」

「っ!本当に、なんで判るのかな。そう、ワタシのスピリチュアル⚫ドミニオンは、人を、エルフを無意識に操ってしまう。ワタシはそれを制御仕切れない。だから、ワタシは」

「一人で居る、か。なら、心配は要らねぇ」

「な、に?」

「俺に掛けてみろ」

「!、イヤ。もう、操りたくない!」

「心配すんな。操れねぇよ俺は」

「根拠はあるの?ワタシは、イヤだ。操るのは」

「根拠ならあるさ」

「?」

「君が泣いている。君が悲しんでいる。俺は君を助けたい。救いたい。それだけで、俺は強くなれる。だから、効かねぇよ」

「………ヒドイ根拠。根拠になってない」

「そんなもんさ。俺を信じてくれ。俺は絶対、君を悲しませない」

「………。うん、信じてみる」


博打だこりゃ。

根拠なんかねーよ。

でも、確信はあるさ。

ここでやんなきゃ、俺じゃねぇ。


「行くよ。……えっと」

「俺としたことが。俺はリョーガだ」

「うん、リョーガ」


マーヴェルから、源子が、精霊が、精神支配の力が放たれる。


「信じてるから。だから、<ワタシの頸を絞めて>」


手が、動く。腕が、両の腕が、頸に伸びていく。


「こうなっちゃうのか。良いよ。貴方なら、リョーガなら良いよ」


腕が頸に。

そして、背中に回し一気に抱き寄せる!


「なぁに言ってんだ」

「……え?」

「言ったろ?操れねぇってよ。ったく、勝手に諦めやがって」

「えっ、えっ?」

「信じるって言ってくれたのは嘘なのか?」

「違う!違うけど、本当に」

「ああ、効かなかったよ。全くな」

「……っ、……ぅああああん」

「おっと、まっ泣いとけ。泣くのは良いことだぜ」


精神支配か、なんで効かなかったんだ?

確かに力を感じた。俺の中に、精神に干渉があった。

でも、効かなかった。

どうも、俺にゃあまだまだ未知があるようだな。


数分後。


「大丈夫か?マーヴェル」

「マーヴェル、か」

「そういや、なんて意味なんだ?」

「エルフではね、【精霊に愛された者】」

「なんだ、良い名前じゃねぇか」

「今はちがう。今は【化け物】、だって」

「なるほどね、だから嫌ってんのか」

「うん」

「なら、意味を変えてやるよ」

「え?」

「俺の知ってる意味はな【奇蹟】っつう意味だぜ?」

「きせ、き?」

「ああ、君にピッタリの意味だ。マーヴェル」

「奇蹟、奇蹟か」

「愛称もあるんだよな。ヴェルと呼ぶか?」

「うん。リョーガのお陰で、名前を好きになれそう。でも、呼ばれなれてるから。ヴェルって呼んで。でも、珠にはマーヴェルって呼んで」

「難しい注文だなヴェル。てことは、俺に着いてきてくれるのか?」

「うん。でも、リョーガに着いてくけど、フェイクライナは関係無いからね?」

「ああ、それで良いさ。歓迎するぜマーヴェル」


マーヴェルが、仲間に、なった。

♪♪~~♪♪♪~~~~~~♪♪~~♪~~~

(お好きな仲間サウンドを)


――――――――――


「さてと、良い雰囲気なんだ。邪魔しないでくれ」

「おぅやおや、気付かれて居たとはねぇ。でぇも、その娘は必要なんだよねぇ」

「連れてくってのか?」

「そうなるかなぁ?」

「なら、てめぇをぶっ飛ばすぞアブザーダ!!!」

「邪魔だねぇ君も」


全く、少しはイチャイチャさせろよなー。


次回へ続く!

えっ続くの?


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