16話【ここはオレに任せておけ。なんのために親友なんてポジションがあると思ってる】
今回もオレ、ジンがお送りする。
なんでかって?
簡単さ。前回切っちゃったからねー。
エルフのダンジョンを攻略するオレ達。
第3層で、デカイ雷の鳥をギリギリ倒した。
後1層で終わりだぜ!
と扉を開けたら、
「モンスター、ボックスだと!?」
そう、ボスではなく、たくさん。
質ではなく量の暴力。
しかもだ。見たところ、使役精霊じゃねぇ。
あっ、使役精霊ってのはエルフ族の得意とするもので、
万物に宿る精霊(低級)を使役し、
様々な現象を起こす。
人間の魔法が、火の玉で壁を壊すとしたら、
エルフは火の精霊を、玉状にし、壁に突っ込ませる。
結果は同じでもプロセスに違いがある。
故にエルフ達は、精霊族と呼ばれる。
ややこしいね!
エルフ達は御約束通り、魔法の力に長けている。
ここにいるエルフも、相当の実力者だろう。
使役精霊のモンスター?を沢山ぶつけてきたしな。
でも、だからって
(これは無いだろう………!!!)
見えるだけで100体はいる。
色んな種類の奴がわらわらと。
ん?あれ?
これは、どういうことだ?
(こいつら、使役精霊じゃねえ!そこらにいるモンスターか!?)
(そうだ。こいつらは、操られてやがる。だが、命令系はイジッて無さそうだな)
(どういうことだ?)
(負担を軽減するために、【自分への攻撃禁止】だけを植え付けたんだろう。だが、強化はかかってるな)
(………つまり?)
(通常の10倍になったモンスター達が、俺達に攻撃してくるってことだ)
(どーすんだ!?こんだけの数、スタミナ持つか?)
(ムズいな。奥に見える扉を抜ければ、ボス格のエルフッ娘がいる。体力を残しながらイケるかどうか………!)
(ん?この大部屋抜ければ良いのかー?)
(ああ、だがその方法が)
(なら簡単だ)
(何!?……まさか!)
(ああ、オレを置いていけ!)
(んなこと出来るかっ!なら俺が)
(そいつぁーダメだなー)
(何ぃ!)
(解ってるはずだ。あのエルフに合うのはお前だリョーガ。そもそも、お前が仲間に引き入れると言い出したんぜー?)
(だがっ!)
(優柔不断は似合わないぜー?それに時間が無い)
(くっ!)
実はこのアイコンタクト会話、かなり高速で行っている。
それが出来るのは、高速の思考と読み取り、
つまり、頭の良さと年季の長さだ。
普通の会話より、よほど早く意思疏通出来る。
(リョーガのことだ。思い付いてたんだろ?)
(まあな)
(なら、オレの銃で突破口をこじ開ける。そしたら突撃系の技で突っ込め。シントウ流にあんだろ?無ければ創れ)
(無茶言うね。………けっ、腹ァくくったぞ。俺はお前を置いていく。ここのモンスターはオートだ。本当に殺されるだろう。それでも俺は置いていくぞ)
(ふん、舐めんなよオレを。さぁ時間がねぇ。3秒後だ!)
(早いなオイ!だが的確だな。こちらも準備完了だ)
(2……1……行くぞ!)
パパパパパパンパパパパパパンパパパパパパンパパパパパパンパパパパパパンパパパパパパンパパパパパパンパパパパパパン
両手拳銃による一斉総射、瞬間リロードで+3回。
計48発の銃弾が、扉とオレ達の直線上にいるモンスターを蜂の巣へと変える。
ん?48発じゃキリ悪いって?
