2話【真ファーストコンタクトwithお姫さま】
「キャアァァァァ!!!」
その女の子は戸惑っていた。
身なりは高貴な、俗っぽく言えばお姫様だろうか。
事実、彼女は王女であった。
(どういう、こと?)
馬車で侍女5人と、戦地から逃げていた道中だった。
森を突っ切れば砦に辿り着ける。
だが、その前に魔物と遭遇してしまった。
人型で、ブタが武器を持っている。
【オーク】と呼ばれる種類だろうか。
オークは知性が高く、小隊を組んで命令を執行する。
恐らく、私達を追ってきたのだと思う。
だが、彼女が戸惑っていたのはオークに対してでは無い。
「うらあぁぁぁぁ!!!!!」
6体ものオーク達に、いきなり少年が殴りかかった。
「!?なんだと」「くっ、構えろ!」「連係ををとれ!」
このオークの小隊は、案外連度が高いのか。
すぐに対応し、陣形をとる。いや、とろうとした。
少年が右パンチ、1体を殴り飛ばし、オーク達は固まった。
「なっ、なんだその力は!?」
それはそうだろう。
彼らは魔物だ。
力も強く、魔法か何かでなければ、只の少年が勝てるわけがない。
私達もなす術なく、捕まりそうだったのだから。
だが、
「はっ、ブタごときが俺に勝てるかぁ!」
1体を殴りつけ、その勢いのままに左パンチ。
2体を倒し、オークが反応する前に地を蹴り、ドロップキック。
3体目を倒し、オークがようやく反応。
着地した少年に、装備する得物で殴りかかる。
しかし、
「っと、あぶねぇ、なっ!」
「なっ、なんだt、グフゥ!」
片手で受け止め、空いている左手を打ち込んだ。
4体目を倒した。
残る2体が一斉に襲いかかる。
「はん、遅ぇよ、遅すぎる!」
一歩で踏み込み、右から来たオークに右パンチ!
そして左のオークのハンマーを避けキック!
6体、戦闘終了。
(こんな強い人間が、まだこの辺りに居たなんて)
彼は何者なんだろう?
――――――――――――
悲鳴の上がった方向に走る。
(すっげ!超速く走れる、オリンピックいけるんじゃね?)
やっぱりアホなこと考えながら走る。
頼む、美少女で、今度こそ美少女で頼むぜ神様!
そして、そこに居たのは。
でっかい馬車。馬2頭。
なんかメイド服着てる女の子が5人。
そして、お姫様っぽいのが1人。
取り囲む、ブタ男が6人(?)
(よっし!お姫様系美少女確定!メイド達も粒揃いだ!)
なら後は、
「うらあぁぁぁぁ!!!!!」
まず一番近い1体を殴り飛ばす。
やっぱスゲーなこの腕力、軽々数メートル吹っ飛ぶ。
次の標的、左にいたブタ男。
右足で方向転換、勢いで左パンチ!
(チャンス!固まってる)
調子に乗った俺は、ドロップキックをお見舞いしてやった!
(まっず!)
ブタ男がハンマーを振り回してくる。
(どうする、どうする!……とにかく防御だ!)
右手を前に出して受け止める!
(って、あれ?弱い、いや、俺が強いのかもな!)
残る2体がこっちにくる。
だが、負ける気はしない。
なんか俺、超強いし。
ドンッ!っと踏み込み、右パンチ!
左ブタ男のハンマーを、パンチの勢いのまま前に出て避ける!
空振り、体勢を崩したブタ男にキック!
(楽勝だね。つーか、武術習得しといて良かった。マジで)
「つーか、あのブタ男は何なんだ?」
「あっ、えとあれはオークだと思いますよ?」
「オークって、またベタな」
ん?今のは、
「あの、助けてくれてありがとうございます」
真正面で、近くから見た女の子は、
(超絶美少女キタコレ!)
―――――――――
「えと、大丈夫だった?てか、あのオークとか言うの、倒して良かったの?」
日本語なのはもう良いや。オオカミ男もブタ男も日本語喋ってたし。
「はい!私達は平気です。それに、あれらは魔物ですから」
モンスターね、やっぱそう呼ぶんだ。
「それであの、あなたは【ビジター】なのですか?」
「えと、びじたー、てのは?」
ベ○ータ?いや、ビジターか、英語か?なら、visitor。
確か意味は、【訪れた者】?
「【ビジター】というのは、異世界からの来訪者という意味ですよ、えと」
「ああ、俺は新藤リョウガ、リョーガで良いよ」
異世界からの来訪者か、だとするとやっぱ異世界なの?ここ。
それに、異世界から人が来たことがあるのか。
「多分、俺はその【ビジター】だと思う。よく分かんないんだけどね」
実際、来たばっかの俺には何にもわからん。
「ではリョーガさんと呼ばさせて頂きます。それで、お願いがあるのですが……」
「ん?何か?」
「差し出がましいお願いとは承知ですが、私達を砦まで護衛頂けないでしょうか?」
ふむ、美少女からのお願い。しかも護衛任務。
「勿論、お受けしましよう!代わりと言ってはなんだけど、この世界のこと、教えて貰えるかな?」
「はい!ありがとうございます。あっ、申し遅れました。私は【フェイクライナ王国】第二王女、リネット・コル・フェイクライナです。よろしくお願いします」
(マジでお姫様かよ!)
心の中で、全力で突っ込んでみた。
まっ、それくらいじゃねーとな!
そんなわけで、俺のファーストコンタクト(人間)はお姫様で、
俺は砦迄の護衛騎士になった!
まっ、自称だけどね。
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春の2月目、2の日
少年とお姫様は出会った。
タイミング良く、まるで仕組まれたかのような出合いだった。