良いんだよ、後12発は他のことに使うから。
クイックリロード&ショットの技術は元々あったんだ。
でも、消費が激しくてね。
威力はデカイが、疲労もデカイ。
効率優先だったからな。今は良いの。
そして、撃った弾の種類は同じじゃない。
貫通爆発破壊を織り混ぜた弾幕。
一度にリロード出来るのは一種類じゃない。
これもまた、消費がデカイからあまりしないけどな。
貫通した経路に爆発が通れば、爆発の衝撃力は貫通方向に。
爆発で脆くなった箇所に破壊が起これば、
破壊の範囲はより大きくなる。
こんな感じに相乗作用を起こすのが、オレの技術ってわけだ。
さてと、道は空けたぜリョーガ
「!?……ハアァァァァ!!!シントウ流<一刃乃突颯>!!!」
ほう、成る程。
一刃乃風は貯めた斬撃+風を放つ。
一刃乃帯楓は斬撃+風を刀に留める技。
そして一刃乃突颯は、帯楓状態で、自らを風として突っ込む技。
本当に突撃技あったんかい。
流石だな。
そして、風を纏い、前方全てを斬撃の嵐で斬り飛ばしながら進むリョーガは、扉へと辿り着く。
「んじゃ行ってくる。さっさと流せ、こんな雑魚敵」
「おーよ、そっちこそ、ささっと仲間にしてこい」
死ぬなよ!とかは言わない。
オレ達は死亡フラグを甘く見ていない。
あれは凄いからな。
つってもまぁ、周りは全て、敵、敵、敵。
オレ、源子残り少ない。残弾数少ない。
体力あまりない、疲労大きい。
敵、強化され10倍以上。
数は多い、種類バラバラ、近遠どちらもいる。
ははっ、笑えてくるね。
でも、
「負けるかよーーーーーっ!!!!!!!」
―――――――――
右から来るモンスターに貫通と破壊を撃ち込む。
左には光を放つ。
前には爆発で弾幕を。
後ろには確認せずに通常弾を乱射。
そして上には、衝撃弾で狙い撃つ。
オレを生かしているのは、リロード&ショットだ。
消費だの疲労だの効率だの、全てを無視し撃ちまくる。
ちなみに、弾の威力はある程度変えられるんだ。
さっきリョーガを突っ込ませるために撃ったときはフルパワー。
お陰でごっそり源子を持ってかれた。
今はとにかく撃ちまくる。
威力は弱めでも、とにかく撃つ。
相手と一定の距離を保つ。
一度に襲い掛かってこれる数は限られる。
だが、それは人間サイズの話。
結局のところ、どれだけ撃ったところで、穴は生まれる。
狼型が襲い掛かってくる。
その後ろからは鳥型が。
横からは猫型が大軍を成し、
ゴリラが退路を断つ。
何故ゴリラ?
そんなことに思考を割く余力は無い。
さて、銃は中距離戦用の武器だ。
至近距離では使い勝手が悪いことは分かるだろう。
だが知っているだろうか。
近接拳銃格闘術が存在することを。
聞いたことは有るだろうか。
ガン⚫カタという、有り得ない幻想の戦闘方を。
狼を撃ったところに猫が来る。
それを右の拳銃で叩き払う!
右に重心を移動、右の拳銃が後ろを向く。
総射、ゴリラをレンコンに変える。
鳥をかがむことで回避、立ち上がり様に拳銃を叩き込む。
残っていた猫を、距離があるものは撃ち、
近いものは拳銃そのもので叩き払う。
本来のガン⚫カタは、相手も拳銃やマシンガンを持っていることを想定したものだが、相手はモンスターだ、気にしない。
そもそも、ガン⚫カタといっても、オレ用に解釈やカスタマイズしてるから、本来のものとは大分変わっちまっている。
だが、ガン⚫カタの強みの1つ。
常に安全圏を確保し、大多数の敵を撃破するところはキッチリ組み込んでいる。
リョーガにも、元の世界で付き合って貰って開発してた。
厨二病?それがどうした、今使えてるから厨二じゃねぇ。
そして、技術を2つ加える。
時には撃ち、時には殴り、時には蹴る。
避けて避けて避け続ける。
そして、拳銃を宙空に放す!
空いた右手でグーパンチ。
そして、宙空の拳銃から銃弾が放たれる!!!
さっき気付いたオレの技術。
意識発射だ。
しかも、思った通り遠隔起動化。
遠隔な分、消費は大きくなるがな。
パンチの後、拳銃をキャッチ、すぐさま撃つ。
後ろから敵が来る!しかもデカイ。
オレは後ろ蹴りを放つ。
ガッ、バァァァン!
爆発のおまけ付きでな!
これが2つ目の技術、弾丸によるエンチャントだ。
オレは普段、拳銃の中に直接弾丸を創造する。
その方が楽だし、リロード&ショットには必要だ。
だが、弾丸は発射しなくても、効果を発揮することが出来る!
勿論、撃った方が効率は良い。
だが、衝撃弾を指の間に挟みながら殴れば、衝撃生む拳打。
踵に爆発弾で爆発する蹴りとなる。
さらには、爆発弾をそのまま投げつければ、
簡易的な手榴弾に。
照明弾は、その名の通りフラッシュとして使える。
威力は弱い。だが汎用性が高い。
これもまた、効率が悪いというだけで使わなかった技術。
だがな、効率が悪いと言っても、
「効力はすげーんだぜー?」
拳銃を、さながら芸者のように操り、
時には手で、時には空中で発射。
拳は衝撃を、破壊を、貫通を、爆発を生み、
時折放たれるフラッシュやボムが敵を乱す。
これこそ、対集団用決戦戦闘術、ガン⚫カタ。
なんてな、まだまだ弱いし、経験もなければ技術もない。
さらに、この技術は、自分と同格以下の相手にしか通用しない。
リョーガのシントウ流は、格上相手を想定している。
つまり、将格を対象としたものだ。
オレのは真逆。
雑兵を薙ぎ払う為に造られたもの。
だとしても、
「この場面においては、使えるよなぁ!」
前後左右上下あらゆる方向から、
猫型、犬型、猿型、鳥型、人型、幻獣型、あらゆるモンスターが、
炎、水、雷、草、氷、風、あらゆる属性の攻撃が、
その全てを、オレの銃弾で、拳銃で、拳で、蹴りで撃ち砕く。
時間としては5分程だろうか。
体感ではかなり長く感じているがな。
凡そ300のモンスターは砕いただろうか。
続々と出てきやがって、まだ100体くらい居るだろうか。
どうやら増援は打ち止めみたいだな。
そして、それは訪れる。
前から飛び掛かってくる炎狼型を右に飛んで、避け、られない!?
左肩に噛みついてくる炎狼、右手に衝撃弾を創造、殴る!
くっ、吹っ飛ばせたけど、倒せてねぇ。
まじぃな。脚が動かなかった。
衝撃弾も、3発造って倒すつもりが、1発だけしか出てねぇ。
そのせいで仕留め損なった。
つまり、
身体は限界、源子も切れかけってか。
飛んできた水の弾丸を左に避ける。
右脇腹に被弾。
銃に装填、出来ず。
殴る、飛ばしただけ。
大してダメージなし。
敵、残り概算90体。
「へへっ、絶体絶命だな。モンスターに囲まれて、力は尽きて、打開策もなし、か。やっぱり、ありゃ死亡フラグだったのかねー」
全方向を囲まれる。
始動の気配、だが身体は動かない。
対処は出来ない。
「でもな、諦めるかよ」
攻撃が始まる。
遠くのモンスターは砲撃を。
近くのモンスターは突撃を。
360度×180度、地上の全てを埋め尽くす攻撃。
「諦めて、たまるかァァァァァ」
殺到する攻撃。
それでも、生きることを諦めない。
諦めることを受け入れない。
1秒後に、確実に訪れることが解っていても、
決して、諦めることだけはしない。
何故なら、
「なんだ、生きてるじゃねーか、オレ」
攻撃は来た。
でも、当たらなかった。
その理由は、
「源子が、身体から溢れてやがる。尽きたはずなのに、完全に枯れたはずなのに、攻撃を弾き飛ばす程の勢いで、源子が溢れている」
なんだ、そういうことかよ。
つまり、これは、
「死亡フラグじゃなくて、成長フラグって訳か。そうだよなー、こんな序盤に死んじまっちゃあ、面白くねぇよな」
モンスターはまだ、80体以上残っている。
でも、恐れはしない。
怖れる必要など、何処にもない!!!
イメージが頭の中で渦を巻く。
この、溢れ出す源子も限界がある。
それ以上に、身体が持たない。
なら、1度の攻撃で全てのモンスターを倒す。
その火力は無い。
さっきまでのオレならな。
今のオレは違う。
出来る、確信がある。
イメージをそのまま、体内の源子に、体外で迸る源子へ叩き付ける!!!
現れたのは、
宙に浮かぶ、
2丁拳銃。足りない。
4丁拳銃。まだだ。
8丁拳銃。こんなものじゃない!
16丁拳銃!!!
弾丸を装填、爆発、貫通、破壊、衝撃、それだけじゃねーよなオレよ。
イメージするのはこのダンジョンで戦った精霊。
炎、水、雷、イメージのままに装填する!!!
手には2丁、周りには14丁の拳銃が浮かぶ。
正しく、オレのイメージの通りに。
技名をつけよう、
「銃と踊る狂乱祭、だ」
装填は完了した。
銃は全てをロックオンしている。
「全てを撃ち抜け!銃と踊る狂乱祭!!!」
銃声が重なり、銃弾は走る。
音が轟き、また静寂へと戻ったとき、変わらずに居るのは、
「オレの、勝ちだ!」
ドサッ!
「はぁぁぁ、流石に身体動かねぇぇ。でも、やったぜ。やってやったぜーーー!!!」
背中から倒れる。
敵は居ない。
倒したもの、モンスター400体。
手に入れたもの、新技。
「オレは終わったぜリョーガ。お前もさっさとケリつけろおぉぉ」